予選17位からスタートしたポール・トレイシーが今シーズンの初優勝を獲得。黒澤琢弥が一時トップを快走! 日本人ドライバー初の快挙
カリフォルニアの青空の下、気温19度、路面温度38度というコンディションのもと、CARTシリーズ第3戦の決勝レースが行なわれた。
“ジェントルマン、スタート・ユア・エンジンズ”の掛け声を合図に25台のチャンプカーのエンジンがいっせいにスタート。3周のフォーメーションラップの後、午後1時9分にグリーンフラッグが降られ、82周の決勝レースがスタートした。ホールショットはポールポジションからスタートしたジル・ド・フェランがゲット、各車アクシデントも無く、ターン1へとなだれ込んだ。
ド・フェランが好調にリードを広げる中、10周目、最終コーナーのヘアピンでアドリアン・フェルナンデスがウォールにヒット。後からきたクリスティアーノ・ダ・マッタがこれを避けようとしてスピン、コース上にマシンをストールし、この日最初のフルコースコーションが出る。
予選で好位置を得ることが出来なかったポール・トレイシーやマイケル・アンドレッティなど予選15位以下のマシンは、レースの流れを変えるべく続々とピットロードを目指す。少しでもポジションアップを試みようと各チームが迅速なピットワークでマシンをコースへと送り出す中、ほぼ同時にピットアウトしたトレイシーの右前輪とアンドレッティの左後輪が接触。トレイシーのマシンは一瞬跳ね上がるが、両者は無事にコースへと復帰、そのままレースを続行した。
スタート後30周、ここまでトップを快走していたジル・ド・フェランがグリーンフラッグ下でピットイン。これを皮切りに上位を走行していたマシンが次々と予定どおりのピットインを行う。早めのピットストップを行ったアンドレッティは35周目にトップ、同じくトレイシーも2位に上がった。また、予選23番手からスタートした黒澤琢弥もここで7位までポジションアップ。この後黒澤は更に順位を上げ、3度目のフルコースコーション状態の41周目には、一時3位を走行。
レースも中盤を過ぎようとしていた48周目、2位のままピットインしたクリスチャン・フィッティパルディのマシンに火災が発生。CARTセーフティクルーにより火は消し止められ、大事にはいたらなかったものの、フィッティパルディはそのままリタイアとなった。この混乱の中、トップを行くのはロベルト・モレノ。それをジミー・バッサー、ド・フェランが追う。
53周目、7位と8位を走行中のトニー・カナーンとケニー・ブレックがターン1の入り口で接触、両者は共にリタイアとなる。レースは4度目のフルコースコーションとなり、ほとんどのマシンが次々とピットインする中、コース上に残った黒澤琢弥がトップへとあがり、日本人ドライバーとしてはCART史上初めてレースをリード、満員のスタンドから大歓声が上がる。
黒澤は58周目にグリーンフラッグが振られ、レースが再開した後も62周目までトップを快走、堂々たる走りを披露した。しかし62周にトレイシーにパスされ順位を落としながらも上位集団で走行する黒澤に不運が訪れる。66周目、無謀な突っ込みでターン1に進入したノルベルト・フォンタナがスピン、そのあおりを食らった黒澤はコントロールを失いストール。それでもコースマーシャルの力を借り、再スタートした黒澤は、順位を11位まで下げながらも戦列に復帰する。
レースも終盤に近づき、残り10周を切った74周目、5位で走行していたアンドレッティのマシンにも火災が発生。アンドレッティはバックストレートにマシンを止め、リタイアとなってしまった。
なんとかポイント圏内でフィニッシュしたい黒澤だったが、76周目の最終コーナーで前を行くミシェル・ジョルダインJr.がスピンし、これを避けようとした黒澤はマシンの右後輪をコンクリートウォールにヒット。レース続行不可能となり、無念の戦線離脱を余儀なくされた。これでこの日6回目のフルコースコーションとなる。
78周目にグリーンフラッグがふられ、トレイシーをトップにカストロ‐ネベス、バッサーと続く。そしてチェッカーまで残り3周、トレイシーが猛然とラストスパートをかけ、3位のバッサーが前を行くカストロ-ネベスに猛チャージをかけるなど、最後まで目の離せないまさに白熱のバトルが展開。54周目に燃料給油した余裕のバッサーに対し、カストロ-ネベスは44周からノンストップで走行、燃料を最も薄くしてもチェッカーまでギリギリもつかどうかの状態だ。
結局トレイシーが逃げ切り今シーズンの初優勝、ロングビーチ2勝目を挙げ、CARTシリーズ通算16勝目(うちストリートコースでは6勝目)を記録。2位は巧みにバッサーのアタックを阻止したカストロ‐ネベスが入り、ホンダは今シーズンの初優勝をワンツーで飾った。また、バッサーは3位入賞で参戦5年目のトヨタエンジンに初の表彰台をプレゼント。
次回第4戦は4月30日、舞台を南米へと移し、ブラジル・リオデジャネイロでの開催となる。
●ポール・トレイシーのコメント
「スタートしたときは、まさか優勝できるとは思っていなかった。とにかくトラブルに巻き込まれず、確実にポイントを取るつもりで走った。今日の優勝は最後まで勝利を諦めなかったチーム全員のもの。特にエンジニアのスティーブ・チャリス(昨年、故グレッグ・ムーアのマシンを担当)の功績は大きい。今年のシャシーはどうしてもうまくセッティングが合わず、苦労していたんだ。そこで去年グレッグ(G.ムーア)が残したノートを参考にしてマシンセッティングをいじったら結果はだんだん良くなっていた。17位からスタートして優勝だなんて本当に嬉しいよ」
●黒澤琢弥のコメント
「何がなんだか解らないうちにトップに立っていたよ(笑)。金曜土曜と悲惨だったから、余計にうれしい。最後はゴールしたかったけど、リアタイヤが壁にあたってしまって、最後まで走れなかったのは残念だね。それにしてもストリートコースのレースはほんとうにおもしろかった。壁ギリギリで操るスリルは最高だ」