年が明けてから、もうすでに3週間が経ってしまいました。セント・ピーターズバーグで行われる開幕戦まで約2ヶ月となり、今シーズンが始まるのが楽しみになってきましたね。
オフシーズンに入ってからというもの、シート獲得攻防戦に勝ったドライバーの発表がクリスマスまで続いていましたが、それ以降は特に大きな動きがなく、まだ多くのドライバーはチームやスポンサーと交渉を続けていると思います。この時期までにシートが決まっていないフル参戦狙いのドライバーは、眠れない日々が続いているのではないでしょうか。僕もフル参戦をしていた頃は、この時期になると必ず寝不足や円形脱毛症になっていました・・・(笑)。
今回のコラムでは、いつも年明けに行われるドライバーの健康診断&セーフティ・ミーティングの際に行われた、“State of Indy Car”で発表された内容について、前半と後半の2回に分けて解説したいと思います。
まず一番のポイントとして、サンクショニング・ボディ(統括組織団体)の正式名がIndy Racing League(IRL写真上)からINDYCAR(写真下)に変更されました。簡単に例えると、サッカーでいえばJリーグがINDYCARだとして、J-1がIZOD Indy Car Series、J-2がFirestone Indy Lightsのようなイメージです。それぞれのレース内容が異なるので、単純にはいえないのですが。
今まではシリーズ名と統括団体名に違いがあったため、アメリカのメディアにとって多少混乱があったと思います。名前をシンプルにすることで、一目見ただけでインディカーのレースなんだと解るようになり、特に初めてインディに興味を持った人にとっては解りやすくなると思います。
また、レース中のストラテジー(戦略)や戦い方を大きく変えるルール変更もありました。一番話題になっているのはオーバルでのリスタートが、最初のスタート時と同様、2列に並ぶ“ダブル-ワイド”リスタートになることです。イエローが出た時点でトップを走行していたドライバーは必ずイン側からスタートし、2番手を走行していたドライバーがそのアウト側、3番手を走っていたドライバーはトップのドライバーの後ろ・・・、という形でリスタートをするようです。
基本的にペース・カーはトップを走行中のマシンの前に入ることになっていますが、周回遅れが間に挟まれてしまった場合などにどうなるのか、その際の配置に関してはまだ不透明です。リスタートする前の最終周にレース・ディレクターが順位を指示すると記載されていますが、実際の細かいルールはこれからドライバーやチームを交えて協議していくのでしょう。
一般的に2列でのリスタートの方が、エキサイティングなレースになると思われているものの、ドライバーの視点からみると若干複雑なルール変更だと言えます。なぜなら、“イエローがイエローを招く”といわれていることもあり、リスタート後のクラッシュ増加の可能性が考えられるからです。
NASCARでも2列のリスタートが採用されていますが、インディと比較すると絶対速度や加速が遅く、それほど大きな問題は生じていません。しかしインディカーではグリーンが出るまでのローリング中の制限速度をかなり抑えないと、後方から加速してくるドライバーとのスピード差によって、大きな事故を招く確率がぐっと増えることが予想されます。
もちろん、走行ラインの外側に溜まるマーブル(タイヤカス)はコーション中にしっかり排除しておかないと、外側から並んでコーナーに進入するのは無謀な行為以外のなにものでもありません。実際にまだトライしていないので具体的には言えませんが、今年の最初のオーバルはインディ500になるわけで、練習なしで一番大きな舞台に投入するのはちょっと心配ですね。その後のテキサスのようなDシェイプのスーパー・スピードウェイは2列になりやすいので、すぐに効果が出て、おもしろいレース展開になると思いますが。
色々と細かいルールのファイン・チューニングが必要だと思いますが、全ドライバーが同じ条件である以上、スタートやリスタートを得意としているトニー・カナーンのようなドライバーにとっては、良いルール変更になるのではないでしょうか。“ダブル・ワイド”リスタートがドライバーやチーム、そしてファンに受け入れられれば、ロード・コースでの導入も検討しているみたいですよ。
他に、ピット戦略を左右する3つのルール変更もありました。一つ目はインディ500以外のレースにおけるピット・ボックスの位置で、同じタイプのコースで行われた前回のレースの予選結果で配置が決まります。要するにロードや市街地では、前回のロードまたは市街地レースでの予選結果に基づいてピット位置が決まり、オーバルでは前回のオーバル・レースでの予選順位となります。インディ500は今までどおり伝統に基づき、予選順位でピットの位置が決められ、開幕戦のセント・ピーターズバーグは昨年のエントラント・ポイント順に並びます。
このルール変更によって、今まで以上に予選でポールを獲得する重要度が上がり、より多くのチームとドライバーが前方のピット・ボックスを獲得するチャンスが増えたので、これもレース展開をおもしろくする要素になると期待しています。ピット位置がなぜ重要かというと、作業を終えてピット・レーンに戻る際、前方のピットであればあるほど自分の順位をキープする上で有利になるからです。
ピットが後ろのほうにあるクルマは、どんなに急いでピット作業を終わらせても、自分の前にクルマが入ってきてしまうのを避けられません。タイミングが悪いと前に飛び出してきたクルマとの接触を避けるためにアクセルを緩めることもあり、当然ながらアクシデントの可能性も増えます。そのようなリスクを考えると、少しでも前の方にピットがあった方が良いというのが基本的な考えです。
ということで、前編はここまで。次回、後編は来週アップしますので、どうぞお楽しみに!