Roger Yasukawa's

2010インディ500予選方式徹底解説!!

画像開幕から続いたストリート&ロード・コースでの4連戦も、先週末のロング・ビーチでひとまず終了、次戦のカンザスからはオーバル4連戦となります。特に来週末のカンザスは、インディ500前におこなわれる唯一のオーバル・レースなので、各チームはオフ・シーズンの間に開発したパーツやデータを初めて実戦に投入。どんなレース展開になるのか、今から楽しみですね! 最初の4戦では少し元気のなかったチップ・ガナッシ勢も、得意の1.5マイル・オーバルで巻き返してくるでしょう。
 
カンザスのレースが終わるとチームはインディアナポリスに戻り、早速インディ500の準備に取りかかります。全員がこの5月を“Month of May”と呼んでいて、ほんとうに年に一度のお祭りのようなものです! なにしろ1911年から開催して今年で100年目ですからね。インディ育ちのチーム・スタッフはこのインディ500で優勝することをずっと夢見て働いているだけに、5月に入るとチームも含めた街全体の緊張感がじわじわと高まっていくんですよ!
 

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というわけで今回のコラムでは、今年からレース期間や予選方式が大きく変更された2010年のインディ500について、ご紹介したいと思います。
 
まず“Month of May”と言われるように、以前まではルーキー・テストも含めて約1ヶ月を通して行なわれるレース・イベントだったのが、今年からは2週間+2日(ルーキー・テスト)で戦うイベントに変更されました。伝統よりも経費削減を重視することになったわけですが、レースが2週間に短縮されると、チームの戦略やテスト・スケジュールが大幅に変わってきます。その理由としては、今まで最初の週を予選に向けたセット・アップに専念し、2週目からレース・セットに集中するというプログラムで戦ってきたのが、今年は走行初日から予選用と決勝用の同時進行でプログラムを進めなくてはならなくなりました。
 

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他のオーバルのレースと違って、インディ500の予選セット・アップはレースで使用するマシン・セットと大きく異なるため、同時に様々なセッティングを試すことができる複数台数のチームの方が有利だと言えます。実際に僕が2004年にレイホール・レターマン・レーシングから参戦し、チームメートだったバディ・ライスが優勝した時は、最初の週に僕とバディが予選セットを開発してビトー・メイラはずっとレース・セットに専念していました。お互いのデータを共有することによって素晴らしいマシンができあがり、予選ではバディがポールを獲得。レースでもバディが勝利し、3台ともトップ10でゴールすることができたのです。
 

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インディ500の予選では極限までマシンのダウンフォースを減らすので、足回りのセッティングや細かいバランスをしっかり取らないと、スピードは出せません(オーバルの場合、ロード&ストリートと違ってタイムではなく、スピードを競います)。ダウンフォースが少ない=ドライバーは安定感のないマシンを操らなくてはならないので、ずっと全開で走る4ラップの間はものすごく緊張します! ある意味、インディ500の予選はチームやドライバーにとってもう一つの“レース”であり、今年からレース同様全員にポイントが与えられることになりました。フル参戦するドライバーにとっては、確実に上位を狙わなくてはならないシステムになったと言えますね。
 

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レース・スケジュールが1週間短縮されたことで4日間あった予選も2日間となり、予選方式も大きく変更されました。これまでと同じくポール・デーとバンプ・デーがあり、4ラップの平均速度で順位が争われるという点や、33グリッドを決めるといった基本的な部分は変わりません。予選方式で大きく異なる部分としては、ポール・デーの仕組みです。今までは11時から18時までの間に予選を走り、最も速い平均速度を記録したドライバーがポール・ポジションを獲得していたのですが、今年からはロード&ストリート・コースで行なわれている“ファスト・シックス”のような予選方式が組み込まれまたのです。
 

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では新しくなったポール・デーを簡単に説明しましょう。11時から16時までは去年と同様、全車が3回ずつアテンプト(予選に出走することをアテンプトと呼びます)することができます。16時の時点で1〜24位までのドライバーがレースに出走する権利を得ることができ、さらに上位9台はポール・ポジションを含めた9位までのグリッドを決めるために、次の予選ステージへ進出します。
 

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これまでは自分のスピードがトップ5に入るようなものでない限り、ポールを狙うことは難しかったので、ポール・デーに再びアテンプトするようなことはほとんどありませんでした。その理由としては、再アテンプトすることによって前回の記録は取り消されるので、順位を落としたり、さらにはクラッシュしたりするリスクがあったからです。
 
このような予選方式の変更によって、16時まではトップ9に入るための争いと24位以内に入るための争いが同時に展開するので、ほぼ全ドライバーやチームが関わるドラマが生まれることになるでしょう。去年までのポール・デーはひととおり全車がアテンプトを終えると、コンディションが良くなる夕方までは特に動きが無かったのに対して、今年からは一日を通してドライバーがアテンプトをすることになりそうです。見ている方としては、ずっと目が離せない状況になりますね。
 

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16時の時点でトップ9のスピードを記録したドライバーは、16時半から18時までの間にアタックしてポールを狙いにいきます。この90分の間に2回アテンプトすることができるので、各ドライバーはギリギリのところまでダウンフォースを減らして争うことになるでしょう。インディアナポリスでは17時を過ぎると気温が下がり、風も落ち着いてコース・コンディションが良くなることが多いことから、最後の1時間を“ハッピー・アワー”と言ってほとんどのマシンの平均スピードがアップ。18時が近づくにつれ、誰が最後にポールを取るのか、まったく予想できないエキサイトな内容になると予想されます。
 

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ちなみに、今までポール・ポジションを獲得した時の賞金は$100