Roger Yasukawa's

タイヤの扱いが難しいアイオワで得たヒデキの3位表彰台

画像2009年インディカー・シリーズも中盤戦に入り、先週末のアイオワからトロントのレースまでは4連戦となります。連続でレースが続く場合、リズムがとても大事なんです。
マシンを壊してしまうとチーム・スタッフは次のレースに向けての開発に時間をかけることができなくなり、破損した部分を修復するだけでいっぱいいっぱいになってしまいます。ドライバーやチームはこの4連戦をできるだけ無傷で完走し、着実にポイントを稼ぎたいところだと思います。
連戦最初のレースで快調なリズムを刻めたかどうか、先週のアイオワを振り返ってみましょう。まずはなんと言っても、2年連続で表彰台に立ったヒデキ、おめでとう!!

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ヒデキは僕にとっても弟のような存在なので、活躍をしてくれるとほんとうにうれしいです。ようやく良い流れをつかんだことによって、中盤戦にしっかりとポイントを稼ぎ、同時に初優勝も狙いましょう!
今回の舞台となったアイオワ州はアメリカで最大のエタノール生産量を誇り、レースの冠スポンサーには“アイオワ・コーン”(アイオワ州トウモロコシ栽培者&販売促進協会)がついています。エタノールやトウモロコシの生産がアイオワ州の経済の基盤となっているだけに、オバマ政権に変わってからもインディカー・シリーズを使ってトウモロコシのパワーをアピールしています。

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レースが行われたアイオワ・スピードウェイは、3年前に設立されたばかりの新しいコースです。2005年からフル参戦をしていない僕は、残念ながら走った事ことがないのですが、まったくチャンスがなかったわけでもありません。
実はコースができた初年度に、当時SAMAX Motorsporsから参戦していたミルカ・デュノが苦戦。「金曜のフリー走行の時にセット・アップを出してくれないか」とチーム・マネージャーから連絡があったものの、たまたまその時日本に居たのです。残念ながらセッションまでに間に合うフライトが見つからず、走行を断念するしかありませんでした。
アイオワ・スピードウェイは0.894マイルで、今週末行われるリッチモンドの0.75マイルに続いて2番目に短いコースです。どちらも同じ小さなショート・オーバルですが、アイオワはショート・オーバルの中でも特殊なコースだと言われています。

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それはなぜかと言うと、アイオワはショート・オーバルであるにもかかわらず、1.5マイルのスーパー・スピードウェイのように、常にほぼ全開でアクセルを踏んだままレースが行われるからです。(もてぎは違いますよ!)
コースのバンク角度も12°〜14°と、ハイ・サイド(外側)にいけばいくほどバンク角度がきつくなるので、ショート・オーバルでは珍しくスーパー・スピードウェイのようなサイド・バイ・サイドのレースを見ることができるのです。それだけに、アイオワはどちらかと言うと、ミニチュア・カンザスみたいな感じですかね。
去年と一昨年は、コースができたばかりで路面の舗装も新しかったために、グリップ・レベルも高かったようですが、今年は少し低いように感じました。また、車載映像を見ているとターン1〜2のバンプが悪化しているようにも見えました。
路面がバンピーになるにつれて、足回りのセッティングを柔らかくして対応していきます。しかし柔らかくするにつれて、コーナリング時のアクセルやハンドル操作での荷重移動が大きくなってくるので、スムーズなドライビングが必要とされてくるのです。

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路面のグリップ・レベルが下がり、バンプ悪化で柔らかめのサスにすること以外に、このコースで注意しなければならないのがタイヤの扱い方です。このようにアイオワは特殊なコースなので、今回使用されたファイアストン・ファイアホークはここだけで使われる特別なコンパウンドになっています。ショート・オーバル用というよりも、スーパー・スピードウェイに似たスペックのコンパウンドで、しかもコーナリング時の高い縦Gに耐えられるような設計が施されているんだそうです。
そのせいか、アイオワは他のショート・オーバルとは異なり、タイヤを発熱させて内圧を上げるのに苦労するようです。通常、タイヤの発熱は路面との摩擦で発生していますが、大きなオーバルのレースはほとんどハンドルを切らないので、なかなかタイヤの温度が上がりません。これと同じような現象が起こるんですね。
ほとんどのショートオーバルではコーナリング中にアクセルを踏んだり、戻したりすることによる荷重移動で発熱させることができます。しかしスーパー・スピードウェイのようにほぼアクセル踏みっぱなしのアイオワは、ドライバーが実際にタイヤの発熱を実感することがとても難しいのでしょう。
当然、タイヤが完全に発熱しきっていない状態でプッシュすると、あっと言う間にクルマはクルッと回り、スピンしてクラッシュする可能性が高くなります。今回もE.J.ヴィソや、ロバート・ドーンボス、そしてベテランのトニー・カナーンまでもがスタートやリスタート時にクラッシュしてしまいました。

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レース当日の午前中は雨が降ったため、スタート直後は湿度も高く、ダウンフォースが多く発生していたようです。しかしレース中盤からはコンディションも変わり、だんだんとマシンのバランスが変化し、後半戦にはアンダーに悩まされたと多くのドライバーがコメントしていました。
レース中に圧倒的な速さを見せたのは、ダリオ・フランキッティとライアン・ブリスコー。今回もガナッシVSペンスキーの戦いとなってしまいましたね。そんな中最後までコンスタントに安定した走りを見せ、3位でゴールしたヒデキはAGR勢の中でもトップ・フィニッシュ。アイオワとはほんとうに相性が良いのでしょう。タイヤの扱いが難しいこのコースで得た3位は、とても価値があると思いますよ!
さて、今週末はリッチモンドでレースです。同じショート・オーバルですが、リッチモンドは体力的にも精神的にも、シリーズで一番きついコースだと思います。まるでボクシングのリングのようであり、接触しながらも逃げ場は無く、コーション以外は休む間もありません。ヒデキはアイオワの勢いをキープし、リッチモンドでも活躍して欲しいですね!