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カストロネベス大ピンチ!レース・キャリアを揺るがしかねない大問題の真相とは?

画像エリオ・カストロネベスが脱税の疑いで起訴された事件は、米レース界に衝撃を与えました。現在法廷で係争中になっていますが、カストロネベスが自身のレーシングキャリアの危機に直面していることだけは確かなようです。

 ほんとうに驚きました。ちょうど、プチ・ル・マンの開幕直前に、このニュースが飛び込んできたのです。ちょうど、ペンスキー・ポルシェからプチ・ル・マンに出場予定だったカストロネベスは、レースが行われるロード・アトランタから急遽マイアミに飛び、マイアミの連邦裁判所に出廷することになりました。その後、すぐにロード・アトランタにトンボ帰りし、その土曜日に行われたプチ・ル・マンでは見事に優勝を飾るという、凄まじい週末を過ごしたのです。レースで優勝したあたりは、カストロネベスのドライバーとしての意地が見られましたが、それにしても僕らが長年取材しているドライバーの一人が刑事責任を問われるとは、正直ショックです。

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 カストロネベスの罪状は、ずばり所得の過少申告による脱税容疑です。現地で報道された内容をまとめてみると、1999年から2004年の間に、およそ500万ドルもの所得を、妹のクラウディアさんと担当弁護士と共謀し、パナマとオランダのダミー会社そしてスイスの銀行を使って隠していたとのことです。

 2001年と2002年といえば、カストロネベスがインディ500を制した年と重なりますが、この年カストロネベスは87万5000ドルを所得として申告したとのこと。しかし、同年にカストロネベス自身がインディ500で得た賞金は130万ドル。もちろんこれはチーム全体に入る賞金のため、契約によってドライバーにはそのうち数パーセントしか入らないでしょうから一概に参考にはならいでしょうが、これを当局が過少申告だとして、摘発したようです。

 もちろんカストロネベス自身はこの容疑を全面否定しており、1000万ドルの保釈金を支払いマイアミの連邦裁判所をあとにして、そのままプチ・ル・マンに出場したのです。現在は通常の生活を送ってはいますが、今後の裁判の行方次第では、大変な厳罰が待っているかもしれません。今回の罪状は、全部で7つもの罪に問われているらしく、それぞれが5年間の服役にあたる罪とのこと。つまり、すべての罪状が確定すれば、最長で35年もの服役が命じられることになります。

「脱税くらいで、ちょっと厳しすぎるんじゃあないの?」と僕ら日本人なら思うかもしれませんが、アメリカで脱税は重罪とみられており、法を犯した容疑者は容赦なく罰せられるのです。有罪が確定すれば、それはそのままカストロネベスのレースキャリアの終焉も意味します。かりに有罪が確定して情状酌量があったとしても10年以上の刑期は免れなさそうですし、何よりカストロネベス自身もすでに33才。ドライバーとして復帰するにはかなり厳しい年齢だといえます。

 それと、所属するチーム・ペンスキーには、チームに所属している人間が法を犯す行為を行ったら、即刻契約を解除するという条項があるとのこと。チームとしても、契約解除は致し方ないということになってしまいそうです。もちろん、カストロネベスの容疑が晴れて、そんなことが起きないことを祈ってはいますが、今後どのように推移していくのか、注目されます。

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 今回の一件により、カストロネベスはパスポートを没収されたため、アメリカ国外への渡航が認められなくなり、今月末のオーストラリア・サーファーズ・パラダイスへのレース出場は難しいだろうと見られていました。しかし、つい数日前に保釈条件が変更されたらしく、サーファーズ・パラダイスへの遠征が許可されることに。晴れてレース出場が決まったわけです。

 カストロネベスにとっても2001年以来となるサーファーズパラダイスへの出場は、自身にとってはもちろん、熱狂的なオープン・ホイール・レース・ファンが多いオーストラリアのファンにとってもうれしい決定となりましたね。カストロネベスには、彼らしい思い切ったレースを見せて欲しいですね。