Interview

インディカー・ドライバー武藤英紀選手とプロバスケットボール・プレーヤー田臥勇太選手の対談

<US-RACING>

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 インディ・ジャパンの発表会が行われたあと、武藤英紀選手とプロバスケットボール・プレーヤーの田臥勇太選手との対談が行われました。田臥選手は2004年に日本人として初めてアメリカ最高峰であるNBAのコートにたち、昨年9月からツインリンクもてぎがある栃木県のリンク栃木ブレックスでプレーしています。ともにアメリカ最高峰の舞台で戦った経験を持つ二人。お互いの第一印象からアメリカで戦う難しさまで、様々なテーマの話が聞けました。

Q:「インディカー・ドライバーのアンドレッティ・グリーン・レーシング武藤英紀選手と、プロバスケット・ボール選手のリンク栃木ブレックス田臥勇太選手です。よろしくお願いいたします」

田臥勇太(以下:TY)、武藤英紀(以下:MH)「よろしくお願いします」

Q:「お互いの印象から伺いたいのですが、まずは武藤選手からお願いします」

MH:「見た目なんですけど、テレビのイメージだと僕より小さいのかなと思っていたのが、立ってみると僕より大きいので、バスケットの選手がいかに大きいのか改めて実感しました。あとは、すごく腰の低い人だなという第一印象です(笑)」

Q:「田臥選手はいかがですか?」

TY:「逆に僕はもっと大きい方なのかなと思っていのですが、僕と似たような体格で、雰囲気も似ていると思いましたね」

MH:「そうですよね(笑)僕も思いました」

Q:「田臥選手はインディカー、レースについてはどういう印象をお持ちですか?」

TY:「先ほど軽くお話を伺っただけなんですが、思っていた以上に体力が必要で、体を張ってやらなくてはいけないスポーツだと感じました。見た目の華やかさとは違うんだろうなと思いましたね。時間を競って相手を打ち負かさなくてはいけないスポーツということで、自分を強く持っていないとできないのではないかと思います。武藤選手はメンタルがすごい強い人だという感じがします」

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Q:「武藤選手はバスケットボールにどんな印象をお持ちですか?」

MH:「小学校や中学校で授業や遊びでゲームをするぐらいでしたが、それだけでもすごい運動量ですし、あとはコンタクト・スポーツだということを感じます。僕と同じくらいの体格で、よくプロ選手として戦っているなと本人を目の前にして思いましたね」

Q:「バスケットの選手は2メートル級の選手が多い中で、戦っていくためにどのようなトレーニングをしているのですか?」

TY:「体が小さいということで、スピードを武器にしなくてはいけないですから、瞬発力を鍛える練習と、体の軸を強くする体幹トレーニングをしています。さきほど武藤選手からお話を伺ったら同じように体幹をやっているということで、どのスポーツにも体の軸が大切なんだなと思いました」

Q:「武藤選手は開幕を直前に控えていますが、オフの間はどのようなトレーニングをしていましたか?」

MH:「やはり走り込みを重視のトレーニングですね。脈拍数がかなりあがったまま2時間のレースを戦わなくてはいけないので、それに耐えれる心臓を作ることを心がけていました。それから田臥選手が話していた体幹を行っていました」

Q:「インディカーのレースは2時間といっていましたが、バスケットの試合時間はいかがでしょうか?」

TY:「10分を4回なので40分ですね。それだけでもかなり疲労感がありますから、2時間も集中力を持続しなくちゃいけないのは、大変だと思いますね」

Q:「武藤選手は2時間のレースを走り終えたときどんな感じですか?」

MH:「結果がよければ疲労はないんですが、悪かったときは、特にオーバルはハイスピードで壁が近いという緊張感のなかで走りますから、精神的な疲労感がありますね」

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Q:「田臥選手もやはり結果と疲労感につながりはありますか」

TY:「大いにあります。勝つと負けるとでは気分的に全然違いますから」

Q:「インディカーはレース数が多く、スケジュールでは2週間に1レースとか、1週間に1レースというときもあるようですね」

MH:「はい、今年は17レースで、もしかすると1戦増えるかもしれません。昨年は6週間連続ということもありましたが、今年は多くても3週間連続なので、たいぶ楽になりました」

Q:「バスケットは9月の開幕で、シーズンがはじまると1週間に1試合というペースになりますよね?」

TY:「でも、試合時間が短いですから。毎週2時間のレースを戦うことは、想像を絶しますね」

MH:「ケガはされないですか?」

TY:「ケガはしないほうが珍しいので、何とかなりますね。ですからケアが大切です」

NH:「どういったケガが多いのですか?」

TY:「やはり捻挫です。あとはつき指です」

Q:「お二人ともアスリートで、順調にサクセス・ストーリーを歩んできたわけですが、アメリカで苦労なさった点を教えてください」

TY:「自分がやりたいことをやってきたので、決してサクセスストーリーではないと思いますが、僕は日本人でしかも体が小さいのでナメられることも多かったですね。自分の実力を証明しないとまわりは認めてくれないので、そこをクリアするのがいつも大変でした。しかし、イエス、ノーははっきりしてますから、“こいつはできる”とわかった瞬間に、みんなから認めてもらえますね」

MH:「競技をやっている以上は苦労がつき物ですから、アメリカという国は関係ないかもしれません。特に去年はルーキーだったので、全てが未知でつらい思いもありましたけど、チームのみんなが温かく応援してくれて、優勝に向かってみんなで頑張っています。ただ、日本に比べて食事面に不満がありますね」

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Q:「スポーツ選手にとって食事面は大きいですよね、田臥選手」

TY:「一番大事だと思います。地方に行けば行くほど、米を食べることすら難しくなってきますからね。どれだけ体をケアできるかは、食事と睡眠、あとお風呂が重要です。向こうには湯船につかるという習慣がないですから」

Q:「田臥選手はご自分で食事を作られるのですか?」

TY:「僕はチームがサポートしてくれていたので、周りのサポートに助けられました」

Q:「武藤選手はご実家が魚屋さんということで、ご自分で魚をさばくんですか?」

MH:「もちろんやりますよ!」

Q:「ほんとうにやるんですか?」

MH:「ウソです(笑)」

Q:「そろそろお時間なので、最後にお互いに一言ずつエールを贈っていただきたいとおもいます」

MH:「よくテレビで拝見していましたので、今日はとても楽しみにしていました。応援しますとか言えるレベルのひとではないと思いますが、僕も頑張りますので、一緒に頑張りましょう!」

TY:「日本人唯一のインディカー・ドライバーということで、日本の代表として突っ走ってもらいたいと思います」

MH:「突っ走ります」

TY:「僕もバスケットで唯一の存在になりたいので、お互いに頑張っていきましょう!」

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<対談を終えて>
最高峰の舞台で戦っているからこそ分かり合える二人の話はいかがでしたか?対談のあとはお互いのプレゼント交換。武藤選手はサイン入りのミニカーを手渡し、田臥選手からリンク栃木ブレックスのサイン入りユニフォームを受け取りました。最後にお互いの今後の健闘を祈り、がっちりと握手を交わして終了となりました。