Interview

「ブリヂストン・インディ・ジャパン300マイル」発表会で行われたトークショー&囲み会見内容

<US-RACING>

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3月12日、ホンダ・ウェルカムプラザ青山にて2009ブリヂストン・インディ・ジャパン300マイルの記者発表会が行われました。今シーズンはこれまでの開幕間もない4月開催から、シリーズ終盤の9月第16戦となったため、例年より2月ほどおそい発表会となりました。ツインリンクもてぎでのアメリカン・オープン・ホイール開催は、今年が12年目。周辺地域との協力関係もさらに強まり、年に一度のお祭りとして定着してきています。
 発表会にはゲストドライバーとして、アンドレッティ・グリーン・レーシングから2年目のシーズンを迎える武藤英紀選手、そしてドレイヤー&レインボールド・レーシングからインディ・ジャパンのスポット参戦が決まっているロジャー安川選手が来場し、トーク・ショーが行われました。今回はそのあとに行われた囲み取材の模様もあわせてお送りします。カート時代、イギリス、そしてアメリカと様々なところで接点があり、気心が知れた先輩・後輩関係の二人からどんな話が飛び出したのでしょうか?

Q:「開幕まで1ヶ月を切りましたが、調子の方はどうですか?」

武藤英紀(以下:MH):「体調は万全ですし、この前のテストもうまくいったので、準備は整っています!!」

Q:「トップ・チームから2年目の参戦となり、2009年は優勝を狙っていくシーズンということですが、ルーキーだった1年目に比べてどうでしょうか?」

MH:「この前のテストは冷静にメニューをこなせましたし、昨年シリーズ・チャンピオンになった(スコット)ディクソン選手ともバトルができて、すごくマシンは仕上がっています。自分の準備もできていますから、タイミングが合えばいけると思います」

Q:「手ごたえは十分ということですか?」

MH:「いや、十分とは言い切れないですけど、やれると信じています」

Q:「ディクソン選手と互角に走れるということは、とても良い心理状態でシーズンを迎えることができそうですね」

MH:「そうですね。昨年はそこまで準備が整っていなかったですし、何をやっていいのかわからない状態で開幕戦を迎えたので、今年はそういうことがなく準備ができています」

Q:「2年目を迎えるにあたって、このオフはどのようなことに重点を置かれて過ごしていたのですか?

MH:「まずは体重を増やしていました。というのも、インディカー・シリーズではシーズンが始まる前にドライバー全員の体重を測って、結果に応じて積むウエイトの量が変わってくるんですね。だから、シーズン前はできるだけ体重が重いほうが良いので、72キロまで増やしました。今は66キロで、あと1キロくらい減量します」

Q:「フィジカルな面以外では何かありますか?」

MH:「IRLの表彰式やパーティがあったり、あとは引越などで時間を使っていました」

Q:「オフが終わって、レギュラー・シーズンを目の前に控えているわけですが、まず、今シーズンの目標から聞かせてください」

MH:「勝つことですね。それ以外はいらない」

Q:「シーズンの序盤には世界三大レースといわれるインディ500がありますが、昨年走ってみた感想はいかがでしょう」

MH:「決勝日のファンの多さにはほんとうにビックリしましたね。40万人という観客を見たことがなかったですし、そのようなところで走ったことも今までなかったですから、すごく驚きましたよ」

Q:「その中で常にアグレッシブな戦いをみせて、7位という成績を収めましたが、この成績はいかがですか?」

MH:「インディ500は長いレースですから、レース中もけっこうセッティング変更をするので、それがうまくいったり、裏目にでたりと大変でした。良い経験になりましたけどね。今年は昨年の経験を生かしてやるだけという感じです」

Q:「日本人ドライバーにとってインディ500と同じくらい重要なのがインディ・ジャパンだと思います。今年は9月開催となりましたが、時期が変わったのはいかがですか?」

MH:「時期が変わったことで2つの目標ができました。まず一つ目は、インディ・ジャパンまでに必ず勝って帰ってくることです。何勝できるかはわかりませんが、必ず勝って凱旋帰国します。二つ目は、やはり母国での優勝です」

Q:「インディ・ジャパンまでの15戦を戦って一つ勝てているかどうかと。。。」

MH:「そういう言い方は良くないですね(笑)。15戦戦ってできるだけ多く勝ちたいですから」

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Q:「すでに戦う顔になっていますね!ここでもうひとかたゲストをお呼びしています。今シーズンのインディ・ジャパンにスポット参戦が決まりましたロジャー・安川選手です。ロジャーさんは基本的にはアメリカに在住ということですが、今回はいつ日本に帰ってこられたのですか?」

ロジャー安川(以下:RY):「月曜日に帰ってきました。今日たまたま通ったら面白そうなことをやっていたので、寄ってみたんです(笑)」

Q:「武藤選手とロジャー選手のお二人は仲が良いということだけでなはなく、非常に縁があるということですが、そのあたりを簡単に紹介していただけますか?」

RY:「僕にとっては先輩、後輩というよりは、弟みたいな子ですね。僕がゴーカートをやっていたときに、お父さんと一緒にサーキットに来ていまして、そのあと僕がヨーロッパに行ったときにたまたま彼が僕のカートを引き継いだんです。あのとき乗ったカートが初めてだったよね?」

MH:「そうなんですよ」

Q:「初めて乗ったカートがロジャーさんのものだったと」

MH:「はい、汗が染み付いていましたね(笑)」

Q:「そのあとイギリスでもまた接点があったようです」

RY:「彼が中学を卒業してイギリスに来たときになかなか苦労していたので、僕も同じような経験がありましたから、教えるところは教えて、苦労したほうが良いところは苦労させるようにしていました。まぁでも、レースのことは何も教えないで、悪いことばっかり教えていました(笑)」

Q:「そうなんですか。武藤さん、どのようなことを教わったんですか?」

MH:「いや〜、ここではなかなか言えないです」

Q:「さて、ロジャー選手はドレイヤー&レインボールド・レーシングから出場するということで、出場決定からレースまでは半年の準備期間があることはいかがですか?」

RY:「そうですね、今まで4月開催だったので、昨年はレースの2ヶ月前に決定して気が付いたら現場にいるという状態でした。レースをしているというよりは、ただ参加しているだけでしたね。今年はフル参戦しているチームですし、先日のテストでもそこそこ良い結果だったので、インディジャパンは期待できると思います。少しでも活躍できるように頑張っていきます」

Q:「半年後に向けたプランというのは何かありますか?」

RY:「5月に行われるインディ500へチャレンジしたいと思ってますので、いろいろとスポンサー活動中ですけども、インディ500に出場できれば、インディ・ジャパンの前に1レース経験できるので一番理想的ですね」

Q:「インディ500と言いますと、ロジャーさんは日本人最多の5回出場になりますが、改めてインディ500の魅力について聞かせてください」

RY:「やはり現場に行かないと説明するのが難しいのですが、世界三大レースといわれているだけあって、40万人もの人が集まるレースは世界のどこを探してもないですし、勝ち負けを抜きにして応援してくれる。一度インディ500を走るとなかなかやめられないですね」

Q:「それではインディ・ジャパンに向けてお話を伺っていきます。武藤さんは昨年悔しい思いをしましたが、今年はどうでしょうか?」

MH:「昨年の自分と今の自分を比べると、1年間レースを経験していますし、この前のテストでもドライビングが上達しているのを実感できたので、とても楽しみにしています」

Q:「ロジャーさんにとっては日本に帰ってきたことを実感するレースではないですか?」

RY:「そうですね。たくさんのファンが応援に来てくれますし、もてぎでのレースは毎年楽しみです」

Q:「武藤さんは楽しみだけど、プレッシャーもすごいと言っていましたね」

MH:「いちばん緊張するレースです。昨年は“優勝してね”といわれても、オーバルの経験が少ないのに自分にできるのかという不安から緊張していたのですが、今年は自分も優勝できると信じていますし、“優勝して”といわれてもプレッシャーにもならないですから、“ありがとうございます”という気持ちで走れると思います。ただ、気持ちが空回りしないように、普段のレースと同じようにやっていきたいですね」

Q:「レース・トラックでお会いする武藤さんは別人のような目つきですが、ロジャーさんから見て武藤さんのこれまで戦いぶりはいかがですか?」

RY:「去年、一昨年と彼の戦う姿を見て、ほんとうに立派になったなと思いましたね。日本人としては初めて勝てる体制で戦っていますし、素質があって顔も性格も良いので、文句ナシです!」

MH:「何かあるんですか?裏が(笑)」

Q:「最後にインディジャパンに向けた目標や意気込みをお願いいたします」

RY:「今年もインディ・ジャパンに出場することができました。インディ500に向けてはまだ交渉中ですが、なんとかシートを獲得してインディ・ジャパンでは少しでも良い体制で戦いたいと思います。応援よろしくお願いします!」
MH:「インディジャパンまでに優勝して帰ってきて、インディ・ジャパンでは全てをかけて絶対に優勝します!応援してください!!」

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〜囲み取材〜
Q:「今回のテストで、昨年と比べて体制やドライビングの感触などで変わったところがあれば教えてください」

MH:「僕のクルーは一人変わった以外変更ありませんでしたね。重要なメンバーは昨年と同じなので、すごくやりやすいです。何度も食事に行っていますし、気持ちの通じ合う仲間ですね」

Q:「オフに引越しをされたということですが、どこからどこへ引越したのですか。なぜ引越したのでしょう?」

MH:「インディアナポリスからシカゴです。シカゴはどこへ行くにも直行便が多いのが、一番の理由ですね」

Q:「当然チームのファクトリーからは遠くなると思いますが、その点はいかがですか?」

MH:「遠いといっても車でいける距離ですし、週に一度は顔を出すと自分で決めているので、大きな影響はないです」

Q:「昨年と比べて今年はどういったところが良くなったのか具体的に教えてください」

MH:「オーバルでのマシン・コントロールの幅が広がりましたね。昨年ならすぐにピットインしてしまうような状況でも、今は連続して周回を重ねることができていますし、セッティング面でもマシンのことを理解して、短時間で仕上げられるようになっています。今シーズンはテスト日数が限られているので、決勝用のセットアップに集中していたのですが、最後はかなり良い状態になりました」

Q:「オーバルでは見えない乱気流と戦うことになりますが、この1年でオーバルでの走り方や面白さ、怖さなどはどう感じていますか?」

MH:「特に前にマシンがいる状態では乱気流が強いので、その中での位置取りはこの一年でわかるようになったなと思います。あとは電話でロジャーさんと話して疑問に思ったところを聞いたりしています。ホームステッドのテスト前にも話をして、アドバイスをもらいました」

Q:「ロジャーさんはどのようなアドバイスをしたのですか?」

RY:「それは教えられないですね(笑)。でも、昨年の一年間で英紀はすごく成長しましたし、僕から教えることはもうないんじゃないかなと思います」

Q:「先ほどのアイオワのレースを初めて見たということですが、普段はああいったレースの映像は見ないのですか?」

MH:「他の人や先輩のオンボード映像は見ますが、自分のレースを放送映像で見るという機会はないですね」

Q:「戦略というところでは、エンジニアが決めた戦略をそのまま聞いていくのか、自分でこうしたいというものを考えるのか、そのあたりはどうですか?」

MH:「僕の場合、27号車はキム・グリーンが指揮を執っているのですが、彼が全部戦略を立ててあまり口を出すなという感じです(笑)キムの意見8割とエンジニアの意見2割というところで走っています」

Q:「ドライバーによってはレースの状況をチームにインプットして、ピットに入るところを入らなかったりする場合もありますが、武藤さんはそのような方向性ではないということですね」

MH:「はい。エンジニアを信用していますし、僕は走りに集中しています。もともと立てられている戦略が悪いとは思わないので、チームに従っています」

Q:「ロジャー選手は、いつもプライベートでチームを探してきて乗っているのはすごいと思いますが、今年のインディ500参戦は何%ぐらいの可能性がありますか?」

RY:「可能性で言うと五分五分というところですね。あと一ヶ月くらいすると状況がわかってくると思いますが、スポンサーが決まらなければインディアナポリスのガレージに行って、“どこシートが空きそう”とか“どっかのチームが参戦しそう”というのをマークする地道な作業になります」

Q:「インディ500参戦はライフワークのようになっていますが、これからあと何回ぐらい出たいですか?」

RY:「インディ500だけは出られるだけ出たいです。1911年から行われている歴史があって、毎年33人しか出られないですから、僕にとっては貴重なレースですね。昨年、決勝に出場できなくて改めてその大切さを実感しました。もちろん去年のまま引き下がることができないので、今年もチャンレンジしようと決めました」

Q:「現在、100年に一度の経済危機といわれていますが、その影響は感じていますか?」

RY:「スポンサー活動をしていても、話を聞いてもらうだけでもなかなか難しい状況です。逆に条件は一緒ですから、こういうときこそチャンスだと思いますし、自分としてはインディ500に出れるように活動しています。スポンサー獲得は難しい状況ではありますが、幸い今年僕が走るチームのオーナーは父親のような存在なので、お互いの信頼関係をいかして頑張っていきます」

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<発表会を終えて>
「優勝」という二文字を力強く宣言した武藤選手の今シーズンの活躍に期待が持てますね。ロジャー選手にはインディ500の日本人最多出場記録を更新してほしいところ、今後の活動が注目されます。2009年のインディカー・シリーズは4月5日セント・ピーターズバーグが開幕戦、インディ・ジャパン300マイルは9月19日決勝が行われます。今シーズンもUS-RACINGではインディカー・シリーズを全戦カバー。開幕前に行われるアラバマ州バーバー・スポーツパークでのテストもお送りしますのでお楽しみに。