Interview

HPD堀内大資氏インタビュー〜2008アメリカン・ル・マン・シーズン・レビュー〜Vol.4

<US-RACING>

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 これまで3回にわたってお送りしてきたホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)のチーフ・エンジニア、堀内 大資氏のインタビュー。最終回となるはアメリカン・ル・マンが昨年のプチ・ル・マンで開始したグリーン・チャレンジや、アメリカン・ル・マン・シリーズに魅力ついお話いただいた。開幕に向けたテスト予定、今年開催予定のアジア・ル・マン・シリーズなど目前に迫った2009年シーズンについても伺っている。(インタビュアー:齊藤広之)

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 プチ・ル・マンからアメリカン・ル・マンの新たなチャレンジとしてグリーン・チャレンジが始まりました。ザイテックやプジョーは2009年からハイブリットのマシンを開発していくようですが、アキュラとしても何か環境に向き合ったチャレンジを行うことはありますか?

堀内 大資氏(以下:HD):「現在、燃料とエネルギー回生という二つの面で 将来技術の研究に着手しています。今のところいろいろな選択肢がありますから、アキュラとして量産車のイメージを含めたアイディアが出せないかとチャレンジしているところです。ただし、1年や2年という単位ではなく、もう少し長いスパンを考えています。環境対応としてのアメリカン・ル・マンのデビューはもう少し後になると思います」

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 グリーン・チャレンジなど、さまざまな試みを行っているアメリカン・ル・マンの姿勢をどう評価していますか?

HD:「個人的には面白いと思います。統一された技術にとらわれず、非常に個性的な技術が投入できるレースですから、やりがいがあります。アウディは一生懸命TDI(直噴ディーゼル・ターボ・エンジン)をやっていますし、ポルシェもデトロイトからDFI(ガソリン直噴システム)を投入して、メーカーのPRの場としても使っています。ホンダとしてもiVTEC(可変バルブ機構)やIMA(ハイブリッド・システム)といった技術がレースで使えるということを見せたいと考えていますが、レギュレーションでVTECは使えません。しかし、アメリカン・ル・マンは環境に対するさまざまな取り組みを検討していますので、VTECのように現在禁止されている技術でも、環境に対して有効だと認知されれば、レギュレーションも変わっていくと思います。ですから、ホンダとしてもどんどん売り込んでいかなくてはいけないですね。F1みたいにトップ・ダウンでルールが強制されるわけではないため、ル・マンは面白いカテゴリーだと思います」

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 以前お話を伺ったときは噂の領域だったアジアン・ル・マン・シリーズが、ロード・アトランタで正式に発表されました。ヨーロッパから10台、アメリカから10台出場するということですが、アメリカン・ル・マン側から出場の打診などはありましたか?

HD:「アジアン・ル・マン・シリーズに関しては今のところ何も決まっていません。私の知っている限りアジアン・ル・マンについて話をしたいとACOから打診があったと思いますが、出場の話はこれからだと思います。また、アメリカから出て行く活動についてはアメリカン・ホンダだけで決められませんので、まだHPDでも話にあがっていません。日本人としては日本でアキュラのマシンを走らせてみたいですね」

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 LMP1クラスの開発に関して、来シーズンに向けての予定を教えてください。

HD:「10月末にイギリスで1号機が完成し、共同開発しているワース・リサーチ社のもとでエンジンの車載と試運転が行われ、ド・フェラン・モータースポーツに船便で送られてきました。サンクス・ギビング・デイの前の週にセブリングでシェイクダウンを行い、昨年のレース・タイムと同等のラップ・タイムを記録しています。大きな不具合も出ず、順調なスタートを切りました。1月末のウイナー・テストでP1マシンが公開されると思います」

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 アメリカン・ル・マン・シリーズ参戦から2年が経過しましたが、改めてアメリカン・ル・マンの魅力とはなんでしょう?

HD:「実際に参戦することで“レースをやっている”という面白みを実感できました。勝つのは難しいのですが、世界でやっているレースの中で一番面白いレースのひとつだと思います。ヨーロッパのル・マン・シリーズよりも、アメリカン・ル・マン・シリーズの方が面白いのではないでしょうか。ヨーロッパに比べても戦力が拮抗していますし、サーキットが小さいことも要因となって面白さが増していると思います」

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▲インタビュー終了後、同じくチーフ・エンジニアを務める巽孝之氏(写真右)にも駆けつけていただき、“Acura Wins!”と書かれた横断幕の前で記念撮影を行った。現在、HPDに駐在する日本人エンジニアは堀内氏と巽氏だけである。

 競争の場を求めて2006年に開始されたアキュラのアメリカン・ル・マン・シリーズ参戦。一昨年と昨年はポルシェという強力なライバルとしのぎを削ってきた。2009年からステップ・アップするLMP1で8度にわたってル・マン24時間を支配してきたアウディと対峙することになる。強敵アウディにアキュラがどう立ち向かうのか、アウディVSアキュラの対決に注目が集まるのは間違いない。US-RACINGでは2009年シーズンも、アキュラの活躍を含めたアメリカン・ル・マン・シリーズの情報をお届けしていく。