イラストリポート

2008インディ500 イラストリポートvol.6

伝統の500マイルレース

いよいよ決勝日。空が白みはじめてきたころに取材班は出発します。なにしろ30万人以上のファンが集結するので、のんびりしていたらサーキットに入るだけでひと苦労になってしまうそうなのです。さすがにこれだけ早いと、サーキット周辺にあるひたすら広い駐車場(キャンピング駐車場)は、まだ静けさを保っていました。そのスキに、ササっとサーキット入りであります。

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 今日はテンションが上がっているので、軽く甘いものを食べたらすぐに取材の準備に入ります。時間がたつにつれて、徐々に観客がサーキットに到着。そしてスタート3時間前には

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 どこを見ても、人、人、人。想像をはるかに超えた人の数です。しかも、この観客たちは、吼えるのです。特にトンネルが吼えるスポットの模様。それがまた熱気を醸し出して、スタートまで待ちきれない雰囲気になってきますよ。
 これだけの吼えているヒトたちがいると何か起こりそうなものですが、レーススタート前には何の問題もなく

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座って待っているところが、なんともフシギな雰囲気であります。そしてレーススタートすると、オナカに響くような歓声が380kmで移動します。これがとても壮観でした。

 さて僕は、昨日写真撮影を練習したポイントに移動。しかーし、すでにドーンと場所取りされていました。しかたがないので昨日の場所は諦めて、ちょっと姿勢がキツいですが、似たようなポジションを確保。スタートを待ちます。
 向こうからやってくる、ペースカーに先導されたマシンたち。33台の隊列は、スローペースでもすでに大迫力。心拍数がいやがうえにも高まってきます。

グリーン! グリーン! グリーン!

 インディアナポリスのコースサイドから、初めてレーシングスピードで走るインディカーを追った印象は……「うわっ、速っ! カメラ振るの、追いつかない!」

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って感じでした。昨日のライツでの練習はほとんど意味なし? と思ったほど、スピードがまるで違いました。

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 最初は資料用に撮影するだけで手一杯。レースの1/3はそのマシンスピードに慌てていました。そしてようやく落ち着いてから、レースを楽しむ事ができました。
 流れとしては細かくコーションが出たものの、優勝候補のドライバーたちはレース中盤には上位に顔を出してきました。そこから、ダンウェルドン選手が後退、カナーン選手がクラッシュ。シェクター選手がトラブルで戦列を離れました。しかし優勝を狙える層が厚いのが今年のいいところ。フィニッシュまでスリリングなバトルを楽しめました。気になった選手をピックアップすると、

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 まずいちばん盛り上がったのは、もちろんダニカ・パトリックVSライアン・ブリスコーの場外戦一歩手前のシーン(←それなのか……)。ダニカ選手が何も言わずに、何もせずに終わったのは、観客も(もちろん僕も)消化不良な感じでした。

 次に盛り上がったのはマルコ・アンドレッティの走り。場内では優勝を期待して、マルコ選手が通過するたびに歓声が。僕もルーキーイヤーの2位惜敗が脳裏に焼き付いているので、スゴく応援していましたが、最後は追いきれませんでしたね。残念。デビューしてから2位→24位(クラッシュ)→3位はスゴいリザルトですが、それ以上を期待されてしまうのがアンドレッティ家の宿命なのでしょう。

 最後のスティント直前までリーダーだった、ヴィットール・メイラにも応援が集まっていました。メイラ選手待望の初優勝は、もしやこの500マイルレース? と思うほど調子が良さそうだったのですが、ディクソン選手の安定したスピードには及ばず。あと、もし最後のピットストップで、入ったときの順位どおり、ディクソン選手の前に出られていたら……と思わずにはいられません。

 もちろん日本人として武藤選手の順位は気になってしまいます。最後はマルコ・アンドレッティの後ろ、4位に行けると思ったのですが……、なかなか難しいものですね。でも7位完走は来年につながることでしょう!

 途中でスピン、クラッシュとなったジャスティン・ウィルソン。後からテレビで観ると単に巻き込んだように見えるのですが、コースサイドからは何度か修正舵を当てながら格闘しているのが見えました。やはりそのドライビングを、500マイルの間ずっと続けるのは厳しんでしょうね。

 それから今年のダークホース、トーマス・シェクターも目立ってました。各セッションで印象的な走りを披露し、オープニングやリスタートでの鮮やかな技は華があり、存在感はさすが! カラーリングもシャープでカッコよく、来年はフル参戦してほしいドライバーです。しかし、マシントラブルとはいえ、今までどおり「最後まで保たない男」だったのが、ちょっと残念。

 そして2008年のウィナーとなったスコット・ディクソン。最初から最後まで安定して速く、ピットストップも完璧でした。アイスマンとかファントムとか呼ばれている彼ですが、優勝後リポーターは「ミルクマン」と呼ぶことにしたようです。ちょっと微妙?

 こうして初めてのインディ500を楽しみました。長いレースなのに、本当にあっという間に終わってしまった気がします。来年はもう少し落ち着いて観察できるかも? と今から楽しみ。次回は観客席から盛り上がってみたいな! そう思わせる魅力が、インディアナポリスにはあるような気がします。