Osamu Ishimi's

不安払拭、ファイナルレースで魅せた武藤らしい走り・・・その2

画像前回のコラムをご覧のとおり、ギリギリの状態で臨んだ武藤の最終戦でしたが、いざレースが始まってみると、今シーズンのベスト・レースと言える走りを披露してくれました。驚きです。
予選でのチャレンジを封印していた武藤は、レースになるとオープニング・ラップから果敢に前を走るマシンを攻めて8周目には15番手までアップ。しばらくこう着状態が続いた後、32周目には14番手とさらにポジションを上げ、トラック上で5台を抜いて48周目に1回目のピット・ストップを迎えるという順調な滑り出しです。

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1回目のピットでフロント・ウィングの調整(左側のみ1/2+)を行ってピット・アウトしていった武藤でしたが、圧巻だったのはこの1回目のピットストップ。インラップ、ピット作業、アウトラップと一連のスムーズな流れはまるでペンスキーやチップ・ガナッシを見るかのようで、完璧に決めていっきに4台抜きを果たし、10番手までポジション・アップすることになったのです。
第2スティントの武藤は、チームの作戦が3ストップだったために燃費走行を巧みに取り混ぜながらレースを進めることになりましたが、それでも57周目にはついに9番手までポジションを上げ、レース展開によってはトップ5フィニッシュも夢ではない状況となっていました。その後は燃費走行をしながらも、2年前IPSシリーズで戦った時のライバル、8番手のアレックス・ロイドを追い詰める熱戦が展開。そのロイドも折り返しの100周目に行った2回目のピット・ストップで退けて、110周目には前を走るダン・ウェルドンをオーバーテイクして7番手に躍進してきたのです。

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武藤の身体を案じ、レースのスタート前にグリッドで「無理することはない。危ないと思ったらレースを止める勇気も必要」と伝えてしまった私でしたが、そんなことを言ってしまったことが恥ずかしいと思えるほど。武藤は伸び伸びと、そして活き活きとトラック上を跳ね回っている感じでした。
前の6番手を走るチームメイトのダニカ・パトリックとは同一周回ながら大きなギャップがあったので、武藤としてはフル・コース・コーション待ちの状況に。そのパトリックが150周目に3回目のピット・ストップに向かったところ、ピット・ロードでウェルドンと接触するミスを犯してしまい脱落。1周前に最終ピット・ストップを無事終えていた武藤は、労せずして6番手までポジションを上げることになったのです。
チャンピオン争いを演じているブリスコー、ディクソン、フランキッティの3台は別次元のレースを展開していましたが、武藤は間違いなく最終戦を盛り上げるキーマンになっていたことは誰もが認めるところ。最終的にレースはIRLインディカー・シリーズ史上初というオール・グリーン・レースとなったこともあり、5番手のカストロネベスには届きませんでした。

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しかし19番手スタートで6位フィニッシュという13台抜きの武藤のMost Improveなパフォーマンスは、私の中で今シーズンのベスト・レースだと言えます。ピット・ストップ・タイムの合計が23台中3番目に短かったというのが、特に高評価したいところであり、武藤を支えるチーム・クルーも非の打ち所がない作戦と、ピット・ストップ・パフォーマンスで武藤を押し上げてくれたことが、ベスト・レースと言える理由です。
クラッシュに終わったシカゴランド、予選でクラッシュを喫したインディ・ジャパンと、ここ2戦にわたって曇っていた雰囲気が最終戦ですっきりと晴れ渡り、いい形でシーズンを終えることができたことも、今後の武藤にとって大きな財産となったでしょう。残念なのは年間ランキングが11位になってしまったこと。あと2ポイントあればジャスティン・ウィルソンとダン・ウェルドンを交わし、ランキング9位まで上昇できただけに悔しさが残ってしまいます。

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レースを走り終えた武藤は「ほんとうに今回のレースに出れて良かったです。クラッシュによるトラウマも無く、気持ちよく最後まで走りきれました。トップとの差は歴然としていましたが、体調が悪い中でもベストを尽くし、6番手まで順位を上げられたことが自信になりました。来季に繋げられるレースになったと思います。でもどこかのレースであと2ポイント獲得出来ていれば・・・・・・、悔しいです」とコメントしてくれました。
オフ・シーズンはまずしっかりと身体を休め、体調を万全に戻すことが一番大事ですが、来シーズンに向けて勝てるパッケージをもう一度考え直すことも、武藤にとって重要な仕事になるでしょう。我々日本メディアの夢である日本人初優勝は来季以降に持ち越しとなってしまいましたが、武藤は間違いなく勝てるドライバーとして成長し続けていると思います。
2010年シーズンは美味しいお酒をいっぱい飲ませてくださいね。武藤君、約束だよ。
ともあれ、今シーズンのIRLインディカー・シリーズは17戦中チップ・ガナッシが10勝、ペンスキーが6勝と2強チームが圧倒的なパフォーマンスでシーズンを支配してしまい、シリーズ全体としてはおもしろみに欠けるものになってしまいました。デイル・コインのジャスティン・ウィルソンがワトキンス・グレンで2強を打ち崩して挙げた貴重な1勝が光りますが、他のチームは猛省を強いられるシーズン・オフになることは必至でしょう。
来シーズン初戦は初開催となるブラジルのリオ・デ・ジャネイロ近郊の市街地ロード・コースからスタート。ロード・コースが9戦、オーバルが8戦の全17戦となりますが、開幕から4戦はすべてロード・コース(うち2戦は初開催)の戦いとなり、ここでのスタート・ダッシュがシリーズの行方を決定づけることになるはずです。どのチームがアドバンテージを持つことになるのか、今から楽しみですね。