今年で93回目を迎えるインディ500。何回経験してもインディ500は他のモータースポーツ・イベントと比べものにならないスケールの大きさを感じます。約1ヶ月間にわたる長いイベントスケジュールはもとより、決勝日に集まる40万人というファンの多さは、他に類を見ない世界最大のスポーツ・イベントと言い切れるものです。
特に決勝レース・スタート前のグリッドに立つと、こいつが凄い雰囲気を醸し出しています。グランド・スタンド、インフィールド・スタンド、VIP用スイート、そしてパドックなどはすべて人、人、人で溢れており、人垣に何重にも囲まれた中で灰色に光るレース・トラックが、一本すうーっと伸びている感じ。
人間が放つ計り知れないエネルギーでインディアナポリス・モーター・スピードウエイ全体が熱気に満ち溢れ、ドライバー、チーム・クルー、そして我々メディア関係者も知らず知らずの内に、体内にアドレナリンが増殖されて興奮状態に陥ってしまいます。私も毎年このスタート前のグリッド上でTV放送用のコメント撮りを行ってきましたが、恥ずかしながらその光景を見るたびに心が動かされ、いつも身震いがして鳥肌が立ってしまうものです。
さて今シーズンのインディ500、経済状況の悪化からコスト削減を迫られ、トータルで2日間+α練習走行の日程が削られることになりました。練習走行の始まりが5月6日の水曜日からになり、決勝レースの次ぎに大事なポール・デーに向けて1日練習走行が少なくなったわけですが、この1日がポール・デーの結果を大きく左右しそうです。
各チームともインディ500のポール・ポジションに向けて、試してみたいセッティングが山積みのはず。ベストなマシンを得ようとしてセッティングを尖らせていくと、そこには落とし穴があり、迷路に入り込んでしまうこともあります。どこで妥協するかということも、ドライバーとエンジニアリング・チームの大事な判断になるでしょう。各チームとも今まで以上に事前にセッティング・プログラムを確立させ、タイムテーブル通りに事を進めないと、遅れを取ってしまうことは必至です。
通常1週目のウィークエンドに行われるポール・デーと2ndクオリファイが終わると、ドライバー達や我々も少々中だるみになってしまうのですが、今シーズンは練習走行の時間が減少した分、トップ・チームといえども決勝レースに向けて、一息ついている余裕が無くなったのではないでしょうか。
とはいえ、優勝するドライバーを予想すると、ペンスキー、チップ・ガナッシ、アンドレッティ・グリーンというトップ・チームの中の誰かということになるのですが、最右翼は一昨年の優勝者ダリオ・フランキッティと昨年優勝したスコット・ディクソンの二人を揃えているチップ・ガナッシ。チーム力、ドライバー力とすべてにおいて、非の打ち所が無いように見えます。
3度目のインディ500のタイトルを狙う、ペンスキーのエリオ・カストロネベスも要注意人物。そしてアンドレッティ・グリーンのトニー・カナーンも、そろそろ優勝するのではという感じです。侮れないのはニューマン・ハース・ラニガンのグラハム・レイホールといったところでしょうか。また、KVレーシングから参戦が決まったポール・トレーシーも、2002年のインディ500でカストロネベスにさらわれた幻の優勝を取り戻すために暴れてくれるでしょう。
しかし、なんと言っても我々が切に望んでいるのが日本人初優勝。アンドレッティ・グリーンから参戦する武藤英紀が、最終スティントまで冷静にマシンを運ぶことが出来れば、優勝争いに加わることも夢ではありません。昨年は経験不足からマシン・アジャストの方向性をミスして7位フィニッシュに終わりましたが、今シーズンはその苦い経験がものを言うはず。WBCで2大会連続優勝を果たした侍ジャパンの勢いを武藤英紀が引き継ぎ、明るいニュースを日本にもたらしてもらいたいですね。頼むぞ武藤!!
●インディアナポリスの新玄関
ということで久しぶりにインディアナポリス入りしたのですが、インディアナポリスに到着すると見慣れないターミナルのゲートに飛行機が駐機されました。そう言えば2009年から新しいターミナルに変わるという話を聞いていたような…。新ターミナルはアーチ型の大きな白い屋根が特徴的で、天井が高く大きなガラス窓から入ってくる自然光が気持ちいい。円形状に配置されたShopもそれぞれがお洒落な感じで、広々とした都会的な空港に様変わりしていました。
ついこの間まで使われていた、無機質な旧ターミナルとは雲泥の差。実はこれまでインディアナポリスの空港に着くたびに、シャビーな施設にゲンナリしていたのですが、新しい玄関が作られたことでインディアナポリス全体が明るくなった感じがします。レンタカー会社も目の前の大きな駐車場内に設置され、バス移動が無くなって非常にコンビニエント。マイナス点は今までよりもちょっと空港へのアクセスが遠くなったことぐらいでしょうか。
今回私も足取り軽く意気揚々と自分が借りるレンタカーの駐車場に到着し、1ヶ月分の大荷物を載せてマイカーナビを装着、スムーズで気分がいいねと思った矢先、エンジンをかけたらガソリンが半分しか入っていません。オーマイガット!! 早速レンタカー会社の人間を捕まえて「ガソリン半分しか入ってないよ」と言ったら、その輩は「きっとメーターが壊れているんだろ」と切り返してきたのです。それじゃ返却する時に無駄なお金を取られちゃうと思い、更に文句を言うと、「じゃ、横に乗って!!」と言われ、レンタカー会社のガソリンスタンドに直行する羽目に。
そしてガソリンを入れ始めたら、燃料タンクにはなんと10ガロンも入る始末。ガソリンメーターは壊れていなかったのです。もっと文句を言いたかったものの長旅の疲れもあり、今回はこれ以上無駄な体力を使うことを止めてしまった自分が情けない。アメリカ国内、東へ西へとしょっちゅう旅をする私は色々なトラブルに見舞われます。ロストバッグやバッグの破損、飛行機のキャンセルなどは日常茶飯事で、寛容な気持ちで構えていないと常にいらいらしてしまいます。
世の中、なかなかパーフェクトには事が進みません。こんな時も空港が綺麗で設備が整っていると、少し気分を和らげてくれるものですね。