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第10戦トロントでニューガーデンが2勝目、佐藤琢磨は10位。完全な失敗作を最後まで我慢しなければならないホンダ勢…

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デトロイト同様ウェット・タイヤで始まった今季最後の市街地コース、第10戦トロント。乾き始めていく難しいコンディションの中、参戦4年目の若手アメリカ人ドライバー、ジョセフ・ニューガーデンが第4戦アラバマに続く今季2勝目を達成しました。2位は参戦16戦目で初表彰台を獲得したイタリア人ドライバー、ルカ・フィリッピです。
 
今回予選11位からスタートすることになったニューガーデン(シボレー)は、予選13位だったアンドレッティ・オートスポーツのカルロス・ムニョス(ホンダ)とともに、85周のレースから逆算したフューエル・ウィンドウぎりぎりの28周目に2度目のピットを行いました。幸運なことにその直後、1周前にピットを終えていたジェイムズ・ジェイクス(ホンダ)がタイヤバリアに突っ込んでイエロー、ほぼ全車がピットへ向かいます。
 
トップに立ったのはピットインしなかったエリオ・カストロネベス(シボレー)で、予選7位からスタートした彼は佐藤琢磨のパスに失敗するなどして11番手まで順位を落としていたため、そのままコースに留まることをチームが決断。ニューガーデンが2番手、ムニョスが3番手に上がり、レースは33周目に再スタートを迎えます。
 
41周目の2度目のコーションでカストロネベスがピットへ入ったことから、ニューガーデンがトップへ躍進。90年代生まれの二人によるトップ争いに注目が集まる中、ムニョスはデトロイト第2レース以来となるメカニカル・トラブルでリタイアに終わってしまいます。レースは終盤に入り、どのタイミングでピットへ入るかにかかってきました。
 
トップのニューガーデンは十分なリードを保ったまま58周目まで引っ張り、全車がピットを終えた時点でトップにカムバック。2番手はニューガーデンよりも2周多く走り、この間にファステストを記録してウィル・パワーやスコット・ディクソンをパスすることに成功したフィリッピが上がりました。
 
前戦のテキサスで2台ともメカニカル・トラブル(カーナンバー20はエド・カーペンターがドライブ)に見舞われていたCFHレーシングが、みごと初めてのワンツーを達成。CFHレーシングの前身であるカーペンター・レーシングは、昨年の第2レースで優勝したマイク・コンウェイから2年連続の勝利となりました。
 
「競争が激しいこのレースで、イエローという小さな幸運を手に入れることができたのは間違いない」とレース後に語ったニューガーデン。「僕が2勝目を挙げたことよりも、今年できたばかりのチームがワンツーでフィニッシュしたことのほうがすごい。ほんとうに信じられないほどクールだ。クール過ぎる!」
 
2013年のデビュー以来、9位がベストだったフィリッピは今回初めてレースをリードしての2位でした。途中ニューガーデンとサイドバイサイドで並ぶシーンもありましたが「僕のクルマが一番速く、抜くチャンスはあったけど、この結果はチームにとって非常に重要で、台無しにしたくなかった」とコメント、慎重に戦った末に得たリザルトでした。
 
前回のテキサスでリタイアに終わっていたチームオーナーのカーペンターは、「インディ500、テキサスと自分のオーバル・レースでは良くなかったが、今年の市街地レースではクルマが良かった。全員で祝えるのはすごいことだ」と語り、コ・オーナーのサラ・フィッシャーも「ワンツーが実現するとは思ってもいなかった」と大喜びでした。
 
3位に入ったのはカストロネベスで、ピットのタイミングをずらしたことによって自分のペースをキープすることが可能となり、今回のレースでファステストを記録して猛追。4位に入ったポール・ポジションのチームメート、ウィル・パワーを抑えての3位で、ポジションに応じて途中から作戦を変更したことが奏功したと言えるでしょう。
 
前回の市街地レースであるデトロイト第2レースで、2年ぶりに2位表彰台を獲得した佐藤琢磨は、カストロネベスの後ろ、ホンダ勢最上位となる予選8位からスタートしました。濡れた路面の中で4番手まで順位を上げて最初のピットに入り、フィリッピの後ろとなる6番手で2度目のピットを迎えますが、外側リアタイヤ担当の新しいクルーが作業に遅れて11番手まで後退します。
 
迎えたレース後半、フィリッピが6番手、琢磨が8番手で周回を重ねていく中、AJフォイト・レーシングはフィリッピより5周早い55周目に琢磨をピットへ呼びました。レッドタイヤを装着した琢磨はここから猛追する予定でしたが、十分な燃料が入っていないことが発覚してペースを上げられず、グラハム・レイホールに次ぐホンダ勢2番手の10位でレースを終えることになりました。
 
「決勝用のセットが完璧ではなかったので、ウォームアップをドライで走れたのは良かったです。スタートはみごと雨になり、自分としてはパーフェクトなコンディションでしたね」と語った琢磨。デトロイト第1レースのような追い上げを期待したファンも多かったと思いますが、「ここはイン側にコンクリートパッチがあってラインが雨でも一本になり、デトロイトのようにはいきませんでした」
 
「ドライになってタイヤの内圧が上がってからはモントーヤらといいバトルができ、これはいけるかなという実感はありました。しかしイエロー中のピットで出遅れてしまい、そこから履いたブラック・タイヤで思うようにペースを上げることはできませんでした。最後は念願のレッドで追い上げるつもりだったのですが、燃料がうまく入りきらないトラブルが起き、セーブしなければならなかったです」
 
デトロイト同様今回も雨でシボレーとホンダの差が少なくなると思われたものの、すぐに路面が乾いたことでシボレー勢が8位までを占める圧勝という結果になりました。「基本的にルールでシーズン中の改良はできないですし、僕ら(ホンダ)は安全対策でデトロイトからフロントの翼端板を外したことによって、逆にダウンフォースが減ってしまいました」と琢磨は現状を説明しました。
 
「今後このウィングでショート・オーバルとロード・コースを戦わなければならないので、楽しみと不安が混ざっているような感じです」と琢磨。一度決まったウィングの仕様は安全上の理由以外での変更はできないため、ホンダ勢の不振は今シーズンの最後まで続くということです。つまりホンダ勢は、1シーズンを棒に振るということになります。
 
ここまでの結果から、もはや完全な失敗作だったとしか認識せざるを得ないホンダのエアロ・パッケージ。4年連続でマニュファクチャラーズ・タイトルを落とすのは必至で、今回6チーム11台が不振に陥っているという意味では、F1より深刻な状況にあると言えるかもしれません。その中で何度もホンダ勢の上位に進出し、表彰台まで獲得したAJフォイト・レーシングと佐藤琢磨は評価されて然るべきでしょう。
 
スーパースピードウェイでの浮き上がり問題もそうですが、それぞれのメーカーやチームが同意した上で導入されたエアロ・キットだったものの、本来のインディカーらしい競争力が大幅にスポイルされる結果となっています。ホンダのように失敗したメーカーのチームやスポンサー、ファンは1シーズン見守ることしかできず、結局のところシリーズ全体としては大きなロスにつながると思います。
 
今年も残すところあと6戦、劣勢の中でどこまでシボレー勢の中に食い込んでくれるのか。AJフォイト・レーシングと佐藤琢磨の戦いに、最後まで注目しましょう!(斉藤和記)
 
●決勝リザルト

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