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第99回インディ500は15年ぶりにモントーヤが制覇、佐藤琢磨は奇跡的な復活で13位

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史上4番目の僅差となる0.1046秒差で99回目のインディ500を制したのは、ファン・パブロ・モントーヤでした。2000年に次ぐ2度目の勝利で、15年のスパンを経て優勝したのは新記録(これまではAJフォイトの1967〜1977の10年が最長)です。チーム・ペンスキーは2009年のエリオ・カストロネベス以来6年ぶり、通算16回目のインディ500制覇となりました。
 
予選15位からスタートしたモントーヤは、スタート直後のフルコースコーション中の7周目に、後ろにいたシモーナ・デ・シルベストロに追突されてリア・バンパーを破損。すぐにピットへ入ったところ、ピットがクローズしている最中だったためにもう1周してピット・インしたことにより、最終的に30番手まで順位を落としてしまいます。
 
41周目のピット・インではピット・ボックスの定位置で止まりきれず、クルーに戻される場面もあっただけでなく、「レースごとに調整して、やっと走れる状態だった」と本人が言うほど、決して万全といえる状態ではありませんでした。「最後まであきらめなかった」彼は6回のピットを経て、レースの約半分となる102周目に3番手までアップしてきたのです。
 
やっとトップ・グループに追い着いたモントーヤは、チームメートのウィル・パワーとサイモン・パジノウ、チップ・ガナッシ・レーシングのスコット・ディクソンやチャーリー・キンボールらと激しいバトルを展開します。残り8周の192周目でいったんトップに立つも3番手に後退し、197周目に再びトップへ躍進。アンダーステアに陥ったパワーを抑えてみごと優勝しました。
 
「楽なレースだったけど、今日はたくさん仕事をしたよ」と余裕のモントーヤ。「シモーナが後ろにぶつかってきて、予選が悪いとこんなことが起きるんだね。下位の集団で走る時は、それなりのセットを見つけ出さないといけないから、クルマにダウンフォースを加えて調整し続けた。コーションの後に8番手ぐらいを走っている時は楽しかったよ。やっとついていけるような感じで、どうしようって」と、シビアな状況をまるで楽しんでいるかのようなコメントです。
 
「クルマを調整し続けて、お、少し良くなった。もう少し良くなった、って感じ。ほんとうに重要なのは最後の15周で、おもしろいレースだった。おそらくベストなレースだ。ウィル(パワー)とディクソン、僕らはお互いにリスペクトしていて、リスクを理解した上でパスするのを解っているから楽しいんだよ」
 
今回15年ぶりにインディ500を制覇したモントーヤのこの記録は、当分破られないでしょう。最初に勝った2000年は唯一のCARTチームとして、当時のIRL運営のインディ500にスポット参戦。前年のCARTチャンピオンということもあり、200周中167周リードして、2位に7.184秒差という圧倒的な強さを見せました。
 
昨年のインディ500はその時以来2回目で、久しぶりのインディカーによるオーバル・レースで5位でした。わずか3戦で2勝したことになりますが、NASCAR時代にスピードウェイを走っており、「NASCARが500マイル・レースのどこをどうやって走る必要があるかを、全部理解するのに役立った」とコメント。この15年の経験があったからこそ、勝てたと言えます。
 
2003年のジル・ド・フェランとカストロネベス以来となるチームメート同士のワンツーとなった今回。2位でフィニッシュしたパワーは「リードしている時はクルマのバランスが悪く、後ろへ下がるとルーズ(アンダーステア)になったんだ。2位の時にどうクルマを調整すればいいか、学ぶための十分な時間がなかった。2位でイエローになってくれれば良かったのに」と語っています。
 
3位は5度目のインディ500でベスト・フィニッシュを得たキンボール、4位は最多リードラップ(計84周)を築いたディクソンで、心配されていたクラッシュによるマシンの浮き上がりもなく、シボレーがトップ4を独占しました。ホンダは5位にグラハム・レイホール、6位にマルコ・アンドレッティが入り、トップ10にもこの2台のみ。ロード&ストリート同様、頼みのスーパースピードウェイでもシボレーに圧倒される結果に…。
 
6度目のインディ500に臨んだ佐藤琢磨は、24番グリッドからスタート。ターン1で参戦2年目のセイジ・カラムをアウト側からパスしようとしたところ、カラムが外側へ膨らんできたことで壁とマシンの間に挟まれ、マシンにダメージを負ってしまいます。幸運にもそのままピットへ戻ることができただけでなく、クルーの迅速な作業によってレースに復帰することができました。
 
まさかの3周遅れとなってしまったものの、琢磨はチームの采配によってイエローの度に周回を取り戻し、168周目のアクシデントによるイエローでついにリーダーと同一周回に復帰。目の前でチームメートのジャック・ホークスワースが絡む3台のアクシデントも回避し、最後は2013年の自己ベストと同じ13位でフィニッシュしてみせました。
 
「8列目のアウト側からのスタートだったので、混乱は避けたかったです」と琢磨はその時を振り返りました。「外から1コーナーにアプローチし、勢いもあったので内側から数台抜き、8号車(カラム)がイン側に落ちて行ったので、その外側にアプローチしてクルマが半分ぐらいまで行ったところ、そこから急に8号車が外側へ向いてきました」
 
「当然スポッターの真下ですし、ミラーにも十分に写っている位置なので、そこまで行ったら行くしかないです。ただあまりにも近づいてきたので、最後はバックオフ(アクセルオフ)しましたけど、コンクリートウォールに押し挟まれて行き場を失ってしまいました」
 
「500マイルのレースなので、誰もがアクシデントなんて起こしたくないし、彼も同じだったと思うんですけど、彼の言い分としては、内側にハンター-レイがいたので、外に行かざるを得なかったと。先ほどリプレイを見ましたが、ハンター-レイとはクルマ半分以上開いているんですね。僕が必要なのはあと5センチぐらいでしょ。無駄なアクシデントになってしまって、ほんとうに残念でした」
 
「近づいたら危ない相手とか、事前にチェックしているんですけど、彼は去年のインディ500でも良い走りをしているし、チップ・ガナッシ・レーシングの1台ですから、スポッターも当然優秀な人を持っているはずだと。そういうすべてのことを前提に、お互いをリスペクトした上で僕は自分のラインを守り、彼は自分のラインを守るべきでしたね」
 
カーブデーのインタビューで「スタートのアクシデントだけは避けたい」と語っていた琢磨。参戦2年目でまだ20歳のカラムとガナッシのスポッターを信頼し、あえてリスクを取りにいったということです。
 
しかし残念なことに、「佐藤の行動が解らない。ばかな動きだ」というカラムのコメントからも、スタートで外側から誰かが来るという発想は皆無でした。彼はチームメートのトニー・カナーンが最後尾からスタートした2010年のインディ500を、観たことがなかったのでしょう。また、いくらガナッシとはいえ、琢磨が期待した優秀なスポッターではありませんでした。
 
今回のインディ500で、30番手からでも優勝できることが明らかとなりました。奇跡的に生き残ることができた琢磨も3周遅れからトップと同一周回まで巻き返し、13位までポジションを上げた経験は、次回に必ず役立つと思います。後方からでも追い上げる術を学んだ今、絶対的な確信を持てない相手の隣に並ぶリスクを取るのは、もうこれが最後となるに違いありません。(斉藤和記)
 
●決勝リザルト

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●決勝ハイライト映像