INDY CAR

カストロネベスが今季初優勝で7人目のウィナーに、佐藤琢磨は11位

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24度のハイバンクを舞台にする第8戦テキサス。だいぶ日も傾いてきた午後7時30分の時点で気温は30度、その11分後にエンジン・コマンドがスピードウェイに響きました。31回目のポール・ポジションを獲得したウィル・パワーを先頭に、グリーン・フラッグで228周のレースがスタート!
 

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マルコ・アンドレッティ、パワー、ライアン・ハンター-レイとトップが入れ替わり、チーム・ペンスキー勢とアンドレッティ・オートスポーツ勢によってトップが争われた前半。しかし3度のピットストップで走りきる作戦のペンスキーのエリオ・カストロネベスが、97周目にトップに立つと、残りの131周を完璧に走り切ってみごと今季初優勝を遂げました。
 

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オーバルでは2010年のインディ・ジャパン以来となる得意のフェンス登りを披露したカストロネベス。定番のパフォーマンスに観客も大喜びで、「テキサス、最高! ここが大好きだ」とエリオ。それもそのはず、このテキサスでは最多となる4度目の勝利です。
 

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昨年のエドモントンに続く通算28勝目を獲得したカストロネベスは、その勝因について「タイヤや燃料の管理がうまくいっただけじゃなく、セット・アップだよ。エンジニアのジョナサンはすごい仕事をしてくれたし、シボレーも素晴らしかった。宿題をしっかりやってきたことが報われたよ。神様ありがとう!」と大喜びです。「問題といえば、ピットのライトが点いてなくて、よく見えなかったことぐらいかな。それでピットに時間がかかったけど、クルマはレールの上を走っているような感覚だった。すべてがスムースで、素晴らしいセットアップだったね。ハイ、ローとどのラインでもいける。夢のようだったよ」
 

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カストロネベスが今年7人目のウィナーとなり、第8戦にしてやっと名門ペンスキーが今季初優勝。今年6つ目の優勝チームとなりました。「エリオはレースで完璧なドライブをし、ランキングトップにいる今シーズンの我々にとって鍵となる勝利だ」と総帥、ロジャー・ペンスキー。「オーバルのレースでリードを伸ばせたことは、とても重要だ。これから激戦になるだろうが、今はこの位置で満足している」
 

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レースを57周リードしたマルコ・アンドレッティは5位に終わり、22ポイントもの大差をつけることに成功したカストロネベス。インディ500を3度制しながら、02年と08年にランキング2位、ランキング3位も2回(03年、06年)と、なかなかシリーズ・タイトルには縁がありませんでした。同郷のライバルである2004年のチャンピオン、カナーンがやっとインディ500を制覇した今年、悲願の初タイトルを是が非でも獲得したいところでしょう。
 

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4.6919秒差の2位でフィニッシュしたのは、昨年のシリーズ・チャンピオン、ハンター-レイでした。今日はフルコースコーションに翻弄され、「イエローが出たせいで、いくつかポジションを失ったよ。我々のストラテジーではイエローが出ない必要があった。走っていていつもどこがグリップするかを探していたし、そこを外すと壁にいきそうになる。今晩はなかなか眠りにつけないだろうね」とコメント。かなり神経を使って走っていたようです。「ダウンフォースとタイヤのグリップの下落に対しての正しいパッケージを探すのはほんとうに難しい。2年前までは釘で打ち付けられたほど安定していたけど、それがいいのかどうかわからないね。今のセットをよくしようと、我々が努力しているのは間違いないよ」
 

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3位は新しいスポンサーを手に入れたカナーンで、彼のようなベテランも今回はだいぶセットアップに苦労したようです。「エキサイティングではあったけど、長い夜だったね。終盤に向けてクルマは快適じゃなかったから、作戦を変えることを決めたよ。もっとタイヤが欲しい。もっと。じゃないと周回遅れになるって感じだ」と語ったインディ500のウィナー。「もっとダウンフォースが必要だし、タイヤのグリップも欲しい。どちらかではなく、両方のコンビネーションだと思う」
 

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だれが勝つかわからない展開はエンジン・バトルも同様で、前回のデトロイトではシボレーのお膝元でホンダ勢が連勝しましたが、オーバル2戦目となったこのテキサスではトップ5独占。ホンダはトップ10に2台のみという結果になってしまい、その最上位がカストロネベスと同じ3度のピットで走り切ったダリオ・フランキッティでした。チームメートのスコット・ディクソンのマシンは、ピットで作業中にトランスミッションのオイルが漏れて排気管の熱により爆発するシーンがあり、冷やりとしましたが3人のクルーは大丈夫だったそうです。ペンスキーが優勝した今回、今度はガナッシの番といきたいところですね。
 

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ポールからスタートしたパワーは、カストロネベスと同じく3回のピット作戦でした。一時トップに返り咲く場面もありましたが、最終的に7位でフィニッシュ。今回の圧倒的なスピード差での予選トップや、レースでのチームメートの勝利から見て、ペンスキー勢がやっと本来の実力を発揮し始めた感があります。ここ数年毎年タイトルを争ってきたものの、現在ランキングは12位。今年はカストロネベスのサポート役にまわるかも?
 

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第1プラクティスでギアボックスなどにトラブルが発生し、予選を走れなかった佐藤琢磨は21番グリッドからスタートしました。58周目のイエロー中に最初のピット・ストップを終え、65周目には4番手まで順位を上げてきましたが、マシンの状態は決して喜べるものではなかったそうです。
 

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琢磨は中盤となる105周目にも再び4番手まで上がりますが、2度目のピット以降はなかなか順位を上げることができません。163周目にはラップダウンの7番手となり、ここで3度目のピットへ。トップと同一周回に戻ることができないまま、207周目に最後のピットを終えてコースに復帰し、11位でフィニッシュしました。困難な状況の中で最後まで走り切ったことでランキングは一つ上がり、ホンダ勢トップの5位となっています。
 

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「厳しい週末でしたね。初日のトラブルが引きずったというのも多少あると思います」とこの週末を振り返った琢磨。「決勝に向けてクルマそのものはだいぶコンペティティブになったと思うんですけど、最後の煮詰めができきれなかった分、ペースが伸び悩んだというのがありますね。ダウンフォースが去年よりも少ないということで、タイヤにとって非常に厳しいレースで、タイヤのデグレデーション(グリップの下落)もすごかったし、ニュータイヤで5周、7周はくらいはいいんですけど、その後は急激にグリップ・ダウンでしてバランスが崩れ、ペースを維持するのが厳しかったです」
 

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2011年最終戦のダン・ウェルドンのアクシデントを境に、集団でのパック・レースからの脱却を図るべく、昨年からテキサスでダウンフォースを減らすことにしたINDYCAR。ファイアストンは新スペックのタイヤを投入しましたが、各ドライバーのコメントどおりグリップの低下は激しく、厳しいドライビングを強いられていたようです。その中で最適なセットアップを見つけ出したペンスキーと、オーバルでのエンジン特性に勝るシボレーが、ポコノやフォンタナでも活躍しそうな気配になってきましたね。それにしても、こうしてドライバーがぎりぎりの戦いを披露しているにもかかわらず、なかなかそのおもしろさがファンに伝わっていないのかもしれません。年を追うたびに少なくなっているスタンドを見て、少し心配になったテキサスのサタデー・ナイトでした。
 
USTREAMのレポートは11日(火曜日)22時です。ぜひご覧ください!
 
●決勝リザルト

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