INDY CAR

第9戦トロントのベストショット&撮影裏話!

インディカー写真7月のカナダ戦はトロント、エドモントンと開催されますが、今年は昨年のように2週連続ではなく、隔週開催なので時間的にゆとりがあってとてもうれしいです。はい。ロード/ストリート・コースの3日間のレース・イベントが2週連続で行われると、移動と仕事だけで休みがありませんからね。個人的な希望としては、レースはすべて隔週で開催されたら、とてもハッピーなんですけど。
 
かつてチャンプカーが開催されていた時代が、遠い昔のように感じてきたトロント。インディカーで再開されてから3年目ということもあり、だいぶ慣れてきたということもあります。昨年このコーナーでお伝えしたとおり、再開されてから色々といろいろと撮影に制限が加えられるようになって、チャンプカーが開催されていた当時のような写真がなかなか撮れません。
 
昨年改装していたオールストリーム・センターができて、メディアセンターが広く快適になったのはうれしい反面、今年も屋上からは撮影できず、コース内にあるサッカー場のグランド・スタンドも撮影不可といったことが金曜日のフォト・ミーティング(カメラマンにオフィシャルからの注意事項を伝えるミーティング。とても朝早く行われることが多いのでつらい)で聞きました。
 
昨年と違っていたのはターン1で、昨年はレース時にその外側で撮影する場合、レースが終わるまでずっとその場にいなければならないという条件でした。というのも、そのポイントに行くにはエスケープ・ゾーンを横断しなければならず、誘導のためのオフィシャルを配置できないというのが主催者の理由だったのですが、あまりにも不評だったようで、今年はレース中の移動が可能になったのです。
 
それは吉報と喜んではいたものの、撮影スタンドはやはり予算の関係上仮設することができず、2年前と同じようにリフトが用意されました。ところがこれが6人限定で、スタート時は地元の新聞社や通信社、オフィシャルのカメラマンで一杯。担当者と交渉したら、「フォト・ホールはないけど、フェンス越しになら撮影しても大丈夫だよ」というので、こりゃ行ってみないとわからないな、としぶしぶ初日の撮影に向かったのでした。
 
例年のように、まずはターン8からターン6までの外側で撮影するかとコース沿いを歩いていくと、なんと昨年のベスト・ショットを撮影したターン10と最終のターン11との間にあったフォト・ホールが無いじゃないですか! 毎年設営される市街地コースならではのことですが、お気に入りだった撮影場所が無くなってしまい、がくーっと落ち込んだのは言うまでもありません。他に良い撮影場所はねぇかなぁと、フェンスを見ながらとぼとぼ歩いていくと、あることに気づいたのです。
 
これまでは小さい穴の古いフェンスだったのですが、今年はピカピカと輝く10センチほどの穴が開いた真新しいフェンスに変更。しかもちょうど70−200mmレンズが入るくらいの大きさです。ということは、ターン1の外側のフェンスも、これと同様なら問題なく撮影できるし、朝、担当者が「フェンス越しに撮影できるよ」と行った意味も納得できます。リフトに乗らなくても、ある意味いままで撮ったことがない場所から撮影できるなと、ポジティブに考えることにしましたよ。
 
迎えた決勝当日。アメリカ人カメラマンの友人に、「スタートはどこで撮影するの?」と聞くと、彼もリフトに乗れるリストには入れなかったようで「ターン8の外側かターン9の内側に行くよ」と、なんだか見当違いな場所を言ってきました。たしかそのあたりでスタートの撮影はできないはずだなと思ったものの、彼はさっさと行ってしまったので、きっと僕の知らないポイントがあるんだろうなと思ったわけです。
 
僕自身はターン1の外側に1時間ほど前に到着、真新しい正方形の網になったフェンスの後ろでは、何人かのカメラマンがすでにスタンバイしていました。僕はエスケープ・ゾーンが始まるコンクリート・ウォールの右端から3人目の場所を押さえることができて一安心。左に行くほどスタート&フィニッシュラインが見えにくくなり、正面からではなく斜めの絵になってしまうので、理想的なポジションです。例の人数限定のリフトは僕よりも左に設置されていますから、こっちのほうが良かったかも!(ニヤリ)
 
あとはスタートを待つだけだなって他のカメラマンと話していると、エスケープ・ゾーンを隔てたフェンス越しのテレビ・カメラマン・スタンド(もちろんフェンスよりさらに上の位置にある)になんと、朝スタートはどこに行くの? と聞いた友人が身を潜めるように、大きなテレビ・カメラの脇にひざを組んで、ちょこんと座っているじゃないですか。ひっそりと目立たないように、願わくは誰も私には気づかないでください、そしてそっとしておいてくださいといった感じで、じっとおとなしくしていたのですが、やはり場所が場所だけにバレて当然です。他のカメラマンも「見ろ、あそこにあいつがいるぞ」ってな感じで、ニヤニヤしながらみんなで指差してましたよ。
 
まあ、本人もバレているのは重々承知。でも、そこにいるテレビ・カメラマンとの信頼関係があるから成り立つことで、ある意味彼にしか撮影できない場所なんですね。どのコースにもそういう人はいますし、それはカメラマンとしてのなんというんでしょうか、これまで気づいてきたコネクションというかスキルというか、それもまた限られた場所を確保するための“技”なんですね。僕に「ターン8か9に行くよ」なんてとぼけたことも含めてね(笑)
 
レース後、そのカメラマンに「嘘つきだね〜」ってわざと少し怒った感じで言うと、しれっとした顔して「そう、俺は嘘つきだよ」だって。もちろん、正直に「俺だけの秘密の撮影場所に行くんだ」なんて言ったら「どこだ、どこだ?」と問い詰められて面倒なことになりますから、“嘘も方便”といった感じなんですけどね。まあ、いつも冗談を言い合う仲間同士ですから、ぜんぜんお互い気にしてないんですけど。いつの日か、今度は僕がそのオールド・カメラマンに“嘘も方便”を使いたいなと思った今年のトロントでした。
 
ともあれ、ポール・ポジションだったウィル・パワーがそのまま優勝していれば、そこで撮ったスタートの写真を選んだと思うのですが、みなさんもご存知のとおりダリオ・フランキッティが優勝。スタートの写真を選ぶのもなんなので、コースを挟んで反対側にあるターン1内側から撮影した逆光のダリオ・フランキッティを選びましたよ。ここもトロントでは絶対におさえたいマストな撮影ポイントで、プリンセス・ゲートが背景になります。そう、今回のネタとなったスタートの撮影ポイントというのは、このゲートの下のことだったのです。
 
Photo & Text by Hiroyuki Saito
 
※第9戦Pick the Winnerのプレゼントはこちらの写真となります。
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1Ds Mark ?
レンズ: Canon EF 16-35mm f/2.8 L USM
ストロボ: Canon SPEEDLITE 580EX
撮影モード: シャッター速度優先AE
シャッタースピード: 1/60
絞り値: F22.0
測光方式: 評価測光
露出補正: -1
ストロボ: E-TTL自動調光
調光補正: +1
ISO感度: 100
焦点距離: 16.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート