INDY CAR

第17戦ホームステッドのベスト・ショット&撮影裏話!

あっという間にシーズンが終了しましたね。なんか先週行われた最終戦が、すでに遠い昔のような気がします。
歳をとると月日の流れを早く感じてしまうもので、こんな調子じゃ来シーズンもあっという間にやってきそうですが、これがまたそうでもないわけで、待つことに関してだけは長く感じてしまいますよね。そういう意味で時間のバランスってやつは、上手いことできているのかもしれません。
来シーズンに向けてこれからドライバーやチームもいろいろな動きがあるんでしょうが、なによりも日本人ドライバーの体制が、いち早く決まることを祈るばかりです。
さてさて、それでは最終戦の舞台となったホームステッド−マイアミ・スピードウエイについてですが、このコースはマイアミ国際空港から南に約45分の場所に位置しています。ホームステッド空軍基地がすぐ近くにあり、レースウィークエンドのプラクティス中に大きな軍用機がコース上空を旋回していくシーンがよく見られます。
僕がこの仕事を始めて、最初に取材したコースがこのホームステッド−マイアミ・スピードウエイでした。1999年のCART開幕戦です。服部尚貴選手がインディ・ライツからCARTにステップアップして初めてのレースでしたが、オープニングラップでクラッシュを喫し、足を複雑骨折してしまったアクシデントをよく覚えています。
当時のコースは左右対称の典型的なオーバルコースで、各ターンのバンク角が6度と低く、とてもテクニカルなコースでした。それが2003年に改修工事が行われて、新たに18度〜20度のハイバンク・オーバルに生まれ変わったのです。
それと同時に各コーナーにあったフォト・ホールの位置がとても高くなり、身長が180センチ以上ないと撮影できなくなってしまいました。唯一、ターン2の外側にあったホールだけは、ブロックや大きな石を踏み台にすればなんとか僕でも撮影できたのですが、そのコーナーのホールが今年はなんと、フェンスでふさがれていたのです。もし脚立がなかったら大変なことになっていたわけで、持っていて良かったなと思いましたね。
というのも改修された後の最初のレースで愕然とし、思うように写真が撮れなかった時以来、ちゃんと脚立を用意するようにしていたんです。ほんとこの脚立があるのとないのとでは、仕事になるかならないかの違いといっても過言じゃないくらいの差があります。ただでさえ機材が多い上に、持って移動するのはとても大変なんですけどね。
今年はスタート直前までピットで日本人ドライバーを撮影してから、スタートのシーンを撮影するために、ターン1の外側にあるスタンドのスイート・ビルディングの屋上へダッシュ。カメラ機材以外に脚立も持って走っていったので、階段を登っているときにはもうね、死んでしまうんじゃないかと思うくらい疲れました。
なんとかスタートに間に合ってよかったのですが(間に合わなかったらショックで本当にご臨終だったかもしれません)、そろそろね、身体がもちませんよ。最近は体力をつけるために、日々身体を鍛えなければならなくなっているのがつらいところです。はい。
ただ、そんな大変な思いをするのも今年まで。来年のレース・スケジュールからこのホームステッド−マイアミ・スピードウエイがなくなってしまいました。これまで、オフシーズンのテストも含めたら、インディアナポリス・モーター・スピードウエイの次に取材回数が多いオーバルだっただけに、どこか寂しさもあります。また、いつか復活する日が来るかもしれませんが、その時は脚立いらずのコースになっていればいいなと・・・。

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チャンピオン争いはウィル・パワーのリタイアでダリオ・フランキッティに確定といった流れだったので、レースのウィナーはどうなるのかと思っていたら、スコット・ディクソンでした。このコースで3度目の優勝となっただけに、ディクソンにとって得意なコースと言えるでしょう。
レースはディクソンが勝ってチャンピオンはフランキッティだったのですから、チップ・ガナッシ・レーシングにとってはこの上ない週末だったと思います。チームオーナーのガナッシは相当喜んでいましたからね。
さて、この写真はレース中盤から後半へと差し掛かった中での写真で、ターン1のフォト・ホールから撮影。外周にあるフォト・ホールの中で一番高い位置にあり、それこそ脚立がなければ、まず撮影できない場所です。
レース中に受けるヘルメットやマシンへの様々な傷、そしてタイヤラバーのカスによる汚れなどがボディにたくさん付着しています。300キロ以上のスピードで受ける小石の衝撃は、やはり並大抵ではないそうで、ステアリングを握る手に小石が当たったりすると激痛が走るとドライバーは言います。その過酷なシーンを思い描いていただきたいと思い、この写真を選んでみました。
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 500mm f/4 IS USM
撮影モード: マニュアル露出
シャッタースピード: 1/500
絞り値: F4.0
測光方式: 評価測光
ISO感度: 2000
焦点距離: 500.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート

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この写真は佐藤琢磨の今シーズン最後のピット・ストップです。ピットストップの写真というのはレース中ずっとピットで待っていれば撮影できますが、そうはいってもメインの走行写真をおさえなければいけないので、ピット・シーンを待つというのはけっこうリスキーだったりします。
レースも中盤になろうとしていたとき、僕はピット・ロードの先頭付近(ターゲットのピットあたり)にいたのですが、突然イエロー・コーションが発生。周回数的にはここでみんながピットインするだろうと思い、ダッシュで琢磨のピットへと向かいました。
なんとか琢磨のピット・ストップ前にたどり着き、機材を邪魔にならない場所に置いてカメラ・ボディに24−105mmを装着し、このセットだけを持ってピットボックスへ入りました。これが今年の最後になるはずだと思っていたので、しっかりとその様子を最後まで撮影しようと、ピットアウト時は夢中でマシンがピットから離れるまでシャッターを切り続けました。
最後のレースを18位で終え、もてぎに続く完走を果たした琢磨。彼にとって初めてのインディカー・シリーズ=オーバル・レースという未知の世界への初挑戦だったわけですが、長年F1に参戦し続けた琢磨と言えども、そう簡単なものではなかったと思います。
8戦あった今シーズンのオーバル・レースで、完走できたのは3レース。マシントラブルや避けようのないアクシデントもあり、結果だけ見れば良いシーズンではなかったかもしれませんが、他の何にも代えられない経験というものを、琢磨はこのシーズンで得たに違いありません。
今年の経験を生かせるよう、ぜひ、来年もインディカーに参戦して欲しいですね!
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 24-105mm f/4L IS USM
撮影モード: シャッター速度優先AE
シャッタースピード: 1/250
絞り値: F4.0
測光方式: 評価測光
ISO感度: 800
焦点距離: 24.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
 
※こちらが今回のPick the Winnerの当選者の方にプレゼントする写真です!
さて、今シーズン17回にわたってお届けしたベスト・ショット&撮影裏話、みなさん、楽しんでいただけたでしょうか? 今年初めての試みでしたが、どのようにインディカーを撮影しているのか、撮影したときの状況や僕自身の気持ちというものを、こうして思い出して書くことによって僕自身も勉強になったと思います。
来シーズンも更なる向上心とともにインディカー・シリーズの撮影を続け、そしてUS-RACINGをご覧になっているみなさんに喜んでもらえる写真を撮影できるよう、がんばって取材に駆け回りたいと思います!
Text & Photo by Hiroyuki Saito