INDY CAR

第11戦エドモントンのベスト・ショット&撮影裏話!

2005年の初開催から2007年までは、チャンプカー・ワールド・シリーズが開催されていたエドモントン。当時はインディカーの取材と重なっていたため、他のスタッフに取材に行ってもらい、僕自身チャンプカーのレースをここで取材するチャンスはありませんでした。
 
2008年の開幕直前にシリーズが統合し、それを引き継ぐようにインディカー・シリーズがエドモントンのレースを開催。ようやく僕も取材ができるようになったのが、3年前のことです。
 
第一印象としては、やはりCART時代に取材していたオハイオ州クリーブランドのバーク・レイクフロント空港の仮設コースにとてもよく似ていましたよ。まぁ、同じ空港という意味ではあたりまえですが、実際に自分の目で見てみないことにはね、なんとも言えませんから。
 
クリーブランドとコース・レイアウトは違うものの、同じようにフラットなコースでグランドスタンドから一望できるので、ファンにはいいですね。やはりコース幅は広く、水捌けを良くするために約1センチ間隔で溝が掘られているので、タイヤにはとても厳しいコースです。路面はとてもバンピーで、しかも高速なのでドライバーにとってはかなりタフなようですね。
 
さて、この空港コースですが、撮影するとなるとアクセスできる場所がけっこう限定されてしまいます。コースのインフィールド(内側)での撮影は不可で、基本的にはターン11から12と13までの外側、そしてターン1から8までの外側からしか撮影できません。
 
クリーブランドでは、ダウンタウンのビル群をバックに撮影するため、どうしてもインフィールドのコーナーに行かないと撮れなかったのでね、セッションが始まる前にオフィシャルに頼んでトラックの荷台にみんなで乗り、コース・マーシャルが待機しているセーフティ・ゾーンまで運んでもらいました。代償として、そのセッションはそこから出られないものの、まぁ、いろいろなアングルから撮影できたんで面白かったし、今となっては良い思い出ですよ。
 
エドモントンも撮影場所は限定されているのですが、フラットで走行するマシンを遮る壁などがほとんどないので、創意工夫すると面白い写真が撮れます。ジャンピング・ポイントも多いし、躍動感のあるマシンの撮影が可能なのでね、個人的には好きなコースです。
 
今回はそんなエドモントンならではのポイントから撮影した写真を選んでみましたよ。
 

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再スタートでカストロネベスの走行がブロック行為だとみなされ、2番手を走行していたディクソンが優勝しました。常にトップグループにいることって大事なんですね。エドモントンで2回目の優勝となりましたよ。
 
この写真はターン4から5を通過するところを、500ミリのレンズで流し取りしたものです。去年までは、マシンに反射する少し逆光気味の光が綺麗だったのでね、午後のセッションで撮影していたのですが、今年はちょっと時間帯を変えてみようと午前中に行ってみたら予想どおり順光でした。それならそれで、順光ならではのはっきりした雰囲気を高速シャッターで撮影してみたのですが、どうもしっくりこない。
 
なので、去年試した逆光時と同じように、スローシャッターで撮影しました。背景のホスピタリティ・スタンドと空の割合が多くなると、ちょっと賑やかになり過ぎて主役が引き立たなくなるので、フレーミングを下にずらすことで流れるグリーンを強調し、マシンを際立たせるように撮影しました。
 
順光での芝生のグリーンと、反対色のディクソンが駆るターゲット・レッドの色合いが特に綺麗だったので、今回のウィナーであるディクソンの写真はこのカットにしましたよ。
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 500mm f/4 IS USM
撮影モード: マニュアル露出
シャッタースピード: 1/30
絞り値: F25.0
測光方式: 評価測光
ISO感度: 50
焦点距離: 500.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
 

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今シーズンの最高位となる9位でフィニッシュした佐藤琢磨。これまで悔しいレースが続いていた中で、やっと結果を残せたのではないでしょうか。この勢いで次戦のミド−オハイオ、そしてインフィニオンのロード・コース2連戦に期待ですね。
 
さて、この写真はターン2から始まるS字コーナーです。ほとんどのドライバーはこのターン2の縁石にドカっとマシンを乗り上げてジャンプ、着地した次の瞬間にはターン3へ進入と、この連続したコーナーを慌しく通過していきます。
 
毎年ジャンピング・スポットとして必ず撮影する場所で、このようにバック・ショットも撮れますし、もちろん、マシンがジャンプして跳ね上がっている横走りを撮影することもできますよ。
 
このターン2では誰よりもポール・トレイシーが飛び上がっていましたが、決勝日の午前中に行われたウォームアップ走行での琢磨は、他のドライバーのようにジャンプする進入ではなく、スムーズにこのシケインを通過していたのが印象的でした。
 
このポイントも時間帯によって、順光と逆光で雰囲気が変わるのですが、僕的にはこの写真のように朝のちょっと逆光気味な光加減が好きです。特にロータスカラーのマシンは、これぐらいの光のあたり具合が綺麗ですね。
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 500mm f/4 IS USM
撮影モード: マニュアル露出
シャッタースピード: 1/640
絞り値: F7.1
測光方式: 評価測光
ISO感度: 100
焦点距離: 500.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
 

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予選11位からスタートし、上位フィニッシュの期待が高まった武藤英紀でしたが、決勝ではタイヤのグリップ力やマシン・バランスがうまくまとまらず、17位でレースを終えました。次戦は、去年決勝5位となったミド−オハイオ。マシン・セット・アップの改善、そして上位フィニッシュに期待したいですね。
 
今年からトロント同様、エドモントンのレースもホンダがスポンサーすることになったので看板が目立ちましたが、ターン11に関してはホンダの看板が外周をぐるっと囲い、ホンダ・コーナーとなっていました。
 
そのターン11に来るマシンを良く観察すると、この進入の手前にちょっとした凹凸があるみたいで、けっこうマシンが跳ねてるじゃないですか。そんなシーンを発見してしまうと、その跳ねあがった瞬間っていうのをおさえたくなるのがレース・カメラマンの性。500ミリレンズでは少し物足りず、もう少しアップにしてマシンをフレーム内いっぱいにしたいという欲求が出てきたんです。
 
こうなったら、画像のシャープさが落ちるかもしれないけど、レンズの焦点距離が1.4倍になるエクステンダーを装着するしかないってことで、500ミリレンズを700ミリ相当に。これで理想のフレームミングとなり、写真をカメラのモニターで確認したらね、これが今回は予想以上にシャープだったんです。
 
十分に使えるクオリティというゴーサインが自分の中で出たので、跳ね上がる瞬間をフレームいっぱいで撮影しました。エクステンダーを装着するとオートフォーカスの性能も低下するのですが、このコーナーでは違和感なく追い続け、その瞬間を押さえることができました。いやー、やってみるもんですね。
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 500mm f/4 IS USM+EXTENDER EF 1.4×?
撮影モード: マニュアル露出
シャッタースピード: 1/500
絞り値: F9.0
測光方式: 評価測光
ISO感度: 100
焦点距離: 700.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
 
Text & Photo by Hiroyuki Saito
 
※こちらが今回のPick the Winnerの当選者の方にプレゼントする写真です!