INDY CAR

第10戦トロントのベスト・ショット&撮影裏話!

先週から2戦連続のカナダ戦がスタートしましたねぇ。緒戦のトロントはCARTの取材を始めた頃から何度も撮影しているストリート・コースで、トロントの街を入れ込んだ雰囲気のある写真が撮影できるとても好きなコースです。
 
インディカー・シリーズは2009年から開催されることになり、その前年はシリーズ統合で中止になっていたのでね、去年は久しぶりの撮影でした。毎年メディアセンターとして使われている建物の屋上に行き、トロントの街並みをバックに撮影していたのですが、そのターン1の内側にある建物、オールストリーム・センターが改修工事をしていたので、去年は中にも入れなかったのです。
 
あれから1年。リニューアルしたオールストリーム・センター内にメディアセンターが復活し、これでまた屋上からの撮影もできるべなと思っていた初日のフォトミーティング(カメラマン全員にオフィシャルからの注意事項云々を伝えるミーティング)で確認したところ、なんと今年も屋上には行けないことが判明しました。
 
また、去年コース内に新たに建設された、サッカー場のグランドスタンドにもアクセスができないとのこと。どこか高いところからの撮影はできないのかとコースのメディア担当の人に聞いても、「お生憎さま」って感じで顔を横に振られる始末です。
 
がっかりしつつ第1プラクティスの撮影のためにターン6へ向かい、ターン8の外側からぐるっと周って行こうとしたら、なんとコースサイドがフェンスで遮られて通行止め状態! ほんと時間ないのになぁって、それじゃ次はあそこだって向かったターン4の外側は、フォトホール(撮影用のフェンスの穴)がまだ開いていない・・・。
 
もう笑うしかなかったですね。まぁ、毎年フェンスを張り替えるストリート・コースではたまにあることですが、なんだかなぁってテンションはすっかり下がってしまいましたよ。
 
ともあれ、2日目にはフォトホールも増え、ほっとしたのも束の間、今度は決勝日に毎年撮影していたターン1外側がとんでもない事態に。去年は特別なリフトの上から撮影できたのですが、経費削減なのか用意されないことになり、しかもいったんその場所に入ったら、レースが終るまで出てこられないというではないですか。
 
このターン1は、曲がりきれなったマシンが撮影ポイントの右側を通ってコースに復帰するため、カメラマンはその復帰用のコースを横切らないと、他の撮影ポイントには行けないのです。昔はマーシャルがいて横断を誘導してくれてたんですが、やはり経費削減なのか、今年はマーシャルがいないということで・・・。
 
トロントの撮影に関しては、なんだかぼやくことが年々多くなってきており、ちょっと残念ではありますが、それでもいまだにグッドな撮影スポットが多く残っているので、今回はそんな場所から撮影した写真を選んでみましたよ。
 
 

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レースを撮影していて、今回はポールからスタートしたジャスティン・ウィルソンが勝つと思っていたのですが、ちょっとしたミスが命取りになってしまいましたね。そのおかげで2連勝を飾ることになったウィル・パワー。けっこうね、彼は優勝してもはしゃがないタイプのドライバーなんですけど、表彰台に来てマシンから飛び出したウィルは、突然ビックリするような行動をとったんです。
 
コックピットからノーズの方に向かってうつぶせになり、フロント・タイヤの間にあるカーナンバーにキス。こんなに喜ぶウィルの姿はあまり見たことがなかったのでね、本人にとってこれまでとは違ったうれしさがあったんだなと思いました。次戦は去年優勝したエドモントン。ここでも速いのは間違いないし、エドモントンで2年連続、そして今季初の3連勝も現実になりそうな勢いですよ。
 
さて、この写真を撮影した場所は、決勝日まで撮るのをずっと我慢していたスポットでした。ここは最終ターンの手前、ターン10でコース外側から撮影しています。設置された縁石にドライバーが右フロント・タイヤを乗せるとタイヤが浮き上がることが多く、逆の外側のタイヤは強烈な横Gによって歪んだりします。
 
なぜ決勝日まで撮影を待ったかというと、まぁ、単純ですが背景のグランド・スタンドにね、できるだけ多くの観客を入れたかったんです。マシンの躍動感や、攻めている激しさだけを撮るのであれば、予選のタイムアタック時が一番良いと思いますし、背景はスローシャッターで流せばいいんじゃない? って思うかもしれませんよね。
 
でもこのターンではあえて観客席を入れて一体感を出したかったし、決勝日なら高速シャッターでもスローシャッターでも両方いけます。観客の着ている服によっては、カラフルな背景も出来るのでね、毎年決勝日まで待ってみようかと。まぁ、初日から満席だったらいいんですけど、なかなかそうもいきません。自然と同じで、待つことも大事なんですね。
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 500mm f/4 IS USM
撮影モード: シャッター速度優先AE
シャッタースピード: 1/15
絞り値: F20.0
測光方式: 評価測光
ISO感度: 50
焦点距離: 500.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
 
 

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武藤英紀は22位からスタートし、10ポジション・アップとなる12位でこのトロントをフィニッシュしました。連戦となる次のエドモントンでの活躍も期待です!
 
この写真は前途したターン4の外側で、初日の朝に撮影しようと思って行ったら、まだフォトホールが開いていなかったという場所です。ここはターン3からターン4にかけてのコーナーが、ストリート・コースでは珍しく上り坂となっています。
 
ターン3を立ち上がって坂を上りきる直前、まさにこれからターン4へ進入するという時で、出てきた一瞬をフレームに収めるのです。ストリート・コースを象徴する数少ない場所なので、ここはそういった意味でも昔から多くのカメラマンが撮影ポイントとしてやってきますね。
 
いろいろと制限が多くなったトロントですが、まだまだこのようにストリート・コースならではの撮影スポットが残されていますし、来年はどうなるかわからないということは、逆に新しい発見があるかもしれないということ。毎年同じ撮影ポイントの常設コースでは、絶対にないですからね。まだ誰も知らないようなポイントを見つけ出すのも、ストリート・コース撮影の醍醐味だったりするんです。
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 500mm f/4 IS USM
撮影モード: マニュアル露出
シャッタースピード: 1/500
絞り値: F9.0
測光方式: 評価測光
ISO感度: 100
焦点距離: 500.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
 
Text & Photo by Hiroyuki Saito
 
※こちらが今回のPick the Winnerの当選者の方にプレゼントする写真です!