インディカー第4戦ロング・ビーチで撮影されたベスト・ショットです。こちらを今回のPick the Winnerでプレゼントします。
●撮影したフォトグラファーより
開幕から4戦続いたストリート&ロード・コースのレースは、今年で36年目の開催となった名物ストリート・コースのロング・ビーチで、いったん区切りがつきました。初開催だったブラジルやバーバー・モータースポーツ・パークは新鮮でしたが、ここロング・ビーチはこの仕事を始めた1999年からほとんど毎年撮影しています。
ロング・ビーチは僕が初めて撮影したストリート・コースで、そのときの興奮は今でも忘れられません。コンクリート・ウォールを隔てたわずか1メートル先の目の前を、時速300キロ以上のマシンが爆音とともに通過。「こんなのどうやって撮影すんだろう?」と思いながら、当時、現場撮影をバリバリにこなしていた和記の後を、ただただついていきました。そしてコース内のポイントや撮り方を教えてもらい、無我夢中で撮影していたのを思い出します。
今年で11年目となりましたが、このロング・ビーチに来るとそんな当時の新鮮な気持ちを思い出させてくれます。そのたびに、今年もまたロング・ビーチに来ることができたんだという喜びと、今年はどんな新しい瞬間に出会えるのかという、わくわくした気持ちになるんですよ。
ロング・ビーチほど歴史が長いストリート・コースになると、度々コース・レイアウトの変更がありながらも、昔からロング・ビーチの代名詞ともいうべき名撮影ポイントが何箇所かあります。この撮影場所もそのうちのひとつで、最終コーナーのヘアピン内側です。
マシンと僕の間には厚さ60センチほどのコンクリート・ウォールがあるだけでフェンスはなく、マシンがまさに目の前の壁ギリギリに通過していきます。他のストリート・コースでもここまで走行中のマシンに近い撮影場所は、あまりないですね。狭いヘアピンなので通過していくスピードは低めですが、もちろんそれでも十分速いです。
この撮影場所、昔は人数制限が無かったような気がしますが、いつからか3人ずつの交替制になって撮影時間も限定されるようになりました。今年は2日目の予選に行ったので撮影時間は短くなったものの、上位のグリッドを目指す本気のタイム・アタックで極限まで攻めるドライバーとマシンに、一番近くまで迫れるこのヘアピンで撮影したいと思いました。
ほんとうに手を伸ばせば届きそうなくらい近い場所を通過するので、マシン全体と背景を写し込むためにカメラはフルサイズ35mmのCMOSセンサを搭載しているCANON EOS1Ds Mark?に14mmのワイドレンズを装着し、コックピットでのドライバーのハンドル操作を強調しようとストロボを弱めに発光して撮影しました。
優勝したライアン・ハンター−レイは、予選タイム・アタックのときに接触するんじゃないかと思うくらい、コンクリート・ウォールのギリギリをかすめて予選2位を獲得しました。
ここまで近いと、撮影しながら無意識にふっと身を引いてしまうときがあったりします。「まずいかもしれない」って本能がささやくような感じ・・・。でも、それじゃダメなんですね。後から見直すと、写真は正直だからビビっているのがバレバレです。
そんなとき、「ドライバーだって一歩間違えば命を落とすようなスピードで自分の限界にチャレンジしてタイムを削っているんだから、それに負けないような気持ちが大事。その瞬間を写真で表現するために、自分も限界にチャレンジしないと」って、最初の年に和記に言われたことを思い出したりします。本人はまだ生きてますけど・・・。
今年も自分を奮い立たせ、近づくマシンに挑むような気持ちで撮影しました。
ロングビーチは毎年、駆け出しだったころの初心を思い出させてくれるコースです。
●撮影データ
機種: Canon EOS-1Ds Mark ?
レンズ: Canon EF 14mm f/2.8 L
ストロボ: Canon SPEEDLITE 580EX
撮影モード: シャッター速度優先AE
シャッタースピード: 1/250
絞り値: F7.1
測光方式: 評価測光
ストロボ: E-TTL自動調光
露出補正: -1/3
ISO感度: 50
焦点距離: 14.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
この写真はターン5外側のフォト・ホール(撮影用に開けられた穴)から撮影しました。ロング・ビーチで一番のジャンピング・スポットだと思います。右に曲がるマシンの内側には縁石があり、右フロント、続いて右リア・タイヤが縁石に乗って跳ね上がります。次の瞬間、盛り上がった路面にマシンが着地すると、その反動で一瞬フロント・タイヤが両方浮くのです。
マシンが縁石に乗って跳ね上がった瞬間というのはわりと予測できますが、その後のジャンプとなると、なかなかタイミングが合いません。あまり瞬間にこだわりすぎると、どうしても高速のシャッター・スピードになりがちで、それでは迫力やスピード感が伝わらなくなってしまします。速すぎずかつマシンのディテールが崩れないよう、遅すぎないシャッター・スピードを選びました。
500mmレンズでフレームいっぱいに撮影するので、追うのも簡単ではありませんが、今回は浮き上がった瞬間をうまく捉えることができました。
予選で英紀は第2ステージまで残り、一時トップ6までいける走りを見せました。レースではレッド・タイヤでの走行が厳しく、苦しい走りを余儀なくされましたが、13位でフィニッシュ。次回はニューマン・ハース・ラニガン・レーシングで初オーバル・レースとなるだけに、活躍を期待しましょう!
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 500mm f/4.0 IS USM
撮影モード: シャッター速度優先AE
シャッタースピード: 1/60
絞り値: F22.0
測光方式: 評価測光
露出補正: -2/3
ISO感度: 50
焦点距離: 500.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
この撮影スポットもロング・ビーチでは外せないポイントで、ターン1からターン5までの内側に建っている4階建て駐車場の屋上です。
ターン2〜3の噴水脇を走行するマシンと、そのバックにお馴染みのパーム・ツリー&ロングビーチ湾に停泊するクイーン・メリー号を入れ込み、これぞ“ロング・ビーチ・グランプリ”という代名詞的な俯瞰写真が撮影できるポイントでもあります。この写真を撮る場合は午後から夕方にかけて、順光に近づくのでその時間帯を狙っていきます。
今回の写真はターン3から4にかけて、パーム・ツリーの影の間を疾走するマシンのコックピットでのハンドル操作が良く見えるよう、アップにしました。上から撮影ができるストリート・コースならではの写真です。
マシンの斜め後ろになるので少し逆光ぎみですが、ボディにほんの一瞬だけ太陽の光が反射します。その瞬間とコックピット内にいるドライバーの緊張感、繊細かつ大胆に加速していく様子を表現したいと思い、スローシャッターで撮影しました。
練習走行からタイムが伸び悩んでいた琢磨は、残念ながらレースで完走はしたものの不本意な順位でのフィニッシュとなりました。これからは未知の領域となるオーバルでのレースが続きますが、琢磨がどんな走りを魅せるのか楽しみですね。
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 70-200mm f/2.8 IS USM
撮影モード: マニュアル露出
シャッタースピード: 1/20
絞り値: F32.0
測光方式: 評価測光
ISO感度: 50
焦点距離: 200.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
Photo and Text by Hiroyuki Saito