INDY CAR

ロジャー安川選手のインディカーに掲載された“TEACCH”について

福島大学大学院 教授
日本TEACCHプログラム 会長
よこはま発達クリニック 院長            内山 登紀夫
TEACCHとはTreatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped
CHildren(自閉症および自閉症に関連するコミュニケーション障害の子どものための治療と教育)の略称です。1960年代よりアメリカ・ノースカロライナ州で、自閉症スペクトラムの人たちを支援する包括的プログラムとして発展してきました。
自閉症、高機能自閉症やアスペルガー症候群を総称して自閉症スペクトラムと呼ばれています。自閉症スペクトラムとは、社会性、社会的コミュニケーション、社会的想像力の3つの領域に、障害が発達早期に見られることで定義される障害です。原因は脳の障害によるもので、しつけの問題や性格などの問題ではありません。
現在、日本には自閉症スペクトラムの障害を持つ人たちが100万人いると推定されていますが、その支援プログラムとして最も成果を上げているのが、TEACCHです。
日本の自閉症支援の第一人者である川崎医療福祉大学の佐々木 正美教授らの招聘によって、現在のTEACCH代表であるノースカロライナ大学TEACCH部部長ゲーリー・メジボブ教授らが1989年に来日。日本で初めてのトレーニング・セミナーを行って以来全国各地に広まっていき、今年で20周年を迎えました。
この間に様々な福祉・教育・医療機関などでTEACCHプログラムの考え方を応用した支援がなされてきました。ただ、ノースカロライナ州とは違って日本では公的な支援プログラムとはされていないため、まだまだTEACCHの考えに基づいた支援が普及していません。
このたび、日本でトップ・クラスのインディカー・ドライバーであるロジャー安川選手のパーソナル・スポンサーの一人で、自閉症のご家族を持つ方の働きかけにより、TEACCHを安川選手のインディカーに貼っていただくこととなりました。この素晴らしいアイデアに理解を示し、快く引き受けていただいたロジャー安川選手と、ドレイヤー&レインボールド・レーシングのチーム・オーナーであるデニス・レインボールド氏に、心から感謝します。
日本唯一のインディカー・レースであるインディ・ジャパンを通じ、自閉症スペクトラムのご家族やご友人を持つ多くのみなさんに、TEACCHの存在を知っていただければ幸いです。このアイデアにはノースカロライナ大学TEACCH部のディレクターであるゲーリー・メジボフ教授も大変に興味を示され、ご協力頂きました。

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【ロジャー安川選手コメント】
長年にわたってご支援いただいたパーソナル・スポンサーの方から、このような素晴らしい機会をいただき、とても光栄です。これまでチームの“Racing for Kids”に参加し、難病に立ち向かう子供たちと会って、勇気をいただいてきました。僕自身、二人の子供の親として、自閉症のような障害を持つご家族のみなさんの助けになればうれしいです。TEACCHをレース・ファンのみなさんにも知ってもらい、もっと日本で普及して欲しいと思います。

※ご参考
アメリカン・モータースポーツと福祉について
ロジャー安川選手のチームであるドレイヤー&レインボールド・レーシングは、所属ドライバーが各地の子供病院を訪問して子供たちを励ます活動Racing for Kids に携わっています。今回も9月15日に安川選手が横浜労災病院の小児科を訪れ、入院中の子供たちを激励してきました。
毎年ツインリンクもてぎはインディ・ジャパンに近隣の学校に通う児童や生徒を無料で招待しており、その中には障害を持った子供たちが通う特別支援学校の児童や生徒も含まれています。また、毎年インディ・ジャパンで販売されている人気菓子パンの“インディじゃパン”は、栃木県芳賀郡芳賀町の福祉作業所“こぶしの会けやき作業所”で、障害者の方々によって作られています。
NASCAR最高峰のネクステル・カップでは、アメリカ最大の自閉症研究基金財団であるAutism SpeaksがVISAカードの支援を受け、Autism Speaks 400 presented by VISAというイベント名で開催されています。また、自閉症の家族がAutism Speaksへの寄付のためにレース活動 を行うなど、アメリカではモータースポーツを通じて自閉症に関心をもってもらうような活動がすでに行われています。