INDY CAR

インディ・カー・シリーズ 第16戦デトロイト【決勝日】フォト&レポート

<US-RACING>

画像

今年もクラッシュが相次ぐ波乱のレースとなったデトロイトは、チャンプ・カー勢ニューマン/ハース/ラニガン・レーシングのジャスティン・ウイルソンが栄冠を勝ち取った。やはりストリート・コースではチャンプ・カー勢の底力が爆発。4番手からスタートを切ったウイルソンは31周目に2番手へ浮上すると、燃費が厳しくなってペースを落としたカストロネベスに強烈なプレッシャーを与える。カストロネベスはたまらずブロッキングしてしまい、オフィシャルからウイルソンとのポジションを入れ替えるペナルティが科せられ、ウイルソンが73周目に初めてトップに立った。そこからウイルソンはカストロネベスを引き離す快走を続け、そのままインディカー初優勝のチェッカー。第2戦セント・ピーターズバーグのグラハム・レイホール続く、チャンプ・カー勢の勝利を挙げた。「厳しいレースだったけど、チームが最高の作戦と素晴らしいピット作業をしてくれたんだ。今シーズン中に何とか1勝したかったから、今日の勝利は大きな意味がある。僕のキャリアにおいても重要な勝利といえるね」と大喜びのウイルソン。ルーキー・オブ・ザ・イヤー争いでも、トップの武藤英紀に13ポイント差と迫る2位に大躍進した。

画像

逆転タイトルに向けて負けられないカストロネベスは、惜しくも2位に終わった。2番手スタートのカストロネベスは、目の上のたんこぶだったディクソンが2度目のイエローコーションでピットストップに入ったことで、労せずしてトップに立った。インフィニオンに続く2戦連続優勝に期待が高まったなか、レース終盤は燃料が厳しくなり、徐々にペースダウン。背後から2番手のウイルソンが猛追し、百戦錬磨のカストロネベスは巧みなブロック・ラインを通ってウイルソンを抑え込んだはずだった。ところがオフィシャルはこれを悪質なブロッキングと判断。予想外のペナルティでトップをウイルソンに手渡し、見えていた2連勝が夢と消えた。結局2位でフィニッシュしたカストロネベスは、ディクソンより上位となったため最終戦までチャンピオンの可能性を残したものの、優勝してもっと優位に立ちたかったところだ。「今回で8回目の2位フィニッシュになったよ。でもポイントではチャンピオンシップをまだ狙えるね。2002年からこのシリーズに参戦しているけど、今回のような状況は初めてなんだ。僕たちはいつでも警戒しているし、もう一度同じことをしたらペナルティを受けることは知っている。でも突然、『ポジションを譲るのか、それともブラック・フラッグで失格になるか』なんて警告されてもね・・・」と残念がるカストロネベス。白熱のタイトル争いもあと1レースとなったが、大逆転劇は起こるのか来週の最終戦が待ちきれない。

画像

2007年ウイナーのトニー・カナーンは3位でフィニッシュした。昨日の予選こそ第2セグメントで敗退を喫し、8番手からスタートすることになったが、決勝ではライバルがピット・インしている隙にハイペースのラップを刻んでポジション・アップ。ベテランのカナーンといえども、ストリート・コースでライバルをパッシングするのは難しく、3位まで追い上げるのが精一杯だった。「3位でフィニッシュしたのはそんなに悪くないね。僕達はチャンピオンシップの3位をかけてダンと戦っているんだけど、今日、彼はリタイアした。これでチャンピオンシップはトップ争いだけでなく、3位争いも面白なったと思うよ」とカナーン。最終戦でウエルドンからチャンピオンシップ3位の座を守れるか注目だ。

画像

デトロイトのバンピーな路面に手を焼き、トップ10にも入れない厳しい週末を過ごした武藤英紀。スタート・ポジションの16番手からなかなか順位を上げられずにいたため、最初のピット・ストップをライバルより早める作戦をとるが、この作戦が裏目に出てしまいペースの遅いマシンに引っかかってしまった。それでも苦しみながら粘り強く走り続ける武藤は、ライバルの脱落に助けられ、徐々にポジションをアップ。残り3周ではグラハム・レイホールがピット・インしたため、11位までポジションを上げてフィニッシュした。次戦はデビュー・レースで走ったシカゴランド。思い出の地で来シーズンにつながる走りを期待したい。

画像

「すごく厳しいレースでした。タイヤの温まりが悪くてグリップせず、リスタートのたびに順位を落としてしまいました。マシン・バランスは悪くなかったと思います。ただこのコースでは前のマシンを抜けないので、ストレスが溜まりました。(最初のピット・ストップは)もう少し引っ張っても良かったかもしれないです。中途半端なタイミングであまりメリットがありませんでしたからね。ポイント獲得を優先してミスのない走りを心がけましたけど、チームとのやり取りに問題があるなど課題も見つかりましたので、チームとの連携を確認して最終戦に臨みたいです。シカゴランドはようやくインディカーで走ったことのあるコースですから楽しみですね」

画像

決勝日のデトロイトは朝から雲ひとつない青空が広がった。気温は今週末最高の29度を記録する絶好のレース日和となり、用意されたグランド・スタンドがほぼ埋まる盛況ぶり。パドックやライブ会場なども人であふれ、インディカー開催2年目も大成功に終わった。今回レースが行われるベル島はちょうどカナダとアメリカの国境に位置している。そのためなのか、ピット正面には“カナディアン・グランド・スタンド”という名称の席が設けられたほか、レース・セレモニーではカナダ国歌とアメリカ国歌の両方が斉唱されていた。今シーズンはエドモントンでインディカーが行われ、来シーズンからはトロントもスケジュールに加わる。カナダの人にとってはさらにインディカーが身近になることだろう。

画像

レース・セレモニーで行われたドライバー紹介は、今回ピット・クルーも合わせて紹介されることになった。前後左右それぞれのタイヤを交換する担当、エア・ジャッキ担当と燃料補給担当の6人が、ドライバーとともに名前を呼ばれて登壇。いつもは裏方としてドライバーを支えるピット・クルーだが、今日はスタンドを埋める大観衆からの声援を受け、彼らの表情も誇らしげだった。

画像

元スーパー・アグリF1のレギュラー・ドライバー、アンソニー・ディビッドソンがパンサー・レーシングのゲストとしてデトロイトを訪れていた。来月ヘレス・サーキットで行われるトロ・ロッソのテストに、元チームメイトの佐藤琢磨とともに参加するのではと噂されているデイビットソン。実は2週間前にイニフィニオンでパンサー・レーシングのテストに参加する予定だったが、直前にデイビットソンがマウンテンバイクで肩を怪我したため、テストが見送られることになったそうだ。パンサー・レーシングは来シーズンから再び2台体勢を敷く予定で、その候補にはデイビットソンのほか、GP2で活躍するマイク・コンウェイやインディ・ライツで同チームに所属するダイロン・バティスティーニが上がっている。今回の機会を逃したデイビットソンにも再びテストが予定されており、シーズンが残り1戦となったなかで、来年に向けてのシート争いが過熱してきた。