＜US-RACING＞
序盤からピット戦略が入り乱れたレースは、要所でスパートをかけたエリオ･カストロネベスが制した。マーティ･ロスの単独スピンによる16周目のコーションでピット･インしたカストロネベスは、一時15番手まで順位を落としてしまうが、ピット･タイミングの違いから36周目にリードを取り返すと、いっきにペース･アップ。ただ一人1分18秒台で飛ばしまくり、2回目のピット･ストップ終了時は4番手、そして最後のピット作業を終えたときには、トップのままコース上に復帰を果たし、念願の今シーズン初勝利に向けて突き進んだ。その後、カストロネベスを脅かすドライバーはなく、昨年のセントピーターズバーグ以来、30戦振りの勝利をようやく手にした。「みんなからいつかは勝利の扉が開くといわれ続けていたけど、今日やっとその扉を開けることが出来たんだ。チームは素晴らしい努力をしてくれた。彼らには感謝してもしきれないくらいだよ。ほんとうにエキサイティングな一日になったね」とカストロネベス。マシンを降りると一直線にグランド･スタンドに向かい、久しぶりのフェンスを登りを見せた。よほどうれしかったのか、カストロネベスはフェンスを越え、応援していた観客の中に飛び込んで歓喜の雄叫びをあげるほど。タイトルを争うディクソンは12位に沈み、ポイント差を46まで縮めて次戦に望みをつないだ。
2位にはライアン･ブリスコーが入り、ペンスキーのワンツー･フィニッシュ。水曜日に起きたトランスポーターの火災事故を吹き飛ばす、完璧なレース･ウィークとなった。カストロネベスとは異なり、通常どおりのツー･ストップを選択したブリスコー。17周目にカストロネベスからリードを引き継ぎ、トップを快走するが、1回目のピット･ストップ終了後にペースの遅いエンリケ･ベルノルディの後ろに出てしまい、思い通りのペースで走れなかったことで優勝を逃した。「信じられない結果だよ。火災事故から今週末が始まって、予選と決勝ではワンツーを独占した。今シーズンで一番いいレースを見せることができたんじゃないかな。エリオが勝てて僕も嬉しいよ」と喜ぶブリスコー。優勝はできなかったものの、チームメイトの久々の勝利を心から祝福した。
トニー･カナーンはペンスキーの圧倒的な強さの前になす術がなかった。序盤こそカストロネベスとブリスコーになんとか喰らいついていたが、今日のペンスキーは格が違い、結局カストロネベスから16秒も離されてのフィニッシュ。ベテランのカナーンをもってしても3位を守るのが精一杯のようだった。「優勝を目指していたけど、つまらないレースだったね。パッシングはないし、1周目から燃料をセーブしなくてはいけなかった。何も面白いことなんてなかったよ」と肩を落とすカナーン。昨年、優勝したゲンの良いデトロイトで、アンドレッティ･グリーンを復活に導いて欲しい。
20番手からスタートした武藤は、遅いペースのマシンを避けるため、レースが始まって間もない7周目にピットインを敢行。自分のペースで走行できる空間をコース上で見出そうとした。ところがこのピット作業に手間取ったことで思惑が外れ、ペースが遅いベルノルディの後ろでコースに戻ってしまう。本来であればベルノルディより2秒速く走れるパフォーマンスがある武藤だが、コーナーが連続するこのインフィニオンではパッシングが難しく、結局6周にわたって抑えられることになった。その後もピット･ストップのたびに遅いマシンに引っかかり、思いどおりのレースができないまま13位でフィニッシュ。悪い流れを断ち切ることができず、インフィニオンをあとにした。次戦デトロイトは武藤が得意とする市街地コース。次こそ浮上のきっかけをつかみたい。
「厳しいレースでしたね。ライバル達が僕よりも遅いタイミングでピット･インするだろうと予想し、レース序盤にピットに入ることで渋滞のないところを走る予定でした。しかし、他のチームが同じタイミングでピットを行った事で、僕達が望んでいたような展開にはならなかったんです。戦略がうまくいけば、トップ･シックスでフィニッシュできたと思いますが、作戦がかならずうまくいくとは限りません。次のレースでは良い結果が出せるように頑張ります」
土曜日の予選で第1セグメント敗退を喫し、16番手からスタートする羽目になったダン･ウエルドン。武藤と同じくレース序盤にピット･ストップを行う戦略をとったが、武藤とは対照的に、ピット･アウトしたあとに単独走行できるスペースを確保する。これで自分のペースを乱さず走行できたウエルドンは、ライバルがピット･インする隙にポジション･アップ。チップ･ガナッシの巧みな戦略が功を奏し、ロード･コースでは今シーズン･ベスト･リザルトとなる4位でチェッカーを受けた。「最初のピット･ストップが今日のレースを決めたね。渋滞のないところでタイムを稼ぐことができた。レース終盤はペースが遅いトニーをパスしようとしたが、彼は重要な場所では速さを保っていたからパスできなかったんだ。最後は残念だったけど、良い一日になったよ」と喜ぶウエルドン。デトロイトでは予選からダッシュを決めて、表彰台を狙いたいところだ。
ウエルドンとは違い、まったく良いところがなかったスコット･ディクソン。優勝したカストロネベスと同様に、最初のコーションを利用してピット･ストップを行ったが、カストロネベスを追いかける速さはなく、逆にペースが遅いベルノルディに抑えられ、最後のピット･ストップを終えたときは14番手まで後退していた。ブルーノ･ジュンケイラのピット･ストップとマリオ･ドミンゲスの単独スピンによって2つポジションを上げるも、前を走るバディ･ライスを捕らえることはできず、そのまま12位でフィニッシュ。タイトル獲得は次戦以降に持ち越されることになった。
気温13度と朝のうちはいつものように肌寒いインフィニオン･レースウエイ。上空には雲がかかっていたが、ウォーム･アップ･セッションが始めると、嘘のように雲が流れて快晴にかわった。気温も次第にあがり出し、レース開始時刻には今週末の最高となる32度まで上昇する。歩き回ると汗がにじみ出てくるほどで、ビール片手の観戦にはもってこいの一日となった。