INDY CAR

武藤英紀が日本人ドライバー史上最高の2位表彰台を獲得。ダン・ウェルドンは今季2勝目

<Honda>

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2008年6月22日(日)
決勝
会場:アイオワ・スピードウェイ
天候:快晴
気温:24〜26℃
IRL IndyCarシリーズ第8戦は、アメリカ大陸のほぼ中央に位置するアイオワ州の州都デ・モイン郊外にあるアイオワ・スピードウェイで開催された。今月に入ってデ・モイン一帯は数日間にわたる集中豪雨に遭い、大洪水の被害に見舞われたが、初開催だった昨年に続いて今年もスピードウェイを満員にする大勢のファンが詰め掛けた。
雨によって予選はキャンセルされ、スターティング・グリッドは第7戦までのエントラントポイントによって決定された。ポールポジションを手にしたのはポイントリーダーでIndy500ウイナーでもあるスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)で、フロントロー外側からはランキング2位のエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)がスタートした。

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武藤英紀(アンドレッティ・グリーン・レーシング)は、全長が1マイルに満たないショート・オーバルのプラクティスで最速ラップタイムを記録するなど、初めて走るコースとは思えないパフォーマンスを見せてポールポジション候補に挙げられたが、予選が行われなかったために7番グリッドからグリーンフラッグを受けることとなった。
好天に恵まれたレースで序盤から激しいトップ争いを繰り広げたのは、カストロネベスと4番グリッドからスタートしたトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)で、8番手スタートのマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)と14番グリッドからスタートのライアン・ハンターレイ(レイホール・レターマン・レーシング)がそこに加わった。

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250周のレースが終盤を迎えた187周目、1台のマシンがスピンしてフルコースコーションが出された。ここでカストロネベスを先頭とするトップグループは最後の給油を行うためにピットへと向かった。しかし、ダン・ウェルドン(チップ・ガナッシ・レーシング)、武藤、ダニカ・パトリック(アンドレッティ・グリーン・レーシング)はコースにステイアウトする作戦を採り、彼らがトップ3へとポジションを上げた。
その後、カナーンが3位まで順位を上げたところでアクシデントを起こし、カストロネベスも他車との接触でタイヤを傷めて後退。ハンターレイはレース終盤になってハンドリングが悪化し、再びトップグループへと返り咲くことはなかった。

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カナーンのアクシデントで出されたフルコースコーションが14周と長引いたため、ウェルドン、武藤、パトリックもゴールまで燃料補給なしで走りきれることとなった。190周目にピットインしなかった作戦が見事に当たったウェルドンは、逃げきり態勢に入ろうと試みたが、武藤も引き離されることなくアタック。しかし、その武藤にはアンドレッティが迫った。3台によるバトルは20周以上にわたって続き、ウェルドンがポジションを守りきって今シーズン2勝目を挙げた。
武藤は0.1430秒届かずに2位でフィニッシュ。この成績は自己ベストであるだけでなく、日本人インディカードライバーとして史上ベストとなった。そして、武藤のポイントスタンディングは5位へと浮上した。ポイントリーダーのディクソンは4位、パトリックは6位でゴールした。
■ダン・ウェルドン(優勝)

「レース終盤の作戦が功を奏し、僕らは勝利を手にすることができた。ゴールに向けての走りでマシンのハンドリングも非常によいものとなっていたことも勝利につながった。チップ・ガナッシ・レーシングは、今回のレースでも持てる高い能力をフルに発揮してくれた。洪水の被害に遭ったアイオワの人々が、今日のエキサイティングなレースを見て少しでも笑顔を取り戻してくれたら、それは僕にとってとてもうれしいことだ」

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■武藤英紀(2位)

「日本人インディカー・ドライバーとしてベストとなる成績ですから、2位でフィニッシュできたことをうれしく思います。日本人ドライバーとして初めて表彰台に上るということも自分としては目標としていて、それを実現することもできました。しかし、もうちょっとでダン・ウェルドンをパスできていたと考えると、悔しさの方が大きく、トップ3入りを果たしたうれしさは自分が考えていたよりも小さなものに感じています。表彰台に上がることはできたので、これからは優勝だけを目指して戦っていきます」

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■マルコ・アンドレッティ(3位)

「すばらしいクリーンファイトだった。ファンもエキサイトしてくれたと思う。最後はヒデキ(武藤)をパスしようと全力を挙げたが、アウトから抜くだけのスピードが自分にはなかった。インを突くことも狙ってみたけれど、ヒデキは最後まで隙を見せなかった。お互いに最後までフェアに戦ったので、僕としても思いきりレースを楽しめた。ヒデキはもうルーキーじゃないね。もう僕らを悩ませる強力な存在だ」
■ロジャー・グリフィス(HPD テクニカル・グループ・リーダー)

「洪水という災害があったにもかかわらず、満員のグランドスタンドの前でレースができたのは、本当にすばらしいことだった。多くのチームが被害に遭った学校の帽子を被るなど、地域の人々を励まそうとしていた。今年最高といっていい好天に恵まれたレースは、ハイスピードでエキサイティングなものとなった。最後は作戦のよし悪しがレースを決することとなり、ダン・ウェルドンに無給油、スコット・ディクソンには給油をさせる2通りの作戦を採用したチップ・ガナッシ・レーシングが勝利をつかんだ。2位でゴールしたのは武藤英紀だった。彼が確かな才能を備えていることは、まだシーズンの半分も戦っていないというのに、非常に冷静でクレバーなレース運びを見せてきているところに現れている。英紀が優勝を実現する日も遠くないだろう」