<Formula Dream Indy>
<2008 IRLインディカー・シリーズ第5戦 第92回インディアナポリス500マイルレース>
【日 程】2008年5月4〜25日
【開催地】インディアナ州インディアナポリス
【コース】インディアナポリス・モーター・スピードウェイ
【距 離】オーバルコース:2.5マイル(4.023km)
【天 候】25日:晴れ/気温22〜24℃
【時 間】午後1時00分〜(日本時間26日午前2時00分〜)
■■■5月25日決勝■■■
<好天に恵まれた決勝>
華やかなパレードの行われた土曜日に続き、インディアナポリス・モーター・スピードウェイは決勝日も好天に恵まれた。レースが近づくに連れて少し雲が出るなど空模様に小さな変化はあったものの、スタート時刻である午後1時の気温は22℃にまで達していた。
20℃を上回る走行セッションの気温での走行は、5月初旬に2日間あっただけ。このコンディションにマシンのハンドリングはどれほどの影響を受けるのか、セッティングの調整がレースに大きな影響を及ぼすと見られた。
<大観衆を前に33台がスタート>
スピードウェイ周辺はレースファンのクルマが朝から渋滞を作り、コースを覆い尽くすように建てられたグランドスタンドは、スタート前には超満員。インフィールドにも大勢のファンが陣取っていた。世界最大のイベントは、40万人近い観客を集めるエネルギーを備えているのだ。
朝方から続いていた賑やかなアトラクションとセレモニーの後、時計の針が午後1時を回ったところで「レディース・アンド・ジェントルメン、スタートユア・エンジンズ!」の号令がかかり、グリッドに並んだマシンは一斉にエンジンの咆哮を上げた。この瞬間、超満員のファンの歓声がインディアナポリス・モーター・スピードウェイ全体を揺るがした。
<9位をキープする順調な出だし>
武藤英紀にとって今回は初めてのインディ500であったが、大観衆を前にしても冷静なスタートを切り、予選順位と同じ9位を保って1周目のスタート・フィニッシュラインへと戻ってきた。
ところが、8周目に最初のフルコースコーションが出され、ピットインをほぼ全員が行った時、武藤はエンジンをストールさせたために27位まで大きくポジションを落としてしまった。
<目覚しい走りで上位へと再進出>
トップが見える位置から一転、後方集団に飲み込まれた武藤だったが、マシンのハンドリングは非常に良く、64周目に3回目のピットストップを終えると、8位まで順位を挽回していた。
ところが、エアロバランスを調整した5回目のピットストップで再び13位まで後退。このころからトラフィック内でのハンドリングが狂い始め、武藤はコクピット内でできる調整を頻繁に繰り返しながらのドライビングを続けることとなった。
<一進一退の苦しい戦い>
後半戦に入ってからの武藤は、リスタートでポジションを落とし、それを取り戻す戦いを続けた。トップ10への復帰がなかなか果たせず、厳しいバトルとなっていた。そうこうしているうちに残り周回は50ラップを切り、いよいよレースは終盤へと突入した。
156周目、7回目のピットストップもフルコースコーション下で行われた。武藤は12位でピットアウト。リスタートで1台をパスして11位へと浮上した。次の171周目のピットストップではダニカ・パトリック(アンドレッティ・グリーン・レーシング)とライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)が接触。彼ら2台が後退したことも手伝い、武藤の順位は8位にまで上がった。
<魅せた、最後のリスタート>
アクシデント多発のレースは、ついに一度もリーダーたちにグリーンフラッグ下でのピットストップを行わせない展開となった。176周目、8位につけて最後のリスタートを迎えた武藤は、ここでインから一気に3台をパスし、5位へとポジションアップする。
トップ5フィニッシュ、さらに上位でのゴールを目指して武藤は全力で走ったが、マシンのハンドリングが万全ではなかったためにエド・カーペンター(ヴィジョン・レーシング)、ライアン・ハンター・レイ(レイホール・レターマン・レーシング)に先行を許してしまう。しかし、それでも武藤はリードラップにとどまり続けて200周を走り抜き、7位という結果を手に入れた。初めてのインディ500での一桁フィニッシュは誇りとして良い成績であろう。
■■■コメント■■■
<武藤英紀>
「500マイル走りきった経験をこれからのシーズンに活かして戦いたい」
「初めてのインディ500は、とても長かったですね。マシンのセッティング調整が良い方向に向かわず、最後のスティントはもっと上位につくことができると思っていましたが、それができませんでした。最後に2台に抜かれたことで、今後に対する自分たちの課題が見えました。
マシンは乗りやすかったのですが、最高速が頭打ちになっていたために、ダウンフォースを削ることで解決しようとセッティングを変更しました。しかしその変更に時間がかかってポジションを落としたのと、その変更によってトラフィック内でのマシンバランスが崩れてしまい、結果的にセッティング変更は裏目に出てしまいました。
インディ500は特別なレースだけにチームのモチベーションが非常に高く、その中で自分は1カ月間一緒に仕事をしました。ドライバーとしての能力、チームとのコミュニケーション、どちらの面でも学ぶことが多く、残りのシーズンに向けて大きな収穫が得られました。
雨でプラクティスや予選がキャンセルになった日もありましたが、毎日レーシングカーに乗るのは初めてだったし、1カ月という長い戦いは自分にとって大きな経験になりました。来週すぐにミルウォーキーでレースがあるので、気持ちを切り替えてまた戦いたいと思います」
<レイ・ガスリン:レースエンジニア>
「ヒデキは最後まで粘り強い戦いを見せてくれた」
「7位という結果は非常に残念だ。しかし、明日の朝に目覚めたら、私もヒデキも、初めてのインディ500での7位は決して悪くないものだと感じることができるのではないだろうか。
レース序盤に大きくポジションを落としながら、ヒデキはすぐにトップ10へと返り咲いて見せた。マシンの調子はとても良かったのだ。そこからは相手も実力派ドライバーばかりなので、スイスイと順位を上げていくというわけにはいかなかったが……。レース中盤にはリスタートでも苦戦を強いられた。それでもヒデキは粘り強く戦い続け、最後のリスタートは一気に3台をパスした。
今回はフルコースコーションがとても多く、グリーン下でのピットストップが一度もないという、通常とは異なるレースとなっていた。我々のマシンはロングランで速く、タイヤの持ちもライバルたちに比べると長かったので、レース展開も我々にとってマイナスに作用していたと思う。
最後のスティントではハンター・レイとの6位の座を争った。ヒデキも全開だったが、相手の方が少し速く、オーバーテイクを許すこととなった。最後まで彼を押さえ切れたら良かったが、それができなかったことも今回のレースでの悔しい点だ」
■■■決勝結果■■■
2.5マイル(4.023km)×200周=500マイル(804.672km) 出走33台
順位 No. ドライバー タイム 平均速度mph(km/h)
1位 9 S.ディクソン 3:28’57.6792 143.567(231.049)
2位 4 V.メイラ +1.7498 143.547(231.017)
3位 26 M.アンドレッティ +2.3127 143.541(231.007)
4位 3 H.カストロネベス +6.2619 143.496(230.934)
5位 20 E.カーペンター +6.5505 143.492(230.928)
7位 27 武藤英紀 +7.8768 143.477(230.904)
※全車シャシー:ダラーラ/エンジン:Honda/タイヤ:ファイアストン
■■■ポイントスタンディング■■■
順位 No. ドライバー ポイント ビハインド
1位 9 S.ディクソン 191 リーダー
2位 3 H.カストロネベス 176 -15
3位 10 D.ウェルドン 153 -38
4位 11 T.カナーン 139 -52
5位 26 M.アンドレッティ 130 -61
9位 27 武藤英紀 113 -78