INDY CAR

スコット・ディクソンがIndy500初優勝。武藤英紀は初めてのIndy500で7位フィニッシュ

<Honda>

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2008年5月25日(日)
決勝
会場:インディアナポリス・モーター・スピードウェイ
天候:晴れのち曇り
気温:22〜23℃

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プラクティスと予選までは例年になく悪天候に見舞われることが多かった第92回Indy500だが、決勝日を迎えたインディアナ州インディアナポリスは朝から雲一つない快晴に恵まれ、これ以上ない絶好のレース日和となった。スピードウェイには朝早くから続々と観客が押し寄せ、世界で最も長い歴史を誇るビッグイベントの雰囲気が一気に高まった。
午前11時、この9月にインディアナポリス・モーター・スピードウェイで初開催されるMotoGPに向けて06年ワールド・チャンピオンのニッキー・ヘイデンがHonda RC212Vでデモ走行。そのあとにドライバー紹介、アメリカ国歌斉唱、恒例となっている「バック・ホーム・アゲイン・イン・インディアナ」の独唱など、華やかなセレモニーが続いた。

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インディアナポリス・モーター・スピードウェイ・チェアマンのメアリー・ハルマン・ジョージ氏が、「スタート・ユア・エンジンズ!」と発声したのは午後1時過ぎ。これを受け、予選を通過した33台のマシンのHondaエンジンに火が入れられた。

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40万人といわれる観客が大歓声を上げる中、全長2.5マイルの超高速オーバルを使って200周で争われるレースがスタート。ポールポジションからスタートしたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は、レースを通してトップ3を保ち続ける力強い走りを続けた。
エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)は他車のアクシデントで飛び散ったマシンの破片でフロントウイングにダメージを負って、後れを取った。ダン・ウェルドン(チップ・ガナッシ・レーシング)はサスペンションのトラブルで後退し、トニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)もアクシデントで姿を消した。

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8回ものフルコースコーションが出され、3時間28分にも及んだ長いレースで最後にディクソンに襲い掛かったのは、ヴィットール・メイラ(パンサー・レーシング)だった。8番グリッドからスタートし、トップグループにポジションを維持していたメイラは、残り周回数が50周をきってからのリスタートでトップをディクソンから奪った。しかし、フルコースコーション中の171周目に行われた最後のピットストップで相手の先行を許した。
最後のリスタートはゴールまで24周で切られ、逃げるディクソンにメイラがアタック。2人の差は残り5周となったときに0.5秒以下まで縮まり、スピードウェイは興奮のるつぼと化した。しかし、周回遅れが彼らの前に現れ始めるとディクソンがリードを広げ、その差を1.7498秒とし、チェッカーフラッグを受けた。
ディクソンは初めてのIndy500制覇を達成。チップ・ガナッシ・レーシングにとっては2000年のファン・パブロ・モントーヤに次ぐ2勝目となった。チップ・ガナッシはパトリック・レーシングの共同オーナーとして89年にもエマーソン・フィッティパルディとともに優勝を飾っている。メイラの2位フィニッシュは05年に続く2度目となった。

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ルーキーの武藤英紀(アンドレッティ・グリーン・レーシング)は、初めてのIndy500で7位フィニッシュを果たした。スタート直後のピットストップでエンジンをストールさせ、9位から27位まで大きくポジションを落としながら、目覚ましい走りで素早くトップ10までばん回。ゴールまで30周をきっていた最後のリスタートでは8位から5位にまでジャンプアップする活躍を見せたが、ハンドリングが最高の状態ではなかったために、2台にパスを許した。ルーキー最上位は6位でフィニッシュしたライアン・ハンターレイ(レイホール・レターマン・レーシング)のものとなった。
この4月にツインリンクもてぎでキャリア初優勝を遂げたばかりのダニカ・パトリック(アンドレッティ・グリーン・レーシング)は、最後のピットストップを7位で迎えたが、ライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)と接触して無念のリタイアを喫した。

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■スコット・ディクソン(優勝)

「自分が勝てたことがまだ信じられない。レースの終盤は、何か悪いことが起こるのではないかと、ずっと気が気ではなかった。マシンの調子はよかったので、とにかく集団の先頭を走り続けようとがんばり続けていた。ダウンフォースを少しつけ過ぎていたようにも感じられたが、トップを守り通せば誰も僕を抜けはしないと信じて走り続けた。チームが力を出しきってくれたからこそ得られた勝利だ」
■ヴィットール・メイラ(2位)

「優勝できなかったのは悔しいが、昨年の不振、今シーズン開幕直後の苦戦ぶりを考えれば、2位フィニッシュはチームに勢いを取り戻すすばらしい結果だ。レースに対するチームの準備は万全で、マシンは考えていた通りのすばらしいものに仕上がっていた。パンサー・レーシングはついに本来の力を取り戻した」

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■マルコ・アンドレッティ(3位)

「アンドレッティ・グリーン・レーシングはこの1カ月間ずっと最高の仕事をしてくれていた。僕らのマシンはプラクティスから常にトップレベルにあり続けていた。最後のピットストップでリアウイングを調整したことが結果的に失敗だったかもしれないが、それはレースが終わった今だから指摘できることだ。3位で高ポイントを獲得できたのだから、残るシーズンをよいものとするために全力を挙げる」

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■武藤英紀(7位)

「初めてのIndy500で7位フィニッシュしたわけですが、もっと上位でゴールできたと考えられるだけに、この結果は悔しいです。トップスピードが伸びきっていなかったため、レース中にダウンフォースを削るようにセッティング変更をしたのですが、それがマシンのバランスを崩す結果となってしまいました。しかし、この1カ月間はドライバーとしても、チームとのコミュニケーションという意味からも非常に多くを学べた、収穫の多い1カ月でした。来週のミルウォーキーから、またがんばります」
■エリック・バークマン(HPD社長)

「好天に恵まれ、大観衆が集まってくれたレースは、フルコースコーションが多い展開となった。ピットストップが繰り返され、レースの終盤がどのような戦いとなるのか、作戦も含めて予測するのが非常に難しい戦いとなっていた。スコット・ディクソンはすばらしいレースを戦い、最後は食い下がるヴィットール・メイラを突き放して初優勝を飾った。2戦連続で燃費作戦で勝利を逃した彼らだが、その経験から学んだ点も多かったのだろう。ディクソンとチップ・ガナッシ・レーシングの見事な戦いぶり、そして優勝をたたえたい。今年もHonda Indy V-8はIndy500というシリーズで最も長いレースでトラブルを一切出さなかった。3年連続でレース中のトラブルなし、という完ぺきな結果を手にできたことも我々は喜びたい」