INDY CAR

ダニカ・パトリックが女性としてインディカーで史上初優勝。武藤英紀11位、ロジャー安川14位

<Honda>

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2008年4月20日
決勝
会場:ツインリンクもてぎ
天候:曇り
気温:16.6℃

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2008年のIRL IndyCarシリーズ第3戦ブリヂストン・インディジャパン 300マイルは、金曜日に降った大量の雨の影響で、コースの水が引かなかったために、1日順延されて開催された。

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午前11時過ぎ、本邦初公開のHondaの新型燃料電池車「FCXクラリティ」の先導によってローリングを開始し、グリーンフラッグとともにレースがスタートした。低い気温、強い風、連日の降雨でグリップが低くなっている路面と、ドライビングが非常に難しいコンディションでの戦いは、ポールポジションからスタートしたエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)やスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、昨年度ウイナーのトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)らの強豪が争う展開となった。
しかし、ゴールまで60周をきってから出されたフルコースコーションを利用し、148周目にカストロネベスとダニカ・パトリック(アンドレッティ・グリーン・レーシング)がピットイン。ゴールまで無給油で走りきる作戦を採用した。彼らの作戦は見事に的中し、レース終盤、土壇場はこの2人による優勝争いが展開された。

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ゴールを目前にしてディクソンを先頭とするトップグループは短い燃料補給を行い、彼らがピットにいる間にカストロネベスとパトリックは1位、2位へとポジションを上げた。そして、もうゴールまで2周となったとき、燃料の残量が厳しくなったカストロネベスは大きくペースダウン。パトリックは彼をパスし、キャリア初優勝のフィニッシュ・ラインへと飛び込んだ。アメリカのオープンホイール・レースは1909年からという長い歴史を誇るが、女性ドライバーがトップ・オープンホイール・シリーズで優勝するのは史上初のことである。

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インディカー・ドライバーとして初めての凱旋レースを戦った武藤英紀(アンドレッティ・グリーン・レーシング)は、レース序盤のピットアウト時にスピンしてフロントウイングを破損し、1周の周回遅れに陥った。そこから何とかトップグループへ復活しようと武藤はすばらしいペースで走行。チームも作戦を駆使したが、最後のピットストップで十分に燃料を補給できないトラブルが発生し、燃費セーブを強いられて11位フィニッシュとなった。

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ブリヂストン・インディジャパン 300マイルへの4回目の出場をスポット参戦ながら果たしたロジャー安川(ベック・モータースポーツ)は、今回がチームとの初仕事ということもあってマシンセッティングが不十分だったが、レースではピットストップ時に行った調整で確実にスピードアップした。しかし、134周目にブレーキが異常発熱に陥り、リタイアを喫した。
<コメント>

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■ダニカ・パトリック(優勝)

「ついに勝つことができた。05年にツインリンクもてぎ、そしてIndy500で勝利まであと一歩のところまでいったので、初勝利はもっと早く実現できると思っていた。ところが、不運が重なったシーズンもあって、ずっと勝てずにきていた。今日は燃費作戦が勝敗を決するレースになって、私たちのチームが完ぺきな作戦を選んでくれた。同じ作戦のエリオ・カストロネベスをパスした瞬間は、とてもエキサイティングだった。ビクトリーレーンに行っても、自分が本当に勝ったの?と信じられなかった」

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■エリオ・カストロネベス(2位)

「最後のピットストップを行ったあと、しばらく走ってから燃料をセーブする必要があることに気づいた。そこからはラップタイムを大幅に遅くして走ったけれど、最後にダニカ・パトリックにパスされてしまった。彼女はすばらしいレースを戦っており、インディカー・レースで初勝利を飾った。この偉業を心から讃えたい」

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■スコット・ディクソン(3位)

「僕らはベストを尽くした。マシンはとても速かったし、優勝に向かって突き進んでいた。しかし、今日はレースを燃費勝負へと切り替えたチームが勝つという展開になった。ダニカ・パトリックたちは最後のフルコースコーション中にピットインし、そこから無給油で走りきった。あの時点で僕らはレースをリードしていたので、彼女たちのようなギャンブルに出ることはできなかった」

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■武藤英紀(11位)

「ピットアウトしたあとにスピンをしてしまったのは、ペースカーを追い越していいのかちゅうちょしたあと、アクセルを一気に踏み込んでしまったからでした。自分のミスでしたが、まだ戦略を使えばばん回は可能だと考えていました。マシンのハンドリングは非常に安定していて、とてもいいペースで走れていたからです。しかし、最後のピットストップで燃料をフルに入れることができず、ゴールを目の前にして燃費セーブが必要になってしまいました。この2つのミスがなければ、今日は勝つことができたレースでした。それだけにとても悔しいのですが、これからのシーズンを戦っていくために本当に多くのことを学ぶことができ、収穫の多いレースになりました」

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■ロジャー安川(14位)

「久しぶりのブリヂストン・インディジャパンでしたが、最後まで走りきることができず、本当に残念です。金曜日の走行が全部キャンセルされたことと、決勝前に取れた走行時間が短かったこともあって、スタートしたときのマシンはバランスがよくありませんでした。ピットストップでセッティングを変更してクルマは大分よくなって来たのですが、ブレーキがロックする症状が出たため、リタイアすることになりました。Indy500にも出場できるよう、現在、いくつかのチームと交渉中ですので、これからも応援をよろしくお願いします」
■ロジャー・グリフィス(HPDテクニカル・グループ・リーダー)

「1日遅れとはなったが、レースを開催できてほっとしている。1日順延になったというのに、今日も本当に多くのファンがサーキットに来てくれた。日本のファンがインディカー・レースに対して強い情熱を持っていてくれることを強く感じた。レースはダニカ・パトリックの初優勝という結果になった。熱心なファンたちは、ダニカの初優勝という歴史的瞬間に立ち会うこととなったわけだ。ツインリンクもてぎというHondaにとってとても重要なコースでダニカの初優勝が記録されたことは、彼女だけでなく、ファンの記憶にもずっと残ることとなるだろう。この2戦で2人の新しいウイナーが誕生した。若いウイナーの登場はIndyCarシリーズの競争をより激しくしていくことだろう」