<US-RACING>
チャンプ・カー勢5チームとロス・レーシングによるオープンテストは、2日目を迎えた。昨日のテストでラバーが載ったためか、全てのドライバーがベスト・スピードを更新している。この日チャンプ・カー勢のトップに立ったのは、KVレーシングのオリオール・セルビア。昨日はチームメイトのウィル・パワーに遅れをとったが、今日はベテランの意地を見せている。ベスト・スピードも210マイル台に入り、着々とマシンが仕上がっているようだ。トップ10を狙うにはあと1マイルほどスピード・アップが必要になるため、今週末のプラクティスでどれだけスピードを上げられるかが注目だろう。チームメイトのウィル・パワーも3位に入り、KVレーシングはチャンプ・カー勢の中で、一番段取り良くテストを進めていると感じた。
チャンプ・カー勢の2位につけたのは、なんとコンクエスト・レーシングのエンリケ・ベルノルディ。132周を走り、210.084mphを記録した。KVレーシングに次いで高パフォーマンスを発揮するコンクエストだが、なかでもインディ初挑戦のベルノルディが高い適応能力を見せている。今回のテストを見る限り、6年ぶりのトップ・カテゴリー復帰も問題ないようで、本人も「ダラーラを走らすのが楽しいよ」と語った。F1では突然のチーム解散で実力を示す前に表舞台を去らなくてはならなかったベルノルディ。このインディカー・シリーズでどんな活躍を見せてくれるだろうか。
昨日チャンプ・カー勢のトップに立ったウィル・パワーは、209.779mphで3位につけた。初日から積極的に走行するパワーは、セッションが始まるとすぐコースへ飛び出し、セッション終了までに145周を走破。二日連続で誰よりも多い周回数をこなした。パワーはマシンを降りても、写真のようにドライバー・コーチを務めるアル・アンサーJr.にアドバイスを求めるなど、高い意識を持ってテストに臨んでいる。食事中もセルビアとステアリング・フィールについてジェスチャーを織り交ぜ話し合っている姿も見られ、レースのことが頭から離れない様子が印象的だった。
オーバルの洗礼を浴びたグラハム・レイホール。午後8時50分ごろ、ターン2の進入でスピンを喫し、そのまま外側のコンクリート・ウォールに激突した。写真ではダメージが少ないように見えるが、ハイスピードからのクラッシュでマシンの反対側は完全に大破。ガレージに戻ってきたマシン見て、レイホールは呆然と立ち尽くしていた。チャンプ・カー勢4位のスピードを記録するも、このクラッシュによって今日のテスト走行はたった35周に終わっている。KVレーシングやコンクエストに比べると、やや遅れている印象があるニューマン/ハース/ラニガン・レーシングだが、開幕までにスペアのマシンを用意できるかが心配だ。ちなみ、息子のクラッシュを聞いて、父親で3度のチャンプ・カー・チャンピオンであるボビー・レイホールも現場近くに駆けつけていた。
一方、グラハムのチームメイトであるジャスティン・ウイルソンは、順調に周回をこなし、99周を走りこんだ。スピードはグラハムに次いでチャンプ・カー勢5位。昨日から3マイル以上のスピード・アップを図れたことも好材料といえる。マシンのスピードは順調に上ってきているようだが、背の高いウイルソンは「もう少しコックピットを快適に出来ると良いんだけどな」と、ダラーラのコックピット・サイズを気にしていた。
ウイルソンに続いたのは、コンクエスト・レーシングのフランク・ペレラ。昨年のアトランティック・シリーズで2位を獲得したペレラは、2月2日から4日にかけてセブリングで行われた チャンプ・カーの合同テストで、トップ・タイムを記録し、周囲が驚くパフォーマンスを見せた。シリーズが合併してインディカーとなってからも、安定したペースを保ち、経験豊富なベテラン・ドライバーたちに喰らいついている。今日のテストでチャンプ・カー勢2位のスピードを記録したベルノルディといい、コンクエスト・レーシングは良いドライバー・ラインナップを揃えることが出来たようだ。
デイル・コイン・レーシングは新生インディカーでも、2台体制を維持することになった。ブルーノ・ジュンケイラは昨年から引き続きチームに残留。ドイツ・ツーリングカー選手権へ転向したキャサリン・レッグに代わって、マリオ・モラエスが新加入した。ブラジル人のモラエスは、1988年生まれの19歳。2004年にフォーミュラTRプロ・シリーズFR1600というマイナー・フォーミュラからキャリアをスタートさせ、昨年は佐藤琢磨をF1に輩出した名門、カーリン・モータースポーツからイギリスF3に参戦していた。今回は二日続けて最下位に終わってしまったが、同郷の大ベテランであるジュンケイラの手を借りることで、今後の成長を期待したい。
ジュンケイラは2日目にして、ようやくマシンを走らせることができた。デイル・コイン・レーシングの準備不足は否めず、ディナー・ブレイクの時間をつぶしてまで、マシンの動作確認を行う必要に迫られる。さすがのジュンケイラもイライラを募らせ、ガレージはぴりぴりとした雰囲気に包まれていた。マシンが走り出したのは、ディナー・ブレイク明けの午後7時15分。それから順調に周回をこなし、セッション終了までに82周を走行する。ベスト・スピードは208.641mphと伸びなかったが、現在のチーム状況ではマシンを走らせるということがやっとという感じがした。
インディカー組では唯一テストに参加しているロス・レーシング。参戦経験があるアドバンテージを活かし、初日に続いてチャンプ・カー勢を上回った。オーナー兼ドライバーのマーティ・ロスは、昨日から1.5マイル以上のスピード・アップに成功し、212.818nphを記録。2月27日と28日行われた合同テストのスピードと比較すると、トップ10圏内に入るスピードであり、今年はテール・エンダーから脱出が期待できそうだ。チームメイトで、2006年インディ・プロ・シリーズ・チャンピオンのジェイ・ハワードも、211.672mphの2位につけ、開幕への準備を整えている。
快晴となったマイアミ。この二日間のテストは天候に恵まれているが、天気のよさとは裏腹に、気温が思った以上に上らない。テストが始まってからの最高気温は21度で、昨日と同様、日が暮れだすと風が強くなり、少し肌寒さを感じた。突然の合併からこれまで、チャンプ・カー勢の参戦が間に合うかどうかとても心配だったものの、彼らの高いモチベーションによって、この2日間のテストは成功裏に終わっている。トップ・チームに比べるとまだまだ準備不足の部分があることは当然だが、3日後の開幕戦ですべてのマシンがそろう姿が待ち遠しい。