INDY CAR

インディ・カー・オープン・テスト ホームステッド【初日】 フォト&レポート

<US-RACING>

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2月22日に発表された突然の合併から1ヶ月。2008年のインディカー・シリーズの開幕を今週末に控え、ホームステッドではインディカー参戦を決めたチャンプ・カー勢5チームと、ロス・レーシングによるオープン・テストが行われた。わずか1ヶ月という限られた時間だったが、チャンプ・カーのチームはIRLのサポート・プログラムにより、既存のインディカー・チームから手を借りて、ダラーラ・シャシーを走る状態に仕上げている。もちろん、新しいダラーラのシャシーにてこずる場面がまだまだあり、ニューマン/ハース/ラニガン・レーシングのピットで見られたのは、ジャスティン・ウイルソンのクルーがサイドポットをはずして再装着する際に、上手くねじがはまらず、パーツをがんがん叩いて無理やりねじを締めようとする姿。最終的にテープで応急処置を施すに留まったところを見る限り、突然のマシンの変更は、チャンプ・カー勢の大きなハンデとなっていると感じた。それと同時に、短すぎる準備期間でもしっかりマシンを走らせた彼らのプロフェッショナルリズムには脱帽する。チャンプ・カーでお馴染みのマクドナルド・カラーも、ダラーラ・シャシーによくマッチしており、開幕戦で走る姿を見るのが今から待ちきれない。ただ、チャンプ・カー・ファンからすると、このマシンに乗るのがウイルソンということに、しばらく違和感が続くだろう。

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昨年からインディカーに参戦しているロス・レーシングを除き、チャンプ・カー勢でトップとなったのは、KVレーシングのウィル・パワー。マシンはおなじみのチーム・オーストラリア・カラーを纏っているが、今シーズンからパートナー先がウォーカー・レーシングからKVレーシングに変わり、ウィル・パワーもKVレーシングへ移籍している。今日は序盤から精力的に走りこんで、誰よりも多い120周を走破し、209.302mphのベスト・スピードを記録した。2月27日と28日に行われた合同テストで、ダン・ウエルドンによって記録された213.312mphのトップ・スピードに比べると、見劣りするかもしれないが、主だったトラブルもなく120周を周回したことは評価に値する。

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パワーと談笑するのは、今年からチームメイトとなるオリオール・セルビア。マシンを降りるとこうして話し合い、情報交換に余念がなかった。パワー自身、オーバルの経験は2006年のミルウォーキーしかないため、ベテランでオーバルの経験が豊富なセルビアからアドバイスを受けているようだった。当サイトの4コマ・マンガでは、例年開幕前のシートがないことで有名なセルビアも、今年はちゃんとKVレーシングのシートを確保している。開幕前にシートが決まっている安心感もあるのか、表情もにこやかだった。

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先週行われたセブリングのテストにマシンの準備が整わず、ホームステッドのテストに照準を合わせていたニューマン/ハース/ラニガン・レーシング。今回のテストも走行を開始したのが、セッション終了1時間10分前となる8時50分ごろと、ギリギリまで準備に追われていた。しかし、走り始めるとそこは名門チーム。グラハム・レイホールがパワーに次ぐ208.275mphのスピードをマークしてみせた。レイホールもオーバルの経験が少ないにも関わらず、わずか37周でチャンプ・カー勢2位のスピード記録する高い適応能力を発揮している。このままチームのポテンシャルが上ってくれば、マルコ・アンドレッティとの対決が面白くなりそうだ。

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昨年末にロケット・スポーツからチャンプ・カー参戦を決めていたエンリケ・ベルノルディは、ロケット・スポーツの撤退に伴い、スポンサーごとコンクエスト・レーシングへスライド。なんとか新生インディカーのシートを射止めた。ベルノルディは2001年にアロウズからF1デビューを果たすも、翌年のシーズン中盤にチームが資金難から解散する憂き目にあい、その後ワールド・シリーズ・バイ・ニッサンや地元のストックカー・レースに出場していた。およそ6年ぶりのトップ・カテゴリー復帰となるが、腕はまだまだ鈍っていないようで、オーバル初挑戦ながらもチャンプ・カー勢3位の208.121を記録している。

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ミナルディ・チームUSAの共同オーナー、ポール・ストッダートとのパートナーシップを解消したキース・ウィギンス率いるHVMレーシング。新生インディカーでは参戦台数を1台とし、ドライバーも昨年チャンプ・カーで2勝を挙げたロバート・ドーンボスからアーネスト・ヴィソへ代わった。ベネズエラ人のヴィソは2006年にGP2で2度の優勝を飾り、スパイカーMF1(現フォース・インディア)でF1のテスト・ドライブを経験した実績がある。だが、トップ・カテゴリーのフル参戦はこれが初めて。本人も今回のテストを楽しみにしていたようで、気合十分にピットを飛び出していったが、直後にスピンを喫し、左側のウォールにノーズをぶつけてしまった。幸いマシンに大きなダメージはなく、ノーズを交換しただけで再び走り出したが、チームのクルーは一瞬ヒヤリとしたはず。しかし、ヴィソはカメラを向けるとにっこり笑うなどとても愛嬌があり、きっとクルーも憎めないキャラクターかもしれない。

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オーナー兼ドライバーであるマーティ・ロスが50歳を迎える記念の年に、待望のインディカー・フル参戦を2台体制で実現したロス・レーシング。フル参戦は今シーズンからといえども、昨年4戦にスポット参戦した経験を活かし、ダラーラを走らせ始めたばかりのチャンプ・カー勢を上回って、初日のスピード・チャートでワン・ツーを記録した。積極的に走りこんでいた白いマシンのジェイ・ハワードは、210.597mphで2位。その後方からピット・アウトする黒いマシンのロスは、チーム・オーナーの実力を誇示するように、ただ一人211マイル台に入る211.037mph を記録した。2月27日と28日に行われた合同テストとは気象条件や路面状況も異なるため、単純にスピードを比較できない面もあるが、前回より1マイル以上のスピードをアップに成功し、着実にチームは進歩している。とはいえ、トップ・チームとの差はまだ2マイル以上もあり、上位を争うにはまだまだスピード・アップが必要のようだ。

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パドックで捉えたチャンプ・カー・ドライバーの団欒。ジャスティン・ウイルソン、グラハム・レイホール、今日は走行しなかったブルーノ・ジュンケイラが話し合っていた。ちなみに右端にいるひげ面の人物はネルソン・フィリップ。今シーズンの行き先は決まっていないものの、新生インディカーの参戦を狙っているのか、古巣HVMレーシングのピットで長い時間過ごしていた。

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今日のホームステッド・マイアミ・スピードウェイは、雲が多く、太陽が出ている時間が少なかった。 お昼ごろにぱらぱらと雨が降りだしたものの、すぐに止んでしまう。それ以降雨を心配する必要がなくなり、セッションは終了時刻まで予定通り進んだ。陽があまり射さなかったこともあり、気温はマイアミらしからぬ過ごしやすさで、最高気温も23度に留まる。夜になると風が強くなり、さすがに肌寒さを感じたので、今週末のレースではもう少し暖かくなることを願いたい。