<US-RACING>
オープン・テスト最終日の走行セッションを控えた午後2時15分、日本人メディアを対象にしたアンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)のオーナーであるマイケル・アンドレッティと、武藤英紀の記者会見が行われた。昨年の11月にAGRの仲間入りを果たした武藤英紀だが、公の場でアンドレッティと並び、記者会見を行うのはこれが初めて。会見ではアンドレッティ自身から武藤加入の真相や今シーズンの展望、チャンプ・カーとインディカーの合併、息子のマルコ・アンドレッティのことまでかなり興味深い話が聞かれた。20分に及ぶ記者会見は、終始和やかなムードはあったものの、内容の濃いものとなった。
Q:ではまず、マイケル・アンドレッティさんにお聞きしますが、武藤英紀選手と契約に至った経緯を教えてください
マイケル・アンドレッティ(以下MA):昨年のスプリング・トレーニングの時でしょうか、オーバルを走る彼の姿に惹かれるものがありまして、良いドライバーになるのではないかと思ってシーズン中も見てきました。しかしながら、そのときはパンサー・レーシングと契約していたため、我々と契約する機会など訪れないだろうと思っていたところ、昨年の最終戦シカゴランドで彼がフリーであると知りまして、このチャンスを逃すまいと交渉を始めたのです。
Q:これまでに何人もの日本人ドライバーがインディカーに挑戦してきたと思いますが、過去の日本人ドライバーと武藤選手との違いは何ですか?武藤選手のどこに惹かれたのでしょうか?
MA:スプリング・トレーニングの時点で、英紀はすでに上位を走っていました。そこでとても能力の高いドライバーだと感じたのです。チームとしては彼を日本人初のウイナーとすべく努力していきたいと考えています。とはいえ、彼にプレッシャーをかけるつもりはありません。今年はルーキー・イヤーですから経験を積む年だと思います。もちろん今年勝つに越したことはないですが、過大なプレッシャーは無用です。
Q:アメリカ人ドライバーと日本人ドライバーとの違いはどこだと思いますか?
MA:はっきりとした違いはないと思いますが、私が思いつく限りではやはり言葉の壁はあるかもしれませんね。その他の部分、たとえばマシンに対するフィードバックなどは、アメリカ人ドライバーと日本人ドライバーとの間に違いはないと考えています。
Q:IPSでの走りと実際にテストでインディカーに乗ったときでは、武藤選手に対する印象は変りましたか?
MA:とてもポジティブな印象を受けましたね。彼は速いですし、ドライビングもスマートですよ。
Q:あなたは様々な経験をお持ちですが、武藤選手にあなたが持っている知識や経験を伝授するつもりですか?
MA:もちろんです。私の経験だけではなく、他のドライバーやエンジニアなどチーム全体の経験を英紀に伝授していきたいと考えています。昨年のダニカ(パトリック)もチームが持つあらゆる知識や経験を吸収し、好成績を収めることが出来ましたので、彼にも同じように知識や経験を伝授していきますよ。
Q:では、武藤選手に質問ですが、新しいボスのアンドレッティさんの印象を教えてください。
武藤英紀:強いドライバーだったとは知っていますので、少しでも多くのことを学び取りたいなと思っています。常にアドバイスもしてくれますから、早くチームに貢献できるドライバーになりたいですね。
Q:AGRは何人ものチャンピオンを輩出してきましたが、武藤選手に優勝の可能性はあると思いますか?また、武藤選手のどういったところに惹かれたかを、改めて聞かせてください。
MA:昨年のIPSで、英紀はロード・コースとオーバル・コースの両方で競争力がある走りをしていました。これはシリーズを戦う上でとても重要です。私が彼から引き出したいのは、学習能力のスピードを上げることです。当然、彼に才能はあると信じていますので、いかに早く学習してもらい、それをどうやってスピードに結び付けていくかを教えるのが私の役目だと考えています。
Q:トニー・カナーン以外は経験の浅い3人のドライバーを起用するわけですが、ダリオ・フランキッティがいた昨年と比べて何か違いはありますか?
MA:確かにダリオが抜けることでチームに多少の違いが出てくると思いますが、マルコやダニカもどんどん経験を積んで成長してきています。彼らも週末にマシンを作り上げていくためのフィードバックや、英紀へのアドバイスもこなしてくれるのではないかと考えています。
Q:チャンプ・カーと合併することで、昨年とは様々な違いが出てくると思いますが、武藤選手には何か影響があると考えていますか?
MA:チャンプ・カーのチームが来ることで競争は激しくなると思います。特にロードコースではそれが顕著に現れてくるでしょう。ただ彼らがオーバルのレースに慣れるのには時間がかかると思いますので、その間に英紀がさらにオーバルへの理解を深めてくれると良いのではないかと思います。
Q:以前CARTシリーズで、あなたとポール・トレイシーが激しいバトルをしていた場面をよく思い出すのですが、シリーズが統一されてポール・トレイシーがインディカーで走ることをどう思いますか?
MA:ポールは良くも悪くもキャラクターの強いドライバーですから、彼が戻ってくることにはとても歓迎しています。
Q:トレイシーと一緒に走りたいと思いませんか?
MA:私はもう引退していますしね(笑)私自身はドライバーとして自分がやるべき全てをやり遂げたと思っています。息子のマルコと一緒にインディ500を走るというのも達成できましたので、ドライバーとしてはもう十分だと考えています。今、僕が集中すべきことは英紀を優勝に導くことですよ(笑)
Q:ご自身の息子であるマルコと、かつてのライバル、ボビー・レイホールの息子のグラハムとが、常にライバルとして考えられていることはどう思いますか?
MA:マルコとグラハムがライバルというのを健全な形でメディアに取り上げてもらえるのは、このスポーツにとってとても有益だと思っています。昔の私とアル・アンサーJr.のようにですね。
Q:今年のルーキー・オブ・ザ・イヤーは誰になると思いますか?
MA:ここにいますよ(笑)英紀はインディ500とチャンピオンシップの両方で、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得してくれるでしょう。