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インディ・カー・オープン・テスト ホームステッド【初日】 フォト&レポート

<US-RACING>

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2月25日、アメリカ東部時間午後12時30分。IRLのオープンテストが行われているマイアミのホームステッド・スピードウエイで、チャンプ・カー・ワールド・シリーズとインディ・レーシング・リーグの合併記者会見が行われた。記者会見場に入りきらないほど大勢のメディアや関係者が集まり、ESPNなどのスポーツ・チャンネルはその様子をナマで放映。最初に両シリーズの主なドライバーが入場し、その後にチャンプ・カーの共同オーナーであるケビン・カルコーベンと、IRLの代表であるトニー・ジョージが登場してがっちりと握手を交わした。

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1996年にIRLがスタートして以来、分裂していたアメリカン・オープン・ホイール・レーシングが、12年の時を経てやっとひとつのシリーズにまとまった。しかし、会見でIRLのCEOであるトニー・ジョージは、「30年に及ぶ分裂に終止符が打たれた」と開口一番にコメント。彼やインディアナポリス・モーター・スピードウエイにとっては、1979年にCARTがスタートしたことが、事の発端だった。偶然とはいえ、解決までにちょうど30年を費やしたことになる。
合併に関する主な内容は以下の通りである。
・チャンプ・カーのチームはホンダから1年間のエンジン・リースを受け、共同管理された新品または中古のダラーラ・シャシー2台を、2シーズンにわたって使用することができる。
・チャンプ・カーのチームはインディカー参戦によって、一台あたり120万ドル(1ドル105円で1億2600万円)の参加賞金が保証されるインディカーTEAMプログラムを受けることができる。
・チャンプ・カー・ワールド・シリーズのスケジュールの中で、少なくとも2レースをインディカーのスケジュールに組み込む。現在のところエドモントンとオーストラリアを追加するために交渉中。
・開催日程が重複するツインリンクもてぎとロング・ビーチ・グランプリはそれぞれ別のレースを開催する。チャンプ・カーはロング・ビーチで“フィナーレ”のレースを行い、もてぎに参加しなくとも、インディカー・シリーズと同じポイントと賞金を獲得することができる。2009年からロング・ビーチ・グランプリをインディカー・シリーズのスケジュールに追加することになるだろう。
・インディカー・シリーズのオフィシャルは、今週の月曜日にインディアナポリス・モーター・スピードウエイで、チャンプ・カー・ワールド・シリーズのチームに対するオリエンテーションを行った。このオリエンテーションには2007年のチャンプ・カーに参戦した9チームが参加した。
・インディカーのオフィシャルはチャンプ・カー・チームに対するアシスタント・プログラムを作成し、チャンプ・カー・チームの参戦を手助けするインディカーのチームを割り当てた。(例:レイホール・レターマン・レーシングはニューマン/ハース/ラニガンをサポート)
・インディカー・シリーズのオフィシャルはチャンプ・カー・ワールド・シリーズのチームと個別のミーティングを行う。
・インディカー・シリーズのオフィシャルは2008年のスケジュールが追加になった場合のテレビ放映について、ESPN及びABCと交渉を始めた。
・この合意によってインディカー・シリーズは、チャンプ・カーの持つあらゆる資産、知的財産および歴史的な記録を引き継ぐ。加えてインディカー・シリーズはチャンプ・カーのメディカル・トランスポートも引き継ぐこととする。
チャンプ・カー・ワールド・シリーズ・オーナー
ケビンカルコーベン
「実はトニーと私はこの4年の間に時々話し合っていました。合意に達するまでには長く困難な道でしたが、ようやくここまでこぎつけることが出来たのです。今日の勝者は、ファンや、ドライバー、チームのみなさんと言えるでしょう。私たちは数年のうちにこのスポーツを成長させる必要がありますが、もちろんその可能性があると考えています。私は自分自身になんども言い聞かせているのは、合併こそが私たちが前進するための特効薬ではないということです。ですから私たちはこれから非常に多くの厳しい仕事をこなしていくことになるでしょう。この点に関しては、私のパートナーであるジェラルド・フォーサイスの協力があってこそなので、彼にも感謝しなくてはいけません。私の友人であるディック・アイズウィックは粘り強く働いてくれましたし、アル・スパイヤーも合併の手助けとなる途方もない仕事をこなしてくれました。まだまだ多くの仕事が残されていますが、この合併に関係した全ての人にとって、とても刺激的で長期的な可能性があると考えています。とてもエキサイティングな2008年以降のシリーズを楽しみにしていてください。ありがとうございました」
インディ・レーシング・リーグCEO
トニー・ジョージ:
「今日はとてもエキサイティングな日になりました。30年に及ぶ分裂に終止符が打たれたんですからね。私たちは2008年シーズンから北米におけるオープンホイール・レーシングを統一することが出来ました。これはケビンとジェリーの協力なくしてはなしえなかったことなんです。私にとってはとりわけドライバーやスポンサー、なによりもっとも重要なファン、北米のオープン・ホイールを支えるサプライヤーにとって何が最善のことなのかを強く思いました。彼らもまた合併に関して快く助けてくれました。たとえ統一の時期が遅すぎたとしても、私たちはほんとうに十分納得できる点に至ったと思います。やらなくてはならない多くの挑戦がありますが、これを成功によって乗り越えて行きたいと思っています」

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インディカーのパドックにチャンプ・カーのオーナーやドライバーが集まり、その光景はほんとうに合併したことを実感させた。こちらはデリック・ウォーカーと、彼のチームに所属するウィル・パワー、シモン・パジノウ。このほかフランク・ペレラ、ブルーノ・ジュンケイラ、グラハム・レイホール、アレックス・タグリアーニ、オリオール・セルビア、ネルソン・フィリップ、ロバート・ドーンボスといったドライバーが会見場に訪れた。残念ながらチャンプ・カーのチームが今回のテストに参加する準備は整わなかったが、3月中にチャンプ・カーのチームに対して特別なテスト・セッションが用意されることになっている。

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合併に関するプレス・カンファレンスから3時間の空き時間を経て、午後4時から合同テストが始まった。雨上がりのマイアミは一日を通して曇り空となり、プラクティスが始まった午後4時の時点でジャケットが必要なほど。今回は開幕戦のナイト・セッションを想定するもので、午後10時まで走行時間が設けられたのだが、時間がたつほどに気温は下がり、セッションが終わる頃には13度まで冷え込んでいた。

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各チームそれぞれにプログラムをこなすなか、トラフィックでのバランスを確かめるために、何台かのマシンがいっぺんに走行する場面もみられ、初日から実戦さながらのセッションとなった。その中でトップに立ったのはやっぱりこの人、ダン・ウエルドン。このホームステッドは3連覇している得意中の得意コースだけあって、213.312のスピードで見事に定位置を確保した。前人未到の開幕戦4連覇に向け、早くも好感触を得たようだ。そのウエルドンに肉薄したのは、チームメイトである2003年のシリーズ・チャンピオンのスコット・ディクソン。一時はウエルドンを上回る好走を披露するものの、ウエルドンの逆転を許し、0.0041秒差でトップを逃した。チップ・ガナッシの二人ががっちりフロント・ローを抑え初日のセッションは終了した。

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インディカーとチャンプ・カー合併の話題もさることながら、このホームステッドでは各チームの参戦体制が続々と明らかとなり、初日から話題の尽きない一日となった。パンサー・レーシングは昨年からサポートを受けるデルファイと、アーミー・ナショナル・ガード(陸軍国家警備隊)がスポンサーに加わることを発表した。カラーリングは昨年の黄・赤・黒からメタリック・ブルーをメインとしたものに様変わり。ドライバーはヴィットール・メイラの残留が正式に発表され、新体制での名門復活を誓った。ヴィジョン・レーシングはエド・カーペンターとA.J.フォイト四世が残留し、ドレイヤー&レインボールド・レーシングはミルカ・デュノの起用を発表。サラ・フィッシャーが自らのチームの立ち上げを表明したほか、アンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)のマルコ・アンドレッティには、今年からスーパーマーケット大手のメイジャーがメイン・スポンサーに就くことが発表された。

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AGRの武藤英紀も初日からテストに参加。今日はタイムを狙いにいく走りではなく、ピット・ストップとインラップとアウトラップの走り込みを主な課題として走行した。それでも211.743のスピードを記録して8位。本人も初日から好感触を得て、トップ6は硬いと自信を見せている。「ピット・ストップは最初に停まれないこともありましたが、今は上手く止められるようになりました。作業タイムもよくなっていますから徐々に課題をクリアしていると思います。グリップ・ダウンを大きく感じるマシンでしたけど、最後は上手くまとまってそこそこのタイムが出たので、今日のマシンとしては良い方向へ向っています。ただチームメイト同士でも違いますので、それぞれの良いところを取って明日もやっていきます」と話す武藤。明日も引き続き彼の好走を期待したい。