<US-RACING>
いよいよ開幕まで2ヶ月を切った2008年のインディカー・シリーズ。今シーズンの行方を最初に占うことになるであろう2月26日からの合同テストを前に、アンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)とレイホール・レターマン・レーシング(RLR)が、フェニックス・インターナショナル・スピードウェイでプライベート・テストを行った。AGRからはIRLシリーズの紅一点ダニカ・パトリックと、昨年の11月にAGRに加入した武藤英紀、RLRはライアン・ハンター-レイが参加した。今日のフェニックスは終日快晴。朝のうち10度と低かった気温も25度まであがり、まさにテスト日和になった。カラッとした暑さを予想していたが、今日は少しばかり蒸し暑い。というのも、砂漠気候のフェニックスなかでもこの時期は雨が降ることもあり、一年中乾燥したイメージのある山肌も新緑の草木に覆われていた。
昨年、第12戦からの途中参戦ながら2007年のルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いたライアン・ハンター-レイ。今日は様々なセット・アップを試しながら精力的に走りこみ、21秒05をマークしている。走行ラインも安定しており、見た目にも速い印象を受けた。いまだチームから今シーズンのレギュラー・ドライバーの発表はないが、ポテンシャルの高さから言っても、RLRの最有力候補と言える。昨年後半上位陣をかき乱したこのエタノール・カラーのマシンが、今シーズンも暴れてくれることは間違いなさそうだ。
ダニカ・パトリックは武藤英紀とともにテストに参加。今日は両親や旦那さんも応援に来ており、パトリックのテストを見守った。午後から積極的な走り込みを行ったパトリックは、この日トップとなる20秒58をマークしてオーバル・コースでの速さを改めて示し、女性ドライバー初のインディカー優勝を期待させてくれた。チームメイトの武藤をコンマ2秒ほど上回ったこともあり、パトリックは終始ご機嫌。テストの最初と最後に武藤と挨拶を交わす場面も見られ、武藤との相性も悪くないようだ。
今シーズンから導入されることになったパドルシフト。今のところ非常に簡素で、後付感が残るつくりになっている。ドライバーの負担を減らす目的のほか、安全性やトランス・ミッションのライフ向上にも貢献するということで、武藤も「ドライブするのが楽ですごくいいですね」と好感触を示していた。しかし、午後になって武藤のマシンが、電気系のトラブルからパドルシフトがスタックするというトラブルが発生。まだまだ開幕でまでに改善の余地があることをうかがわせる結果になった。
チーム加入から4ヶ月が経ち、今回が3回目のテストとなる武藤英紀。チームとのコミュニケーションもすっかり板に付き、今日は計136周を精力的に走りこみ20秒8をマークした。テクニカルなフェニックスのコースは路面も悪く、ロジャー安川や松浦孝亮といった日本人ドライバーがクラッシュしただけでなく、あのF1とチャンプ・カーのダブル・タイトルを獲得しているナイジェル・マンセルもウォールの餌食となり、病院送りになっているほど難易度の高いコースと知られている。ショート・オーバルはIPSで経験したミルウォーキー以来、もちろんフェニックス初走行の武藤は、慎重を期すためにダウンフォースを多めに付けて走行をはじめ、徐々にペースアップ。午後からはコースを攻略して全開で走れるまでになり、ポテンシャルの高さを示した。午後に発生した電気系のトラブル以外には目立った問題も無く、3種類の異なるタイプのフロント・ウイングを試すなど、予定されていたプログラムをほぼ消化して初日を終えることになった。テスト終了直後にも熱心にエンジニアとミーティングを重ねる武藤の姿が見られ、実りの多い一日となったようだ。
「初めて走るコースだったので、ダウンフォースを多めに付けていました。今もまだダニカに比べると多めで走っています。本格的なセット・アップやパーツを試したのは午後からで、フロント・ウイングだけで3種類試しました。チームからはあまり性能差がなく、ドライバーの好みということでしたが、一番フィーリングが良かったのは三つ目に試したものですね。まずユーズド・タイヤで良いタイムがでて、ニュー・タイヤで最後にベスト・タイムを出せました。午前中に比べるとコンマ1.5秒くらい速くなりました。タイヤは3セットすべて使いましたが、3セット目は6周か7周程度しか走っていないです。午後からは電気系のトラブルでパドル・シフトがスタックしてしまい、普通のエンジンではうまくギアを変えられるけど、電気で動いているのでクラッチを踏んでも何も出来なかったです。でも、パドル・シフトは楽ですごく良いですよ。オーバルということもあってそれほど違いはわかんないですけどね。コースは全開で走れました。最後のニュータイヤで4速のリミッターに長くあたっていたので、5速にシフトアップすれば良かったかなとも思います。ショートコースはミルウォーキーの経験がありますが、そのときはIPSだったのでなんとも言えないんですけど、このコースのほうがテクニカルで1-2コーナーを合わせると3-4コーナーが合わなかったり、逆に3-4コーナーが合うと1-2コーナーが合わなかったりで、よく考えられているコースだなと思いました。トラブルが出たので予定通りとは行きませんでしたが、ほぼ予定されたプログラムはこなせています。明日はウイングのテストと足回りを少し変えて走ります」