INDY CAR

新しいセットアップで挑み5位フィニッシュ

<SUPER AGURI PANTHER RACING>
<2007 IPSインディ・プロ・シリーズ 第12戦 ミド-オハイオ100>
【日 程】7月20日〜7月22日
【開催地】オハイオ州レキシントン
【コース】ミド-オハイオ・スポーツカー・コース
【距 離】2.258マイル(3.633km)×40周=90.32マイル(145.325km)

■■■7月21日予選■■■
天候:晴れ/気温:15℃/時間:8時25分〜(日本時間21日21時25分〜)
■■■7月22日決勝■■■
天候:晴れ/気温:24℃/時間:10時45分〜(日本時間22日23時45分〜)
<伝統の難コースでIPS初開催>
 ワトキンスグレン、ナッシュビルと続く真夏の3週連続開催は、その戦いの舞台を再びロードコース戦へと移していく。第12戦が行われるミド-オハイオ・スポーツカー・コースはIPSインディ・プロ・シリーズ初開催となる。1962年にオープンした全米を代表するロードコースは、かつて毎年インディカー・レースが行われていた伝統あるコース。13のコーナーを持ち、起伏が激しく攻略が非常に難しいコースでもある。金曜日に開幕したミド-オハイオ戦は初日からすばらしい天候に恵まれた。気温も20℃以下と非常に清々しく、レース観戦には絶好の気候となっていた。
<新たなセッティングにトライ>
 武藤英紀とスーパーアグリ・パンサー・レーシングは、6月にこのコースでテスト走行を行っていため、そこで得られた走行データを基にクルマのセットアップを行えるアドバンテージがあるはずだった。しかし、チームはさらなるスピードを求めて、今まで一度も試したことのない方向でクルマを作り上げていくことにトライした。武藤自身にとっても初めての経験だったため最初は戸惑いを隠せず、金曜日に行われた各30分ずつ2回のプラクティス走行はそれぞれ13番手と10番手。全体的にオーバーステア傾向になり、クルマのバランスもまだ修正する点が多く残っていた。それでも、武藤もチームもセットアップの方向性には自信を持っており、苦しみながらも一歩ずつ着実に前進していることは実感できていた。
<予選は苦しみ9番手に>
 走行2日目の土曜日は、朝8時25分から25分間の予選が行われた。前日の2回目のプラクティス後にさらにクルマの調整を繰り返した55号車は、予選で大幅なタイムアップを目指したがオーバーステアは未だ解消されず、結局トップからおよそ1.5秒遅れの1分15秒2772で10番手に終わった。予選後、タイム上位の1台がセッション終了間際にクラッシュしマシンを乗り換えたため予選順位はひとつ繰り上がり9番手グリッドとなった。路面のきれいなアウト側スタートとなり武藤にとっては朗報だったが、クルマの仕上がりは明らかに遅れており、予選終了時点では決勝で優勝争いができる状況ではなかった。
 しかし、予選後に行われた3回目のプラクティス走行で状況が一変する。朝の予選タイムを2秒近くも更新する1分13秒4119までタイムアップし総合4番手につけたのだ。今までトライしてきたセットアップのピースがようやくひとつにまとまり、直接スピードに結びつくようになったのだ。まだ全体的にオーバーステア傾向はあるものの、決勝でも十分戦えるパッケージングに仕上がった。チームの自信が確信に変わった。
<望みの黄旗は1度しか出ず>
 迎えた決勝日も朝から青空が広がる。レースは午前10時45分からローリングスタート形式で始まった。武藤はこの日早朝のウォームアップ走行で2番手タイムをたたき出し良い形で決勝に臨むことができていた。難コースに加えシリーズ初開催であることからレースは黄旗が乱れ飛ぶ荒れた展開になると予想され、スーパーアグリ・パンサー・レーシング陣営もそれを見越してクルマのセットアップをダウンフォースを少なめに設定。ストレートスピードを上げることで、リスタートで前車をパッシングする作戦を立てたのだ。しかし、レースは予想に反して黄旗がわずか1度しか出ないものになってしまった。
 武藤はスタートでポジションをひとつ上げ8番手となると、11周目にさらにひとつ順位を上げる快調な出足。しかし、13周目の1コーナーでコースオフしてしまい再び8番手にポジションダウンしてしまう。だが、ペースは明らかに武藤の方が速く、すぐさま18周目に抜き返すと、さらに上位を狙いペースアップをかける。21周目には他車のスピンにより、レースは待望のフルコースコーションとなった。2周後のリスタートで、トップを快走していたアレックス・ロイドがトラブルで脱落すると、ここから武藤はレース前に思い描いていたようなパッシングを見せ一気に5番手にポジションアップ。さらに反撃に出たいところだったが、待ち望んでいた黄旗はこの後一度も出ず。クルマはダウンフォースが小さいセッティングのためコーナーの脱出スピードが上げられず、流れの中でパッシングを試みるのは非常に難しい状況だった。最終ラップに自己ベストをたたき出すなど終盤必死に追い上げたが、結局5位のままフィニッシュ。ポイントリーダーのロイドが22位に終わったことからポイントを21点も縮めることに成功した。

■■■コメント■■■
<武藤英紀>
「トップとのポイントを縮めることができて良かった」
「レースは黄旗が3回は出るだろうと予想して、クルマをかなり極端にダウンフォースを減らした仕様にしてレースに臨みました。作戦としてはスタートとリスタートのときにストレートで抜くというものだったのですが、残念ながら僕らに展開が向かなかった。レース中に前車を抜くということはクルマのセットアップ上ちょっと難しかったです。序盤はタイミング良く遅いクルマに引っ掛かってくれたのでうまく抜けましたけど、その後は前のクルマの後ろにつくこともできなかった。単独では速く走れて、ちょっと前が開いた最終ラップに自己ベストタイムが出ましたが、全体的には厳しいレースとなってしまいました。ただ、予選のときよりはクルマはだいぶ良くなりましたし、9番手スタートという予選順位を考えると、5位という結果には悔しい気持ちはありません。ただ、昨日の予選は本当に悔しかったですけど……。それに、ポイントリーダーのロイドが脱落してくれたのでポイントを縮めることもできたのは良かったです。今回はロードコース用の新しいセットアップをトライした結果ですが、もうテストはありませんから、いつかは通らないといけない道でした。今回良いセットアップを見つけられたことで、次のロードコース戦のソノマに向けては何の心配もないと思います」

<ブレア・チューバッカー:クルーチーフ>
「与えられた状況の中で最善のレースをしてくれた」
「後方スタートになってしまったため、我々は他チームとは異なった戦略で臨まざるを得なかった。レースはフルコースコーションが多く出されると踏んで、リスタートでパッシングのできるセットアップにした。ヒデキはスタートでポジションアップをして作戦どおり幸先の良いスタートだと思ったが、その後イエローが1度しか出ず、ヒデキにとっては非常に厳しい展開となってしまった。ヒデキは与えられた状況の中で最善のレースをしてくれた。もし予選でトップ3に入れていたら間違いなく優勝争いができたはずだ。予選でセットアップがなかなか決まらないミステイクをしてしまったことがすべてだ。ただ、ロイドがメカニカルトラブルで脱落したことによって21ポイントも縮められたことは幸運だった。結果は残念だったが、今後に繋がるレースウイークだった」

■■■予選結果■■■
2.258マイル(3.633km)                 出走23台
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順位 No.  ドライバー     タイム    平均速度mph(km/h)
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1位  7  A.ロイド      1’13.7719   110.118(177.180)
2位 24  S.シンプソン    1’14.0056   109.840(176.733)
3位  5  A.プレンディビル  1’14.4874   109.130(175.590)
4位 51  R.アンティヌッチ  1’14.6369   108.911(175.238)
5位  1  B.ウィルソン    1’14.7657   108.724(174.937)
9位 55  武藤英紀      1’15.2772   107.985(173.748)
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■■■決勝結果■■■
2.258マイル(3.633km)×40周=90.32マイル(145.325km) 出走23台
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順位 No.  ドライバー    周回数    タイム差
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1位 51  R.アンティヌッチ  40    51’40.7399
2位 27  W.カニンガム    40      +0.9588
3位 24  S.シンプソン    40      +9.1590
4位  5  A.プレンディビル  40     +10.5676
5位 55  武藤英紀      40     +11.4918
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※シャシーは全車ダラーラ、タイヤは全車ファイアストン

■■■ポイントスタンディング■■■
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順位 No.  ドライバー    ポイント  ビハインド
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1位  7  A.ロイド      508     リーダー
2位 55  武藤英紀      397       -111
3位 27  W.カニンガム    342       -166
4位  1  B.ウィルソン    320       -188
5位 11  J.カマラ      290       -218
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