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インディ・カー・シリーズ 第10戦 ワトキンス・グレン[決勝日]フォト&レポート

<US-RACING>

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IRLのスケジュールに初めてロード・コースが加わった2005年から開催され、今年で3年目を迎えるワトキンス・グレンは、スコット・ディクソンの3連覇で幕を閉じた。2番手からスタートしたディクソンは、序盤、ポール・ポジションのエリオ・カストロネベスと1秒以内の緊迫したバトルを繰り広げる。ところが、19周目にトップのカストロネベスが最終コーナーで自滅してクラッシュ。労せずしてディクソンはトップに立った。途中ピット・タイミングの違いからリーダーを明け渡すこともあったが、43周目に再びトップに返り咲くと、2番手のホーニッシュJr.を引き離してそのまま今シーズン初勝利のチェッカーを受けた。同一コースを3連覇したのは、今シーズンの開幕戦ホームステッドでダン・ウエルドンが達成して以来、IRL史上二人目の快挙となる。「ワトキンス・グレンで僕たちはついているようだね。今日はチームもピットですばらしい仕事をし、優勝に貢献してくれた。多くのポイントを獲れたことも良かった。チャンピオンシップではダリオとの差が縮まったからね。ここから追い上げていくよ」と喜ぶディクソン。両手を空に向かって突き上げた。相性の良いコースでようやく今シーズン初勝利を掴み、ポイント・ランキングでも2位に躍進。ここからディクソンの逆襲がはじまる。

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ポール・ポジションのエリオ・カストロネベスが、レース序盤にリタイアしてしまったペンスキーは、ホーニッシュJr.が健闘した。これまで経験が浅いロード・コースでは苦戦を強いられていたホーニッシュJrだが、走るたびに速さを身につけ、今日のワトキンス・グレンではロード・コースのベスト・リザルトとなる2位を獲得。テキサスで優勝して以来3戦ぶりにトップ3入りを果たした。しかし、レース後はカナーンと口論になり、それがチームメンバーを巻き込んだ乱闘にまで発展したことで、少々後味の悪いレースになってしまった。「トニーの事に関しては、ターン6の進入で僕が抜いていたのに、彼がラインをふさいできた。それで行き場がなくなって接触したんだ。見てのとおり何回か接触しているよ。チームのみんなにはほんとうに感謝している。ロード・コースでトップ5フィニッシュができる実力がありながら、それが実現で出来ていなかったからね」と話すホーニッシュJr.。次戦はいまだ勝利がないオーバル・コースのナッシュビルに舞台を移し、4戦ぶりの優勝を狙う。

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序盤から思うようにペースが上がらず、じわじわとトップ2に引き離されていたフランキッティ。カストロネベスの戦線離脱で2番手に上がるも、ピット作業に手間取ってしまい、ホーニッシュJr.の逆転を許す。ここ2戦のショート・オーバルは圧倒的な速さを見せていたが、今日は優勝争いをするだけの速さを持ち合わせておらず、スタート・ポジションと同じ3位でレースを終えた。「今日は2位が目標だったけど、ピット・ストップで少しタイム・ロスしてしまったよ。2位と3位では大違いだね。でも、この結果に不満はないよ。今日はほんとうにタフなレースだった。今までにないくらいタフだったね。今週はずっとディクソンと戦ってきたけど、チャンピオンシップでも彼は強力なライバルだよ」とレースを振り返るフランキッティ。ポイント・ランキング首位を守ったものの、今日はディクソンに47ポイント差まで詰められてしまった。インディ500から波に乗っているフランキッティだが、タイトル争いにはもう一波乱ありそうだ。

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今日も朝から快晴のワトキンスグレン。午後から薄い雲が上空を覆うものの、その隙間からは日差しが見えていた。気温もこの3日間で一番暑くなり、お昼の時点で30度まで上昇する。毎年、天候に翻弄されるワトキンス・グレンだが、今年のレースは晴天に恵まれることになった。ところが、レース終盤から厚い雲が目立ち始め、終了から約1時間後に、レースが終わるのを待っていたかのように雷雨に見舞われ、ワトキンス・グレンらしい変わりやすい天気を改めて感じさせられた。

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スタートはポール・ポジションのカストロネベスが抜群のダッシュを決め、2番手のディクソンを押さえ込んだ。二人はこのあと19周に渡って1秒以内の接近戦を続けるが、19周目の最終ターンで、ディクソンのプレッシャーに耐えかねたカストロネベスのマシンが一瞬スライド。体勢を立て直そうとカウンター・ステアを当てるも、大きなおつりをもらって外側のウォールに激突する。カストロネベスのマシンは火を噴きながらスピンした後、コースのちょうど真ん中に止まった。このワトキンス・グレンで3年連続ポール・ポジションを獲得しながら優勝までたどり着けないカストロネベス。これが今日のレースのハイライトになった。

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4番手のカナーンはスタート直後に、3番手のフランキッティに並びかけるが、抜くには至らず、このポジションをキープする。1回目のピット・ストップを終えるとホーニッシュJr.とつばぜり合いになり、時にはホイールとホイールが接触するリスキーな場面も見られ、これが後にとんでもない事態を起こすことになった。結局4位でフィニッシュしたカナーンが、レース後ピットロードにマシンを止めると、マシンを飛び出してきたホーニッシュJr.がヘルメットを被ったままカナーンに激しく抗議。この場を収めようとホーニッシュJr.の父親(ホーニッシュSr.)が二人を引き離すが、今度はエキサイトしたカナーンがホーニッシュJr.の元へ。二人の間に割って入り、言い争いを止めようとするホーニッシュSr.だが、これがマズかった。ホーニッシュSr.は勢いあまってカナーンを突き飛ばすような格好になったため、両チームがヒートアップ。二人のドライバーそっちのけで、チーム・メンバーが入り乱れてつかみ合いのけんかを始め、さながら野球の乱闘シーンのようになった。最後はセキュリティとオフィシャルが両チームを制止したものの、レース展開が単調だっただけに、この日一番盛り上がる場面となってしまった。

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今シーズン2回目のトップ10フィニッシュを決めた松浦孝亮。11番手からのスタートで幸先よく1台かわすと、ダン・ウエルドンやバディ・ライスとポジション争いを演じる。燃料をセーブして粘り強く走り続けた松浦は、8位まで順位を上げてフィニッシュ。得意のロード・コースで今シーズン・ベストの結果を出した。「ようやくちゃんとしたレースが出来た気がしますね。シーズンの最初に比べると今日は楽しいレースでした。昨日はプラクティスでクラッシュしてしまって、リアにダメージを受けたんですが、クルーが予選までに修復して11位でスタートできました。今日はプッシュしてなんとしても良い結果が欲しかったです。2回目のトップ10フィニッシュで、次はトップ5に入りたいですね。クルーやチームのみんなには感謝しています」と語る松浦。次戦のナッシュビルを挟んで、第12戦のミド・オハイオもロード・コースになるため、松浦の好走が期待される。

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今週、インディカーと併催しているインディ・プロ・シリーズは昨日に続いて第2レースが行われ、パンサー・レーシングの武藤英紀は5番手からスタートした。迎えた決勝は、開始直後のターン1で2番手のボビー・ウイルソンがスピンを喫し、後続が混乱。行き場を失った武藤はアクセルを緩めざるを得ず、ここで一気に8番手まで後退してしまう。2周目に1台かわし、29周目にもう一台抜き去って6番手まで挽回するものの、その後はタイヤが磨耗してなかなか前車を捉えることができず、そのまま6位でフィニッシュした。「スタートで前のマシンが思ったほど加速しなくて、その間にカニングハムがアウトから抜いていったという感じです。ターン1が窮屈になって、行き場所がなくなりました。前でスピンしているマシンがいたので、アクセルを戻したら後ろのマシンに抜かれたんです。ストレート・スピードはそれほど悪くないんですけどね。みんな同じダウンフォースで、同じギア比のはずだから、抜きようがなかったです。単独での走りは良かったので、スタートの出遅れが痛かったですね。昨日はバス・ストップ・シケインの縁石でマシンが跳ねてしまっていたんですが、少し変更したら跳ねなくなりました。マシンのポテンシャルがあったのに、今日はそれを活かすことが出来ませんでした」と悔しがる武藤。昨日は見事なオーバーテイクを披露していただけに、悔しい結果となった。