INDY CAR

アイオワでの初開催イベントを制したのはダリオ・フランキッティ。マルコ・アンドレッティが0.0681秒差の2位に

<Honda>

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2007年6月24日(日)・決勝
会場:アイオワ・スピードウェイ
天候:曇り
気温:21.7℃

IRL IndyCarシリーズは第8戦を行うために昨年オープンしたばかりのオーバルコース、アイオワ・スピードウェイへとやって来た。アイオワ州の州都であるデ・モインの東30マイルほどに作られたコースは、全長が8分の7マイル=0.894マイルと短いが、最大14度とまずまずのバンク傾斜角を持つことから、2〜3台が並んで走ることも可能。コーナリング時にはコンスタントに5Gがかかり、1周平均時速は180マイルにも達する。小さいながらも非常にエキサイティングなバトルが期待できるオーバルである。

同スピードウェイにとって最初のビッグイベントとなる今回のIndyCarレースは、アイオワ・コーン・インディ250と名づけられた。アイオワ州はとうもろこしの産地で、とうもろこしは今、エタノールの原料としてアメリカで大きな注目を集めている。使用燃料が100%エタノールへと代わって最初のシーズンのIndyCarシリーズにとっても、アイオワ・スピードウェイの完成はまさに絶妙のタイミングで、今回のレース開催へとスムーズに漕ぎつけることとなった。
最高峰オープンホイール・シリーズの初開催レースを見ようと、土曜日から多くのファンがスピードウェイに詰めかけた。彼らが見守る中、予選で17秒6486(平均時速182.360マイル)の最速タイムを叩き出したのはスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)で、彼がアイオワ・スピードウェイ初のポールシッターとなった。

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日曜日には満員のグランドスタンドを前にスタートが切られた。そのスタート直後、ターン2でダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)がスピンし、トーマス・シェクター(ビジョン・レーシング)を巻き込むクラッシュとなった。
86周目にはトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)も同じくターン2でスピン。エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)はピットストップ直後にコントロールを失い、周回遅れに陥った。ディクソンはステアリングトラブルのためにピットで長い時間を過ごし、ヴィットール・メイラ(デルファイ・パンサー・レーシング)はレース中盤にトップを71周にわたって快走したが、左フロントサスペンションが壊れてリタイア。こうしてベテランドライバーたちがミスを犯し、トップチームのマシンにトラブルが発生したことが、アイオワ・スピードウェイでのバトルの激しさ、厳しさを物語っていた。
レースが残り100周を切るころ、トップはダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)のものとなり、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が2位へ浮上して激しいアタックを開始していた。しかし、フランキッティはイン側のラインをキープし続けてオーバーテイクを許さず、そのままシーズン2勝目を飾った。最後のピットストップでフランキッティはタイヤ交換を行わず、フレッシュタイヤを装着したアンドレッティが優位に立つかとも思われたが、フランキッティはほんの小さなミスも犯すことなく、0.0681秒の僅差でアイオワ・スピードウェイ初のインディカー・レース・ウイナーとなった。
松浦孝亮(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は予選16番手からレースに出走。オーバーテイクの難しいレースながら2回目のピットストップまでに9位までポジションアップを果たす好走を見せていたが、99周目のリスタートで発生した多重クラッシュで、スピンした他車にヒットされ、ターン1外側の壁に激しくクラッシュ。リアウイングやリアの左右サスペンションなどダメージは広範囲にわたるものとなったため、レースに復帰することを断念せざるを得ず、15位という結果にとどまった。
なお、前日に開催されたIndyProシリーズ第8戦で、武藤英紀(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は予選8番手からスタートして、3位でゴールした。現在、ポイントランキング2位につけている。

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ダリオ・フランキッティ(優勝)
「体力的に非常にハードだったが、レースを通してマシンのハンドリングは良好だったため、バトルを思う存分楽しむことができた。最後のピットストップでタイヤを交換しなかったのは、タイヤの耐久性に対して強い自信を持っていたからだ。タイヤを換えないという判断は僕自身が下した。アイオワ・スピードウェイはショートトラックでありながら、走りはスーパー・スピードウェイでのものと同じだ。リスタートはとてもチャレンジングで、面白かった。そして、自分たちはその点でもいい戦いができていたから勝利をつかむことができた」

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マルコ・アンドレッティ(2位)
「オーバルでのフィニッシュ、今日はそれを何としてでも手に入れたかった。ずっとリタイアが続いていたからね。最後のピットストップで停止位置が少し前になってしまった。しかし、それがなくてもダリオの前にピットアウトはできなかっただろう。今日は2位でもハッピーだよ。今日はオーバルでの自信を取り戻すことができた。そして、それはダリオのおかげなんだ。彼のセットアップ能力には本当に驚くべきものがある。今日は彼の作り上げたマシンが1-2フィニッシュを飾ったんだ」

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スコット・シャープ(3位)
「とても体力のいるレースだった。レース前からそれを心配していたドライバーは多かったが、自分は大丈夫だと考えていた。ところが、30〜40周を走ったところで厳しいレースになることがわかった。アクシデントの多い一日だったが、僕は幸運にもギリギリのところで巻き込まれずに済んだ。レイホール・レターマン・レーシングは大きな進歩を遂げ、戦闘力をアップしている。今回は予選4番手、決勝では3位をつかむことができた。トップグループと同じペースをずっと保てたし、ピットストップもすばらしかった。今後のシーズンがとても楽しみだ」

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松浦孝亮(15位)
「単独でのスピードは十分ではなかったけれど、トラフィックの中でもコントロールの可能なマシンになっていて、ピットストップでセッティング変更を行わなくてもいいほど、ハンドリングはバランスが取れていました。トップ10入りは十分狙えると序盤に感じ、考えていた以上に早い段階でトップ10までポジションを上げることができたので、さらに上位を狙っていくこともできると思っていたんです。しかし、レースの中盤でアクシデントに巻き込まれてしまった。スピンしたマシンをうまく回避できたと思ったのに、1台のマシンが突っ込んで来たんです。今日のリタイアは本当にガックリ来るものでしたが、次のリッチモンドもショートトラックですから、いいレースを戦えるという自信を手にすることができたし、思い切り戦いたいと思います」

ロバート・クラーク(HPD社長)
「アイオワ州、そしてアイオワ・スピードウェイで初めて行われるメジャーレースということで、地元のファンはインディカー・レースを大歓迎し、初めて目にするハイスピード・オープンホイール・バトルをおおいに楽しんでいた。ショートオーバルはエキサイティングなレースを提供してくれる。オーバーテイクが難しくなっていたのは、すべてのマシンがスロットル全開を保ったまま周回できていたからだ。ダウンフォース量を減らすなどして、アクセルのオン・オフがある状況となれば、もっと多くのオーバーテイクが見られるようになるだろう。しかし、ダウンフォース量の設定は非常にデリケートで、少なくし過ぎればマシン同士が接近できなくなり、オーバーテイクはさらに難しくなる。
今日のレースで残念だったのは多くのアクシデントが発生したことだ。気温が上がらず、タイヤの温度が低かったことも影響しているのだろう。2007年シーズンもほぼ半分が終わろうとしているが、ポイントでトップ10につけているドライバーたちの中にレースをフィニッシュできなかった者、上位入賞を逃した者がいることから、順位にいろいろと動きがあった。今後のポイント争いも非常に楽しみだ」