INDY CAR

武藤英紀、ポールtoウインでIPS初優勝を飾る

<SUPER AGURI PANTHER RACING>

<2007 IPSインディ・プロ・シリーズ第6戦インディアナポリス リバティ・チャレンジ>
【日程】6月16日
【開催地】インディアナ州インディアナポリス
【コース】インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(ロードコース)
【距離】2.605マイル(4.192km)×18周
【天候】晴れ
【気温】35℃

<F1アメリカGPのサポートレースで2連戦>
 2007年IPSインディ・プロ・シリーズの第6戦は、F1アメリカGPのサポートレースとしてインディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースで行われた。05年から始まったこのロードコースイベントではその年にマルコ・アンドレッティがポールtoウインを達成し、IRLインディカー・シリーズへのステップアップに繋げた。また、F1関係者からの注目度も高く、初参戦となる武藤英紀にとっても、自らのスピードを全米のみならず、全世界にアピールする絶好の機会となる。
 1周2.605マイル(4.192km)のコースは、伝統のオーバルコースの一部と、00年からのF1アメリカGP開催のために新設されたインフィールドのコースがミックスされている。通常のオーバルレースとは反対の右回りで行われ、オーバルコースのメインストレートを逆走する形で、ターン4手前からインフィールドコースに入り、ターン2手前からオーバルコースに戻るというダイナミックなレイアウト。昨年までは1レース開催だったが、今年は2レースが予定されており、第6戦決勝が16日(土)のF1予選終了後、第7戦決勝が17日(日)のF1決勝前というスケジュールだ。

<初のポールポジションを獲得>
 15日(金)午前中には30分間のプラクティス走行、同午後3時50分から45分間の予選が行われた。走り始めのプラクティス走行で武藤はトップタイムをマーク。さらに、F1カーのラバーが乗ってコンディションがよくなった予選では、最初のアタックで出したトップタイムをいったんライバルに抜かれるも、ニュータイヤに履き替えての再アタックでそれまでのタイムを0.5秒近く更新。翌周にさらにタイムを縮め、IPSインディ・プロ・シリーズ参戦6戦目にして初のポールポジションを獲得した。

<圧倒的な速さでポールtoウイン>
 決勝はF1の予選終了後の午後3時30分から18周で行われた。ローリングスタートからグリーンフラッグが振られると武藤は抜群の加速を見せ、後続車からアタックもイン側のラインを守ってホールショットを奪う。その後は最速ラップを連発して1周ごとに2番手以下との差を広げ、10周目には2.6秒、15周目には4.1秒までマージンを広げていく。武藤はハイペースで飛ばしながらもタイヤをいたわりながら走っていたため、レース終盤にライバル勢がタイヤのグリップ不足で苦しむ中、武藤はさらにペースアップ。結局、2番手に6秒以上もの差をつけ、IPSインディ・プロ・シリーズ初優勝をポールtoウインで飾った。
 レース後の表彰ではF1のスタイルが採用されたため、表彰台で日の丸の掲揚と『君が代』が史上初めて伝統のインディアナポリスに流れた。17日は第7戦決勝がF1決勝前の午前中に行われる。このレースのスターティンググリッドは、第6戦決勝の優勝者がクジを引き、その番号に基づいて決定されるというユニークな方式。第6戦後に武藤は「8」を引いた。これで、優勝者は8番グリッドからスタートし、2位は7番手、3位は6番手と続き、8位がポールポジションにつくということになった。武藤にとっては優勝したにもかかわらず8番手スタートと苦しい状況になったが、今日のレースのペースラップではライバル勢を圧倒していた。当然、2連勝を狙っていく。

■■■コメント■■■

<武藤英紀>
「目標であった優勝を果たせて本当にうれしい」
「うれしいです。本当にそれだけ。僕は優勝を目標にやってきましたので、本当にうれしいです。一番重要と思っていたスタートで自分がポンと前に出られましたし、あとはイン側を抑え切れば何とかなると思っていました。その後は相手のペースを見ながらの走行でした。イエローコーションが出る可能性もあったので、できるだけタイヤをセーブして走ったのがよかったです。終盤もタイヤはライバルよりも僕の方があったと思うので、たとえイエローが出たとしても速いペースで走れていたと思います。1コーナーをトップで抜けて、自分がレース前に設定した第一段階をクリアできた。3周目にロイドが少し離れたときに自分はまだ100%のプッシュではなかったので、このままいけば勝てると思いました。
 ゴールしたときは、まずはチームに感謝の気持ちでいっぱいでした。いいクルマを用意してくれて、すごく走りやすかったですから。まさか君が代が流れるとは思っていなかったので、すごくジーンときました。ここでレースをやると決めた場所で、自分が君が代を流したんだということを思ったら、胸がすごく熱くなりました。
 明日はクジ引きで後方スタートになってしまいましたが、ペースラップはライバルより速かったので、自信を持って全力で臨みます」

<鈴木亜久里:プロデューサー>
「完璧な、素晴らしいレース内容だった」
「武藤の初優勝のときに居合わせることができてよかった。やっぱり、自分の目の前でこうやって勝ってくれると本当にうれしいです。それに、海外で君が代が流れるのはジーンとくる。海外で日の丸が揚がっているを見たり、君が代が流れているのを聴いたりすると、やっぱり僕らは日本人なんだというのを再認識させてくれる。それを実現してくれた武藤には感謝したい。
 レースは文句のつけようのないほど完璧だった。本当にいいレースだった。レース前は、とにかく無事に走ってくれればいいと思っていた。もちろん、ポールポジションからのスタートだったので優勝の期待はあった。でも、チームは武藤にすごくよくしてくれている。チーム全体が武藤のために何とかしてあげようという気持ちがすごくあるし、彼自身がいい流れを引っ張り寄せているのだと思う。今後もこれをきっかけとして次にステップアップしてほしいと思います」

<ブレア・チューバッカー:クルーチーフ>
「本当に大きな仕事をしてくれた」
「本当に素晴らしい結果だ。多くのF1関係者の前で初優勝を達成できるなんて、本当にヒデキはたいしたドライバーだと思う。チームにとってもこれがIPSインディ・プロ・シリーズ初優勝。ヒデキは本当に大きな仕事をしてくれた。
 僕らはレース前に優勝できるポテンシャルを持ったクルマを用意できたと思う。しかし、レースはいつ何が起こるかわからないもの。イエローコーションも出るだろうし、アクシデントに巻き込まれる可能性もある。でも、今回はオーバルではないし、最終ラップにトップだったら、必ず勝てると思っていたし、実際今日もヒデキが最終ラップに入ったときに優勝を確信したよ。本当に素晴らしい優勝だ」