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インディ・カー・シリーズ 第5戦 インディ500[バンプ・デイ]フォト&レポート

<US-RACING>

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今日も快晴となったインディアナポリス。今年のインディ500はこれまで天候に恵まれている。気温は夕方になるほど上昇し、午後5時には29度にまで達した。湿度も若干高く、この3日間で一番暑さを感じる一日だった。昨日同様、予選アタックを行うドライバーが少なかったため、ほとんどの時間がプラクティスに割かれたバンプ・デイ。エンジンの走行距離に限りがあるため、今週のプラクティスではTカーによるセット・アップを続けていたドライバーが多かったが、今日はブリスコーを除くすべてのドライバーが、レース仕様のプライマリー・カーでセット・アップを行った。昨日Tカーを使ってトップ・スピードを記録したダン・ウエルドンもプライマリー・カーに変え、チームメイトのディクソンと2台で走りながらトラフィックでのセッティングをつめていた。プライマリー・カーに戻してもウエルドンの速さは変わることなく、昨日に続いて222.79mphのトップ・スピードを記録した。

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2位にはチームメイトのスコット・ディクソンが入り、チップ・ガナッシが1−2を獲得。ウエルドンと同様、プライマリー・カーでセット・アップを行ったディクソンは、午後のプラクティス開始直後から積極的に周回を重ね、トップに立っていた。午後4時頃になるまでその座を保っていたディクソンだが、トラフィックでのセット・アップをつめるためにウエルドンと一緒に走りはじめると、ウエルドンがディクソンを上回ってセッションが終了。ディクソンは2位となったものの、トップのウエルドンとの差はわずか0.0032秒に過ぎない。決勝では、チャンピオン経験を持つチップ・ガナッシの二人のドライバーによる、チームメイト・バトルも見逃せない。

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3位はアンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)のダリオ・フランキッティ。5台エントリーのAGRはこれまで同様、トラフィックのセット・アップに徹し、チームメイト同士で走行していた。昨日までベテランのカナーンがチームを引っ張っていたが、今日はもうひとりのベテランの活躍が光った。今週末は一度もトップ・タイムをマークすることがなかったAGRだが、今日もトップとコンマ3秒以内に全5台がつけている。入念なトラフィックのセッティングが決勝でどれだけ発揮されるのか注目しよう。

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昨日のサード・デイをトップで通過したロジャー安川。今日も60周を走りこみ、決勝に向けたセッティングに余念がない。記録した221.401mphはこの日10位のスピード。決勝へ向けて良い結果を残した。「コース・インしたときにたまたま、AGRの4台と一緒に走れて、とりあえずくっついて行けるくらいのレベルのクルマにはなっていますね。スポット参戦で、2週間目ということを考えると、決勝ではトップ10に入れればすごく良いことかなと思います。別にポイント争いをしているわけじゃないんで、色んな意味でギャンブルできますからね。後はほんとうの再確認です。クルマの仕上がりの準備としては、全部クリアできていると思います。最終プラクティスではピットスタンドはまだ組んでいる状態だから、テレビ・タワーだったり、電気系のものがしっかり動くということだけを確認できればいいと思います。決勝へ向けてのセッティングに関してはほぼ終わっていますね」と語る安川。27日の決勝でどんな走りを披露してくれるのか、期待が高まる。

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バンプ・デイでの参戦が噂されていたリッチー・ハーンが、午前のプラクティスでピットに現れ、その噂が現実のものとなった。2年ぶりのインディ500挑戦となるハーンは、プラクティスのわずかな時間でセットアップをまとめ、午後2時39分に予選アタックを開始。今日が初走行にもかかわらず、余裕の予選通過スピードとなる219.860をマークした。「マシンは安定しているから、自信を持っていけたね。レースに向けたセット・アップも出来たよ。マシンは良くなっているから、来週は堅実なレースをして来年につなげたいんだ」と意気込みを語るハーン。この2年間、カート以外にレースをやってこなかったというハーンは、どこまで順位を上げることができるだろうか。

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昨日の予選アタックでは、惜しくもラスト・ラップにクラッシュを喫してしまったルーキーのフィル・ギブラー。それまでの3周で221マイル以上を記録していただけに、残念な結果となったが、チームはクラッシュしたマシンを懸命に修復し、今日の予選にこぎつけた。先にハーンが予選アタックを行い、この時点で33台のグリッドが埋まったため、ギブラーのアタックから実質的なバンプ・アウトが幕を明けた。チームの期待に応えたいギブラーは、昨日のスピードには及ばないものの、4周のラップをきっちりまとめて219.637mphを記録。見事にジミー・カイトをバンプ・アウトして33位のグリッドを確保した。「チームのみんなはほんとうに一生懸命働き、決して諦めなかったんだ。できるだけ遅くまで作業を行い、今日も早くから作業をしていた。そして僕のために良いマシンを仕上げてくれた。最高の気分だよ」と喜ぶギブラー。決勝では最後尾からの追い上げを誓う。

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ギブラーにバンプ・アウトされてしまったジミー・カイトは、バンプ・アウト後もプラクティスで走りこみを続け、セッション終了間際の5時57分に再び予選アタックに挑んだ。崖っぷちに立たされたカイトは、観客からの多くの声援を受けてアタックへ向かう。このアタックで少なくも218マイル以上のスピードが欲しいカイトだが、プラクティスでも215マイルが最高スピードだった。迎えた予選アタックの1周目は、スピードが伸びずに214.744mphに留まり、ここでウエーブ・オフ。カイトのインディ500出場はこの瞬間に消えた。「空気抵抗をできるだけ減らしていたんだ。昨日はまだ余裕がありそうだったから、もっと減らしたらスピードが上がるかと思っていたけど、マシンには余裕がなかったみたいだね。ストレートでうまく走れなかったよ。みんなにはほんとうに申し訳ない。ジムとZ-ライン・デザインが決勝に出られると思いながら僕をサポートしてくれていたんだから。僕たちもレースに出るつもりだったから、テレビで見なければいけないのは、ほんとうに最悪だよ」と落胆するカイト。インディ500初出場への道は険しいと感じたはずだ。

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カイトがバンプ・アウトされ、次にバンプ・アウトされる番が周ってきたのはロベルト・モレノ。昨日は突然の出場が影響して216マイルまでしかスピードを伸ばせなかったモレノは、バンプ・アウトされることを予想し、今日もプラクティスを積極的に走りこんで220マイル台をマークしていた。セッションが残り1時間を切った午後5時1分に、再度予選アタックにチャレンジしたモレノは、220.299mphのスピード記録。ポジションを守りきって、8年ぶりのインディ500決勝出場を決めた。「エンジニアが凄く良い仕事してくれたね。何が必要かを理解して問題点を完璧に直してくれたから、220mph台で走ることができたよ。もう歳だから辞めたほうが良いと思われるかもしれないけど、僕のスピリッツを忘れないでほしいね。まだまだ心が若いし、勝ちたいとい気持ちがほんとうに強いんだ。48歳だけど、かなり調子が良いよ。予選を突破できたんだ」と大喜びのモレノ。復活した“スーパー・サブ”が48歳で2度目のインディ500に挑む。

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今日のプラクティスでも216マイル台しか記録できなかったP.J.ジョーンズは、結局、予選アタックを行わず、ピットを離れることになった。記念ペイントが施され、昨日は父親のパーネリがセレモニー・ラップを行ったマシンは、決勝でその姿を見せることなくインディアナポリスを後にした。「とても難しかったね。厳しい決断をしなければならなかったよ。たくさんの設定変更をしたけど、問題ばかり発生したんだ。しかもエンジンのマイレージがあったから、ほんとうに辛かった。でも、マシンを壊すよりはよっぽどいいと思うよ。ガッカリしたけど、マシンのセットが決まらないで200マイル以上のスピードで走るのは危険なんだ。8年間のインディカーで1度も経験したことがない問題がいっぱい出てきた。チームのみんなはとても才能がある人ばかりだけど、先週の火曜まで一緒のチームで働いたことがなかったんだから、しょうがないよね」と話すジョーンズ。ガレージへ戻されるマシンを悲しげに見つめていた。

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カイトが218.922mph以上を出していれば、バンプ・アウトされていたマーティ・ロス。カイトがアタックする様子をじっとピットで見守っていたが、カイトがウエーブ・オフすると胸をなでおろし、自然と笑みがこぼれた。「ようやく6時01分になったね。この瞬間をずっと待っていたんだ。今日はほんとうに長い1日だった。残念ながら予選結果はかなりひどかったから、そのせいで大変な思いをしたよ。バンプ・アウトされるポジションに入ってからは、ずっと気が気じゃなかったね。マシンの調子がかなり良く、1日中221マイルのスピードを出していたから、もう1回予選に挑戦するかを悩んでいた。ピットの雰囲気はとても張り詰めていたんだよ。今日を終えることができ、そして決勝に残ることができてほんとうによかったよ」と笑顔で答えるロス。48歳にして3回目のインディ500出場を決めた。

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午後のプラクティス開始から3時間が経とうとしたとき、AGRのピットで珍しい光景を目にした。ピットを離れるマイケル・アンドレッティのマシンに乗り込むのは、なんとこの日4位でプラクティスを終えたチームメイトのカナーンだった。マイケルのマシンで15周に渡って走行したカナーンは、14位となる220.640mphのスピードを記録。スピード・チャートにカナーンの名前が二つ刻まれた。今回の走行の詳細はわからないが、セット・アップの比較をするためにマイケルのマシンに乗り込んだと思われる。セブン・イレブン・カラー以外のマシンにのるカナーンを観るのは新鮮な気分だった。

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昨日から顔にペイントを施した子供たちがコースを闊歩する姿が見られたが、これはパゴダ・プラザで行われてたれはフリー・フェイス・ペインティング・フォ・オール・エイジというイベントのため。サッカー・スタジアムではよく見かけるこの光景は、不思議とこのインディアナポリス・モーター・スピードウェイにも溶け込んでいた気がする。タダで顔にペイントしてもらえるため、多くの子供達が自身の思い思いのキャラクターを顔に描いてもらい、とても喜んでいた。この他パゴダ・プラザでは、レースのテレビ・ゲーム、ラジコン、ペダルカー・レースなどのイベントが開かれ、子供たちを飽きさせない工夫がされていた。

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2週間にわたって行われたインディ500の予選も、昨日のサード・デイと今日のバンプ・デイが終了し、全33台のグリッドが確定した。ポール・ポジションを獲得したエリオ・カストロネベスを先頭にペンスキー、チップ・ガナッシ、AGRが上位を占める。3強を追うチームの一番手は10位につけたヴィジョン・レーシング、トーマス・シェクター。そして、日本人ドライバーは松浦孝亮が17位から、ロジャー安川が23位から追い上げを狙う。33人のドライバーの誰が栄光のミルクを飲むことができるのか、27日の決勝が待ち遠しい。