INDY CAR

伝統の一戦、Indy500のポールポジションはエリオ・カストロネベスが獲得。松浦孝亮は予選17位

<Honda>

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2007年5月12日(土)、13日(日)・ポールデー/予選2日目
会場:インディアナポリス・モーター・スピードウェイ
天候:晴れ/晴れ
気温:27.8℃/25.6℃

世界で最も長い歴史を誇り、今年で第91回目を迎えるインディアナポリス500マイル・レース(Indy500)は、毎年の5月に約1カ月をかけて行われる。先週の日曜日にルーキー・オリエンテーションでインディ月間が開幕。出場者の大半が火曜日からプラクティスを走り始め、十分な走りこみの後、この土曜日に予選がスタートした。

Indy500の予選は、2つの週末の土曜と日曜、合計4日を使って行われる非常にユニークなものとなっている。予選第1週の土曜日はポールデイと呼ばれ、ポールポジションを決定する。ここに2年前から採用されている新フォーマットが加味され、ポールデイに決定するグリッドは11番手までに限られる。全33個のグリッドは3等分され、予選2日目に12番から22番グリッドまでの11グリッドを決定し、残る23〜33番グリッドは予選第2週で競い合うシステムへと変わっているのだ。’05年までの伝統ある予選ルールでは、全33グリッドをいったん決定した後、さらに速いスピードを出す者が現れると33人中で最も遅い予選スピード保持者がグリッドから弾き出される(=バンプアウト)こととなっていたが、新予選フォーマットではポールデイ、予選2日目ともに11個ずつのグリッドしか決定しないため、初日からバンプアウトが見られることとなった。
Indy500の予選には、もうひとつ大きな特徴がある。アタックはほかのIndyCarシリーズ・イベントと同じく1台ずつのタイムトライアル方式で行われるのだが、2周走って速い方のタイムを採用する通常のシステムとは異なり、4周の連続走行でのタイム(=平均時速)を競い合う。全長2.5マイルのコースを4周する間には、風向きや風の強さが変化するのはもちろんのこと、タイヤの内圧も大きく変わるため、ドライビングにもマシンセッティングにも高度なスキルが要求される。ストレートでの最高速が時速230マイルに届く高速走行では、コーナリングスピードもほかのコースとは明確に違う高さとなり、コーナーごと、あるいはラップごとにコクピット内でスタビライザーとウエイト・ジャッカーを操作し、ハンドリングをコントロールするようなことまで行われている。

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土曜日の正午に始まった予選は、午後6時までと長時間にわたって続いた。予選開始から約1時間の時点で、ダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が225.191マイルの最速スピードをマーク。しかし、1台のマシンにつき3回のアタックが許されるIndy500特有のルールにより、夕方の5時50分過ぎに2度目のアタックを行ったエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)が平均時速225.817マイルを記録し、フランキッティからポールポジションを奪い取った。
これでもまだ予選は終了しておらず、5時58分、最後の大逆転のチャンスに掛けてトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)がコースイン。チームメートの奪われたポールポジションを取り返すべくアタックを行った。カナーンは3周目までの平均ではカストロネベスをリードしていたが、4周目でタイヤのグリップが減少、ハンドリングを乱したためにほんの僅かのスピードダウンをせねばならず、平均時速にして0.06マイルの僅差でポールポジションを逃した。インディアナポリス・モーター・スピードウェイで4周を完了するためには約2分40秒が必要とされるが、カストロネベスはカナーンに僅か0.042秒の差で、キャリア2回目のIndy500ポールポジションを獲得した。
11個のグリッドをめぐる戦いである初日予選には、20台が出走。19台がアタックを完了し、5台が2度目のチャレンジを敢行した。第91回Indy500を栄えあるフロントローからスタートするのは、カストロネベス、カナーン、フランキッティの3人に決定。Indy500ではグリッドもほかのコースと違い、1列が3グリッドと規定されているのだ。グリッド2列目の4、5、6位には、予選前日までのプラクティスで最速だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、昨年度ウイナーのサム・ホーニッシュJr.(チーム・ペンスキー)、’05年ウイナーで現シリーズ・ポイントリーダーのダン・ウェルドン(チップ・ガナッシ・レーシング)の3人が並ぶこととなった。
2日目の予選も6時間にわたって開催され、12〜22番グリッドを競うスピードバトルが展開された。2日目の最速スピードとなる223.875マイルを記録したのはスコット・シャープ(レイホール・レターマン・レーシング)で、彼が12番グリッドを手に入れた。シャープのスピードは、ポールデイに9位で予選を終えたマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)よりも速いものだが、2日目の挑戦者には2日目用のグリッドしか与えられないのがIndy500のルールなのだ。
松浦孝亮(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)はポールデイにアタックを行ったがスピードが十分でなくバンプアウトされ、2日目に再挑戦。222.595マイルを記録して17番グリッドから決勝に進出することが決まった。’04年の初出場では予選9位、決勝11位でルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた松浦。過去3回のIndy500出場では常に予選でトップ10に食い込んで来たが、4度目の挑戦となる今年はいくぶん苦戦気味。しかし、決勝レースへとすでに気持ちを素早く切り替えた松浦は、Indy500の自己ベストの11位を上回るフィニッシュを果たすため、来週からのプラクティスでセッティングをいかに進めるか、予選アタック後にはエンジニアたちとのミーティングをスタートさせていた。
2日目に予選アタックを行ったのは16人。1人は4周を完了する前にアタックをストップし、4人がバンプアウトされ、22番グリッドまでが決定した。予選は来週の土曜、日曜とさらに2日行われる。

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●エリオ・カストロネベス(ポールポジション)
「1回目のアタックで最速スピードを記録できなかったとき、僕としては今年のポールポジション獲得はあきらめた。しかし、チームメートのサム(ホーニッシュJr.)が、ポールポジションを取り損ねはしたもののすばらしいスピードをマークした。それで自分たちにも逆転のチャンスがあるとわかり、もう一度、プラクティスを行い、セッティングのほんの小さな調整を繰り返し、最後のチャンスに掛けてみることにした。あのアタックを行うか否か、チームは僕に判断をゆだねてくれ、自分たちの可能性に掛けてみることを決めた。今日のポールポジションはチームのがんばりのおかげだ。彼らには感謝してもし切れない。今日一日、少しでも速く走ろうと僕らはセッティングをトライし続けていた。それがポールポジション獲得につながった」

●トニー・カナーン(予選2番手)
「サーキットに来てくれていたファンは僕らの戦いを楽しんでくれたんじゃないかな? チームメートのダリオ(フランキッティ)を誰かがポールポジションから弾き出すことになったら、僕らはアタックをしようと決めていた。そして、そうなったので僕らはアタックに臨んだ。ポールポジションを獲得する自信はあったし、最善を尽くすこともできた。しかし、あと一歩でポールをエリオ(カストロネベス)から奪還することはできなかった。ウオームアップ・ラップをハードに走り過ぎて、その影響が最終ラップに出た。ターン3でマシンの挙動がおかしくなり、悔しい結果となってしまった。それでも、アンドレッティ・グリーン・レーシングはエントリーしている5台すべてを今日の予選で11位までに食い込ませたんだ。これは誇っていいすばらしいリザルトだと思う」

●ダリオ・フランキッティ(予選3番手)
「とても長い一日になった。待っている時間は本当に長く、つらいものだった。逆転される可能性があることはわかっていたが、ポールポジションを捨ててアタックを行うことはできない。僕らは動きが取れない状態にあったといえるだろう。ポールポジションを逃したのはとても残念だ。しかし、新しい予選フォーマットによって予選時間終了ギリギリまでエキサイティングな戦いが続いた。スピードウェイに来てくれているファンは、逆転劇を大いに楽しんでいたようだった。それは見ていてうれしいことだった。ポールポジションではないが、僕らはフロントローからレースをスタートできる。レースで予選以上の成績を残せるよう全力を尽くすつもりだ」

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●松浦孝亮(予選17番手)
「過去3年間はずっと予選でトップ10に入っていますし、今年もトップ11には入るつもりでいました。しかし、プラクティスが始まった火曜日からトラブルが続いたことと、セッティングを詰めきれなかったためにスピードを思うように上げて予選を迎えることができませんでした。それでも、予選初日のポールデイに何とかグリッドを確保するつもりでいました。1回目のアタックの後に再度挑戦することを決め、プラクティスを行い、マシンを予選のための列へと並べました。残念なことに、自分たちの2台前までで予選が時間切れとなってしまい、グリッドを獲得するチャンスは実現しませんでした。これで予選は終了したので、来週のプラクティスで決勝用セッティングをよいものとするべく全力でがんばります。500マイルのレースはシリーズで最も長いものですから、スターティンググリッドはそんなに重要ではありません。長いレース、トラフィックの中で戦うレースをどれだけ安定して走り、ゴールまで走り切れるマシンを作るかが大事なので、それを達成するべくがんばっていきます」

●ロバート・クラーク(HPD社長)
「ポールポジションから11番手までのグリッドを決める新しい予選フォーマットは、’05年に導入されたが、この2年とも予選初日が雨に見舞われ、ポールデイのバンプアウト合戦は見られなかった。今年は好天に恵まれ、ダリオ・フランキッティ、エリオ・カストロネベス、サム・ホーニッシュJr.、トニー・カナーンらによるエキサイティングなポールポジション争いをファンは目の当たりにすることができた。それはすばらしいことだったと思う。
時速225マイル台というポールポジションスピードは我々が想定していたスピードよりも低いものとなった。排気量が3.5リッターとなってパワーバンドの広がっているエンジンは、コーナーの脱出スピードを高め、ラップタイムを縮めることにつながると考えていたが、全長2.5マイルの超高速オーバルではエンジン回転数の落ち込みが小さいため、拡大されたトルクがラップ・タイムに影響を与えることはなかったようだ。
プラクティスから予選第1週まで、Hondaエンジンは高い信頼性、そして全エントラントに均一のパフォーマンスを提供し、エキサイティングな予選に貢献することができている」