<US-RACING>
ペンスキーのエリオ・カストロネベスが、第91回インディ500のポール・ポジションの栄冠を勝ち取った。今シーズン5戦中3戦でポールを獲得し、予選での速さを見せ付けている。6時間という長いセッションの中でドラマは残り10分に生まれた。2回目のアタックで224.988mphのスピードをマークしていたカストロネベスとペンスキー陣営は、ポールを獲得すべく、最後のアタックに出ることを決断。セッションの残り8分でカストロネベスは、暫定ポール・スピードを0.5マイル上回る225.817mphをマークし、その期待に応えてみせた。続いてアタックをしたのは今朝から好調のカナーン。一時カストロネベスを凌ぐ速さを見せ、観衆の注目が一気にカナーンへと集中する。しかし、カナーンはわずかに届かず、カストロネベスはインディ500で2003年以来となる2度目のポールを確定。マシンから飛び降りたカストロネベスは、フィアンセや妹と抱き合って喜びを分かち合った。「このポール・ポジションは僕とチームにとって大きな意味があるね。今日はチームの努力のおかげで、すばらしいスタート位置を獲得できたんだ」と大喜びのカストロネベス。自身3度目、2002年以来のインディ500制覇に向けて絶好のポジションにつけた。
カストロネベスを最後まで追い詰めたトニー・カナーンは2位に終わる。午前のプラクティスでトップ・タイムをマークしていたカナーンは、予選でもスピードを維持し、序盤からポール・ポジションを争っていた。セッション終了間際には、最後のアタッカーとしてカストロネベスに挑んだが、225.757mphのスピードはポール・ポジションにあと0.06マイル届かなかった。「全体的に良かったんじゃないかな。僕とダリオ(フランキッティ)は、一緒にマシンのセット・アップを改良してきた。いくつか意見が違ったから、予選は少し違うセット・アップでいったんだけど、彼のほうがよく見えたね」と話すカナーン。いまだ成し遂げていないインディ500制覇を2番手から狙う。
開幕から一戦毎に調子を上げているダリオ・フランキッティ。今日のポール・デイは1回目のアタックからトップ・タイムを叩き出し、ピットに戻るとチームメイトのカナーンが出迎える。セッションの残り10分までトップを死守していたフランキッティは、最終的にカストロネベスとカナーンの先行を許して3位となったが、この結果には満足しているようだ。「わずか1年でこんなに進歩したなんて、ほんとうに素晴らしいよ。去年はずっとスピードが足りなかった。でも、今はチームのみんながスピードを出せている。メカニックや僕のチームメイトも一生懸命なんだ。チームメイトと同じセットアップだから、お互いに助け合ったりすることができるね」と語るフランキッティ。AGRは5人のドライバー全員がベスト11に入り、インディ500では好調を維持している。
快晴となったインディアナポリス・モーター・スピードウエイ。ポール・デイの1日にまったく雨が降らなかったのは2001年以来のこと。気温は予選開始時に27度まで上昇する蒸し暑い一日となる。時間が経つにつれて気温が徐々に下がっていったが、急いで歩くと汗ばむ陽気が夕方まで続いた。
最後のアタックを終えた後、マシンに留まってカナーンのアタックが終わるのを待つカストロネベス。ステアリングをはずし、ヘルメットのバイザーを少し開け、祈るようにしてじっとコックピットに座っていた。チーム・メンバーも緊張の面持ちでカナーンのアタックを見守る。カナーンが2ラップ目にカストロネベスを上回るスピードをマークすると、その緊張は最高潮に達したが、最終的にカナーンはスピードを上回ることができずに、カストロネベスのポール・ポジションが決定。張り詰めた糸が切れたように、大歓声がピットを包んだ。
ポール・アワードのトロフィーにキスをしたカストロネベス。今日のポール・ポジションで自身が持つIRLの最多記録を19回に更新したほか、賞金10万ドル(1ドル120円で1200万円)を手にした。これまでにいくつものポールを積み上げてきたカストロネベスだが、いつも以上に喜んでいた姿が印象的だった。IRLに参戦するドライバーにとってインディ500は特別な意味を持つ。
プラクティスでトップ・スピードを連発していたチップ・ガナッシの2人は、ペンスキーとAGRの後塵を拝した。昨日のファスト・フライデーでトップ・スピードをマークしたスコット・ディクソンは、マシンのバランスをうまく取れずに4位が精一杯だった。「最初に良いタイムを残したかったけど、そうはならなかったね。バランスが良くなかったんだ。かなりイライラしたよ。1周目はそれほどマシンが悪くなかったから、そこから良くなると思っていたけど、アンダーが強くなって結局ダメだった。その時点で、アタックをキャンセルしようと思ったけど、チームの方針で続けなければいけなかったんだ」とディクソン。一方、初日と二日目にトップ・スピードを記録したダン・ウェルドンは、去年のインディ500覇者であるサム・ホーニッシュJr.の後ろの6位に留まった。「いつかはポールを獲りたいけど、一番大事なのはレースだから、それを楽しみにしているよ」と話したウエルドン。あくまでも決勝を見据えた走りをしているようだった。
昨日のプラクティスではセッティングに苦しんだ松浦孝亮。迎えた今日のポール・デイは221.866mphのスピードを記録するが、開幕戦、第2戦と2度も接触したシモンズに、今度はバンプ・アウトされてしまった。再びタイム・アタックを試みるが、アタックに並ぶタイミングが遅れてしまい、走行することができないまま15位でポール・デイを終えた。「今回、うちのチームはかなりセッティングをはずしていて、ヴィットールもまともに走れていないですね。メカニカル・グリップが全然足りていないです。明日は何とかしたいけど、そんなに簡単ではないですね。どこまでいけるかはわからないです」と納得のいかない表情を浮かべる松浦。今日の予選でベスト11が確定したため、明日の二日目でトップ・タイムを記録しても12位のグリッドになってしまうが、その最上位である12位を獲得して欲しい。
日本人ドライバーでは、最多出場記録となる5年目のインディ500参戦へ挑もうとしているロジャー安川。シーズンが開幕した頃からチームと交渉を始めていた安川は、今週の木曜日から現地に入り、参戦に向けて最終調整を行っている。「現在、複数のチームと交渉をしている段階で、明日までにはあるチームと具体的な方向性が決まると思います。来週のプラクティスがスタートするまでには発表できるようにしたいですね」と状況を話す安川。一日も早く参戦体制が決まることを願いたい。