<US-RACING>
ダン・ウエルドンが、レースの200周中177周でリードラップを獲る圧倒的な強さで、今シーズン2勝目をあげた。4番グリッドのウエルドンは、スタートで一気に2番手まで浮上し、トップのカナーンを追走。6周目にカナーンの背後につけると、7周目からドッグ・ファイトを演じ、9周目にトップの座を奪い取った。ウエルドンを追いかけるはずのカナーンが、ピット・ロードでダニカ・パトリックと接触するアクシデントで順位を落とすと、ウエルドンはチームメイトのディクソンとトップ争いを繰り広げることになったが、そのディクソンも165周目にペナルティで後退。後から追い上げるマシンがいなくなったウエルドンはハイペースで後続を引き離し、残り3周にでたコーションによって、余裕のフィニッシュを決めた。「これは純粋にターゲット・チップ・ガナッシ・レーシングのチームの努力だよ。みんながすばらしい仕事をしてくれたんだ。次は大事なイベントだから準備をしなければならない。インディ500が僕たちの目標だからね。もてぎではストレスが溜まるレースだったから、今日は僕の力を見せ付けたかったんだ。マシンは最高だったよ」と大喜びのウエルドン。シリーズ・ポイント・リーダーの座を堅持し、2位のディクソンに27ポイントの差をつけた。次戦、2年ぶりのインディ500制覇に挑む。
2位に入ったのはダリオ・フランキッティ。先週のもてぎに続き、2週連続でトップ3フィニッシュを決めた。6番手スタートのフランキッティは、ライバルたちの後退にも助けられ、徐々に順位を上げる。166周目には2番手まで浮上し、ウエルドンを追いかけたいところだったが、スピードで勝るウエルドンに追いつくことが出来ず、そのまま2位でフィニッシュ。オーバルでは2005年のミルウォーキー以来の2位を獲得した。「最初のピット・インまではとても滑りやすかったね。レースの最後ではマシンがかなり速くなったから良かったよ。僕たちは確実に進歩しているから、この勢いでインディアナポリスへ行きたいね」と話すフランキッティ。インディ500では、開幕戦からレース毎に調子を上げているフランキッティの走りに注目だ。
今週末は、「思うようなスピードが見つからない」と予選後の会見で話していたエリオ・カストロネベス。安定した堅実な走りでレースをまとめ、スタート・ポジションの3位を守り抜いてフィニッシュした。「チーム・ペンスキーのマシンはレース中とても良い感じだったよ。この結果はとてもうれしいね。僕たちは勝てるマシンを持っていなかったんだけど、慎重に走ってフィニッシュまでマシンを運ぶことが出来たんだ。目標はトップ3入りだったから、それが達成できたね、これからは5月のインディ500に集中しなくてはいけないよ」とほっとした様子のカストロネベス。今回、彼の切れのある走りは見ることが出来なかったが、インディ500ではすばらしい走りを披露してくれるだろう。ちなみに、カストロネベスのチーフ・メカニックで、アキレス腱を切ってもてぎを欠席していたリナマンが、松葉杖をつきながらカンザスに戻ってきた。リナマンは前戦の欠席で、1984年シーズンから続けてきた連続出席記録を367戦で止めることになったが、ピットに現れた頼れるチーフ・メカニックを、チーム・メンバーは温かく迎えいれていた。
12番手からスタートした松浦は、終盤での逆転を狙い、燃費作戦を敷いていた。トップ・グループが46周目からピット・ストップが始まったなか、松浦は50周まで引き伸ばすことに成功。作戦が上手く回り始めたかに見えたが、その直後、エンジンがトラブルを抱え、松浦は再びピット・イン。チームは松浦をコースに戻そうと懸命の作業を行ったが、リタイアせざるを得なかった。「1回目のピット・ストップからコースに戻ったところで異変に気づき、ピットに戻って修理しようとしましたが、直すのは無理だとわかってマシンを停めることになりました。今回は燃費をセーブする作戦で、最初のスティントは順調に進んでいました。このレースはぜひとも完走したいと考えていたので、とても残念です」と話す松浦。開幕から4戦連続リタイアと厳しい結果となってしまったが、各レースで確実にチームとのコミュニケーションを深めてきた。次戦、インディ500ではすべての歯車がかみ合い、良い結果が出ることを期待しよう。
朝から快晴となったカンザス・スピードウエイ。例年7月上旬に開催されてきたこのレースだが、7月のカンザスは気温が高くなりすぎ、観戦に来るファンにも厳しいということで、今回から4月下旬へと移動していた。この時期の開催に際して、今度は寒いのではと言う懸念があったものの、気温は午後3時30分の時点で29度まで上昇。蒸し暑さはなかったため、観戦するのにはほどよい感じの体感温度となった。時期の移動が功を奏してか、昨年は空席が目立っていたグランドスタンドが8割ほど埋まり、主催者の思惑は大当たりといえたが、ファンにとってはウエルドンの独走と言う一方的なレース展開となったのが、少し残念だっただろう。
開幕戦から連続してトップ10フィニッシュを続けているヴィジョン・レーシングのトーマス・シェクターが、今シーズン・ベストの5位に入った。レース中のトップ・スピードは上位10人の中で2番目に遅いシェクターのマシンだが、ヴィジョン・レーシングの総合力が彼らをこの位置まで押し上げているようだ。「みんなはすごい仕事をしたね。エンジニアは僕にすばらしいマシンを用意してくれ、すべてが上手くいったよ。僕たちはトップ5で走れるパフォーマンスを探していた。後もう少し速くなる必要があるね」と今シーズン初のトップ5入りを喜ぶシェクター。フランキッティ同様、シェクターとヴィジョンは開幕戦から確実に進歩している。この灰色と白のマシンがインディ500のダークホースとなるかもしれない。
1回目のピット・ストップで、ウエルドンを追いかけていたカナーンに悲劇が起こる。ピット・ボックスにマシンを止めようとしたときに、あろうことかチームメイトのダニカ・パトリックがピット・ボックスから出てきて、2台が接触。チーム・スタッフも唖然としてしまう。接触直後、パトリックはハンドルを両手で叩きつけて怒りをあらわにした一方、カナーンはダニカがピット・アウト後に「なんてこった」という感じで、両手を挙げていた。このアクシデントでカナーンは左フロントのタイロッドが折れて交換を強いられ、ウエルドンを追うどころか優勝争いから脱落。なんとか戦列に復帰したものの8周遅れの15位が精一杯だった。「ほんとうにがっかりだよ。勝てるマシンだったのに」とカナーンは肩を落とした。パトリックもこのアクシデントが影響し、2周遅れの7位でフィニッシュ。「7位は今年のベストの結果だけど、望んでいたものではないわ。ピットでは確かにTK(カナーン)が来ていたけど、スポッターが行けっていったんだもの。気分は悪いわね。トニーはほんとうに速いマシンだったのに、AGRはレースに勝てるマシンを2台犠牲にしたわ」と落ち込んだ様子で語った。チーム内の判断ミスによるアクシデントだけに、AGRにとっては手痛い結果となってしまった。
もてぎで大クラッシュを喫したマルコ・アンドレッティ。幸い後遺症もなく、今週のレースにも出場し、予選9番手につけていた。アンドレッティはレースをスタートしたものの、序盤からハンドリングのトラブルで、ずるずると後退。20番手まで順位を落としたところで、1回目のピット・ストップを迎えた。タイヤ交換と燃料補給に加え、ウィングの調整を行ってハンドリングの改善を狙ったが、トラブルは解消されず、64周目に自らマシンを降りることになった。「言葉で表すことができないほど、怖かったよ。他に何と言っていいのか分からないし、どうなっているのかも分からない。フロントとリアのウィングがひっくり返っていたような感じだった。NYSEマシンにグリップが全くなかった」とトラブルについて語るアンドレッティ。2戦連続リタイアとなってしまったが、昨年快走を見せた次戦のインディ500では、父親マイケルとの優勝争いをファンは期待している。
IRL史上3人目の女性ドライバーとして、レース・デビューを飾ったミルカ・デュノ。初めてのレースを予選最後尾から走りきり、6周遅れの14位でフィニッシュした「すばらしい経験になったわ。レースはとてもタフだったけどね。最初はものすごくアンダー・ステアだったけど、二回のピット・ストップでそれぞれ調整して、マシンはかなり良くなったの。そこからリカバーし始め、高いスピードは知ることができた。チームのみんながほんとうにすばらしい仕事をしてくれたわ」と初レースの感想を話すデュノ。次のインディ500では多くのプラクティスが用意されているため、デュノが他のライバルたちとの差をどれくらい縮められるのか注目だ。