INDY CAR

サム・ホーニッシュJr.が情熱を傾けるカー・コレクションが進行中

画像

<TWIN RING MOTEGI>
両親の家の前から通りをしばらく下ったところにある三棟からなる90エーカー(約36.4ヘクタール)のガレージは、サム・ホーニッシュJr.の豊かな想像力から生まれた夢に満たされている。あらゆる魅力を備えたその建物は、個人的なスケジュールやレースのストレスから逃れるための、いわば聖域だ。掛かってくる電話も、古い友人からのものと、夕食のための帰宅時間を知ろうとする夫人からのものだけだった。
かすかなヒーターの音だけが聞こえているだけの静けさは、星条旗を描いた溶接シールドを下ろし溶接器に点火したサムによって破られた。サムはただひとりだが、それでも周りを“友人たち”に囲まれている。
後壁に沿って、人によっては朽ち果てたポンコツのようにしか見えないさまざまなクルマが並んでいる。1946年型のインターナショナル・ハーベスター・トラック、彼の父親が高校時代に乗っていたのと同型同色の1950年型シボレー、そして1967年型のシェビー・ピックアップなどだ。スペア・パーツが蓄えられた北東の角にも、もうひとつ郷愁を誘うものがあった。サムがレースを始めたばかりの頃、長い距離を移動するのに使われたゴーカート用のトレーラーだ。
そして美しく保れた建物の中央にあるショールームのような一角にはコレクションが展示されている。オレンジと白とゴールドに塗装された1955年型のシボレー・デルレイ(このクルマには特別なときしか乗らない)。22インチ・ホイールを履き、エアライド・サスペンションを備えた黒い2003年型のシボレー・シルベラード(オハイオに、こういうクルマはめったにない)。ワイヤー・ホイール&ホワイト・ライン入りタイヤに改造した2002年型の黒いハーレー・ダビッドソン『ファット・ボーイ』(レースを辞め、これでツーリングして暮らす日を今から楽しみにしている)。サムが初めて乗ったブルーとシルバーの1988年型ドッグ・プロ・スポーツ・モーターサイクル。それにインディカー・シリーズのグッズ。
「みんな、理由は違うけど、好きなクルマばかりだ。(これらの友人に対して)いろいろ問題が起こるのにも慣れている」と、サムは言う。そしてカスタムカーやトラック、そして何台かのバイクをレストアすることへの情熱について語る。
この趣味は、サムの自分で責任を取るという姿勢を反映している。それは彼が極度に厳しい競争であるインディカー・シリーズの世界で成功を収めることにも役立っているものだ。そしてサムは、どんなメーカーのものであれ若いころに接したクルマたちに、深い尊敬の念を抱いている。
「高校を出て、すぐに父と母のトラック会社を手伝うようになった。メカニックとしても多くの仕事をし、組み立てもやった。レースと違うのは、ミスをしたとしてももう一度やり直すチャンスがあることだ。レースでは、そういうことはめったにない」
サムのお気に入りは1950年代のモデルだ。
「50年代にはクルマがずいぶん変わった。そのころに四角い感じから、大きくてフェンダーの張り出した立体感のあるものになっていった。実際にサイズも大きくなり、乗車空間はゆったりしている。ちょうどロックンロールの大スターが出始めたころで、少年たちは新しいクルマを手に入れ、改造するようになった。カスタマイズすることによって、自分の個性を主張していたわけだ」とサムは言う。
レースとレースの合間に数日しか自宅へもどることができない夏の間も、サムは少しでも時間があればこのガレージにこもり「いろいろなことを考える」という。「とにかく楽しい。クルマが好きだから。それといい気分転換になるんだ。ここへ来て少し仕事をし、家に帰り、シャワーを浴びて食事したあと、ぶらりと外出するのが一番いい」とサムは語った。