<US-RACING>
ウエルドンがカストロネベスを0.0133秒の僅差で抑え、今シーズン6勝目を飾った。2002年にホーニッシュJr.が年間5勝を獲得しており、ウエルドンも今シーズンのパイクス・ピークでその記録に並んだが、今回の優勝でその年間最多勝利記録を更新。このシリーズでシーズン中に6勝することは並大抵のことではなく、今年のウエルドンがいかに強いかということを今回示したことになる。ポイントランキングでも2位のカナーンに102ポイントの差を広げ、シリーズ・チャンピオン獲得は次戦のワトキンス・グレンで、プラクティスを1周走った時点で12点(参戦した全員が獲得)が入り、ここで決まることになる。「それが終わるまで、まだ僕はチャンピオンじゃないんだ。1周だけのプラクティス・ラップでいいんだから、今までにないぐらい、ゆっくりと1周するつもりだよ! 絶対にトップ・タイムなんて期待しないで」と大喜びのウエルドンだった。
パトリックがポール・ポジションとなったため、午前に行われたファイナル・プラクティス終了後、改めてフォト・セッションが行われた。インフィニティ・プロ・シリーズでも女性ドライバーのマッキューンがポール・ポジションを獲得し、両シリーズで女性ドライバーがポール・ポジションからスタートするのは、インディ・レーシング・リーグで初めてのこと。それを記念しての撮影でもあった。シーズン終盤となり、トラフィックでの走行に慣れてきたパトリックは今回のレースで健闘し、6位でフィニッシュ。トップ・グループに付いていく走りを披露。「今年のベストレースだった!」と手ごたえを感じていたようだ。一方、マッキューンは6周目の多重クラッシュでリタイアとなっている。
久しぶりに衝撃的なクラッシュだった。マシンが大破し、ばらばらになったのを見たとき、2001年のドイツ・ラウジッツで行われたCARTのレースを思い出してしまった。2年連続CARTチャンピオンのザナルディの乗るマシンも、クラッシュによってマシンが真っ二つに割れ、ザナルディは両足を失うことになった。その瞬間を撮影していただけに、今回のクラッシュも似たような状況なので、とても心配だった。レースが終わってから状況を聞くと、ブリスコーの意識ははっきりしているようで一安心。だが脳震盪を起こし、両鎖骨を骨折、肺の打撲と症状は良くない。今回はバロンとの接触がきっかけでマシンが浮かび上がり、フェンスに衝突してマシンが大破した。セーファー・バリアで衝撃を吸収できればもう少しダメージは抑えられたのかもしれないが、何より観客席の無いところでよかったと思う。ブリスコの今シーズン、残り2戦の参戦は厳しいだろう。次戦のワトキンス・グレンでの活躍が期待されていただけに、残念な結果となった。
予選15位からのスタートとなった安川は、同じ15位でフィニッシュした。レース中は状況にあわせてマシンを改善していくことが重要なのだが、ピット・ストップのたびにいろいろな調整を行ったものの、アンダーやオーバー・ステアを繰り返すといった状況で、レースで戦えるマシンには最後までならなかったようだ。同一周回での15位フィニッシュは、現状のチーム、マシンでは精一杯といったところなのだろう。チームは今週末、最終戦に昨年のインフィニティ・プロ・シリーズのチャンピオンを安川のチームメイトとして起用すると発表。2台体制となってドライバー同士の情報交換やセットアップの共有ができていいところもあるが、現在のチームの体制や状況を考えると、それだけの余裕があるようには見えず、あまり望ましい状況とは思えない。実際、もてぎやインディ500での2台体制は相当な無理をしていたように見えていたが、果たして大丈夫だろうか。
バロンとブリスコーの接触で飛び散ったパーツを踏み、松浦のマシンは突然スピンするとターン4のセーファー・バリアに接触。リタイアを余儀なくされた。現場で撮影していたカメラマンが言うには、松浦はギア・ボックスの塊のようなものを踏んだみたいだと、話していた。バロンとブリスコーの直ぐ後ろを走行していただけに、突然のクラッシュによる破片の回避は無理な状況だったのだろう。なによりクラッシュに巻き込まれなかったのは、不幸中の幸いだ。次戦は今年2戦目のロード・コースのレースとなるワトキンス・グレン。インフィニオンのように、粘り強い走りで上位入賞に期待したい。