<SUPER AGURI FERNANDEZ RACING>
2005 IRLインディカー・シリーズ第8戦「アージェント・モーゲイジ・インディ300」
日程:7月2〜3日
開催地:カンザス州カンザスシティ
コース:カンザス・スピードウェイ
距離:1.5マイル(2.414km)×200周
■■■7月3日決勝■■■
天候:晴れ/気温:30℃/時間:12時45分〜(日本時間4日2時45分〜)
<雨の心配もされた決勝レース>—————————————-
夏真っ盛りのアメリカ。独立記念日の週末に開催されるIRLインディカー・シリーズ第8戦は、カンザス州のカンザス・スピードウェイが舞台である。全長1.5マイルハイバンク高速オーバルでの300マイルレースは、7万人ものファンが詰め掛ける中、決勝日を迎えた。今回は女性ルーキードライバー、ダニカ・パトリックがポールポジションを獲得。彼女の活躍の効果もあってインディカーレースの人気は上昇してきている。
決勝日の朝方は小雨がパラつき、朝8時15分から行われたファイナルプラクティスの前にも雨が降ったが、決勝はアメリカ大陸の中部らしい強い日差しが照りつける中で行われた。湿度も高く、まさにカンザスらしいコンディションでのレースとなった。
<燃費も強く意識したマシンセッティングを選択>—————————-
パナソニックARTA/パノス・Hondaに乗る松浦孝亮が予選で獲得したグリッドは15番手。しかし、トラフィック内でのハンドリングさえ良ければレースで上位に食い込むことは十分に可能だ。このため、松浦とチームはファイナルプラクティスで燃料セーブモードでのラップタイムチェックを行いながら、セッティングのファインチューニングを行った。
レースがスタートすると松浦はアンダーステアの大きさにてこずった。しかし、ウェイトジャッカーとロールバーを操作し、ハンドリングが最良となる位置を探し続けた。松浦のポジションは最後尾近くまで下がっていたが、1回目のピットストップでフロントウイングを立てるセッティング変更を施し、レースへと戻った。
<2回目のピットストップでハンドリングを向上>—————————–
スーパーアグリ・フェルナンデス・レーシングはパナソニックARTA/パノス・Hondaがハンドリングで不利にあることを見て、燃費でカバーする作戦を採用。1回目のピットストップは51周目だったが、フルコースコーション中の60周目に早くも二度目のピットインを行い、トップグループよりも多くの周回を走行できる状況を作り出した。この作戦が功を奏し、上位陣が2回目のピットストップへと向かう中で松浦はコース上に留まり続け、114周目にピットロードへ滑り込んだ時にはトップに立っていた。そして、素早い作業の後にコースへと戻ると、松浦の順位は10位となっていた。松浦のマシンが作業を受けている間にフルコースコーションが出されたのだ。
<3戦連続トップ10フィニッシュを目指して>——————————–
フルコースコーションを利用した作戦が功を奏し、トップ10圏内へと復帰した松浦。2回目のピットストップでさらにフロントウイングを立てたことでマシンのハンドリングが向上し、松浦はリーディングドラフトの中を走り続けることができると考えていた。しかし、レースが再開されるとマシンのスピードが伸びなくなっていることを松浦は感じ始める。そして、132周目に松浦のマシンは急激に失速した。エンジンがパワーを失ったためだった。3戦連続のトップ10フィニッシュが見えかけてきたところだったが、松浦の第8戦はマシントラブルによるリタイヤとなった。
■■■コメント■■■
<松浦孝亮>
「マシンは戦えるレベルまできていただけに、とても残念です」
「レースのスタート直後はすごいアンダーステアで、もうコースに残り続けるのが大変なぐらいでした。でも、絶対どこかでイエローが出るし、ピットに入ればセッティングを良くできる、チャンスは絶対にあると考えていました。1回目のピットストップでウイングを立てて、コーナーを全開で走れるようになり、2回目のピットストップではさらにセッティングを調整して、なんとか勝負ができるかな、というレベルまでハンドリングを良くできました。大分戦えるなって感じになっていたわけです。ただ、スピードがなかなか上がらない。リタイヤ直前にスピードが出なくなったのはエンジントラブルが原因だったと思いますが、その前にスピードが上がり切らないと感じていたのは、まだ何が原因かはっきりしていません。積んでいる燃料の量が自分だけ違い、有利な戦いができる展開にもなった時もありました。マシンも結構良くなっていたし、自分たちはみんなとは違う作戦を採って、それを実らせることができるかとも考えていました。それが2回目のピットストップの後、リスタートした直後からエンジンが少しおかしいなと感じ始めました。10台が作るドラフティングの中についていけないはずがない。そう感じていた瞬間に突然パワーがなくなってしまいました。今年初めてのトラブルで、本当に残念です」
<鈴木亜久里:チーム代表>
「ファイナルプラクティスでマシンを完全に仕上げられなかった」
「インディカーのレースでは燃費は常に重要で、走れる周回数を引っ張れば引っ張るだけチャンスは増える。今日も燃費を強く意識したレースを戦っていた。しかし、チームとしての歯車が合っていなさ過ぎる。走り始めのセットアップが大アンダーステアだった。朝のファイナルプラクティスでクルマを完全に決め込むことができなかった。その責任はエンジニアにもあるだろうが、ドライバーもまだ勉強が必要だ。最後尾までポジションが落ちてしまってレースを戦える状態にはなっていなかった。燃料セーブの作戦によってトップ10には戻れたが、あれは運が大きく作用した結果だった。2回のピットストップでセットアップを調整したことで、クルマはそこそこのハンドリングになっていたようだが、孝亮が言うには、あの時点でエンジンに少し異常が出ていたようだ。ピットのテレメトリーでもそれはわかっていた。レース用のセットアップのレベルは、今より2ステップぐらい上げないと本当の優勝争いはできない。スコット・シャープは経験が豊富だからなのか、今年はずっと安定したレースをしてきている。今回の孝亮は、経験の差があるにしても悪過ぎた。もう1回よく色々なことを考え直して体制を建て直さないといけないかもしれない」
<サイモン・ホジソン:チーム・マネジャー>
「われわれはマシンからもっとスピードを引き出さねばならない」
「リッチモンドで納得のいく戦いを演じることができた我々は、今回のカンザスには大きな期待を抱いてやってきた。しかし、結果はまったく残念なリタイヤとなった。燃費作戦はまずまずの成果を上げていた。2回目のピットストップに入った後にイエローが出される幸運があったことで、10位にまでポジションを挽回することができた。クルマはスタートから大プッシュ(アンダーステア)で、ファーストスティントでのコウスケはウェイトジャッカーを動かせるだけ動かし、何とかドライビングのできる状態を確保していた。フロントのロールバーも操作し、グリップをできる限り高めるようにしていた。それでもスピードが上がらないためにAJ・フォイトIVをパスすることはできなかった。フォイトは白線をまたぐまでの激しいブロックをしてもいた。そのころに右のリヤのタイヤの内圧が上がり過ぎたのは、マシンのコーナーウェイトセッティングが片側に寄り過ぎる状態となっていたためだと思う。1回目のピットストップでウイングを立て、ハンドリングは良くなった。コウスケのラップタイムは26秒2になり、トップグループも26秒1から26秒2だった。トップのドラフティング内に留まり続けることは可能だと思われた。しかし、残念ながら、そのあたりからテレメトリーにはエンジントラブルの兆候が表れ始めていた。そのままゴールまで走り切ることを期待したが、トラブルは拡大し、リタイヤせざるを得なくなった。シーズン序盤は予選用、決勝用ともに我々のセットアップは競争力が高かった。今の我々はもっとマシンからスピードを引き出さなくてはならない状況にある。2回目のピットストップの後、コウスケはハンドリングは良好だがスピードが乗っていかないと言っていた。セットアップ自体は悪くなかったということだ。我々は何か他のエリアにスピードを見出さなければならない。来週はレースがないのでジックリとデータを見直し、どこが悪いのか、どこを改善すべきかを発見しなければならない」