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松浦孝亮、初のインディカー・レースをルーキー最上位の11位でゴール

<Super Aguri Fernandez Racing>
ホームステッド・マイアミ・スピードウェイは、そんなマイアミのダウンタウンから南に約30マイルほど下ったところ。大西洋とメキシコ湾を隔てて連なる島々、キーズと呼ばれる南国の楽園への玄関口にある。全長1.5マイルのコースは昨シーズン中に改修が行われ、ハイバンクの高速オーバルへと変身。6度と緩やかだったバンクの傾斜は最大20度の急なものへと変えられたのだ。

松浦孝亮、初のインディカー・レースをルーキー最上位の11位でゴール

▽2004年2月29日

■日時:2月29日
■開催地:マイアミ州ホームステッド
■サーキット:ホームステッド・マイアミ・スピードウェイ
■天候/気温:晴れ/23℃

ホームステッド・マイアミ・スピードウェイは、そんなマイアミのダウンタウンから南に約30マイルほど下ったところ。大西洋とメキシコ湾を隔てて連なる島々、キーズと呼ばれる南国の楽園への玄関口にある。全長1.5マイルのコースは昨シーズン中に改修が行われ、ハイバンクの高速オーバルへと変身。6度と緩やかだったバンクの傾斜は最大20度の急なものへと変えられたのだ。これによって1周すべてをアクセル全開で走行可能となり、サイドバイサイドの戦いが続くレースが実現されることとなった。

決勝出場は19台で、全19人の予選タイムは0.6秒以内に収まるほどに実力は拮抗。午後2時にスタートを告げるグリーンフラッグが振られると、高速バトルがすぐさま開始された。目まぐるしく順位を入れ替えながらの戦いは200周=300マイルにわたって繰り広げられ、今シーズン初のウイナーとなったのは最終ラップでチームメイトをパスしたサム・ホーニッシュJr.だった。

新しいエアロパッケージ、昨年までよりも5ガロン小さい30ガロン燃料タンクの採用、新しいレイアウトのコースと、レース結果を予測するのが難しかった開幕戦は、総合力を最大限に引き出すことに成功したチームが勝利を獲得した。

パナソニックARTA/Gフォース・Hondaを駆るルーキーの松浦孝亮は、予選18番手からスタート。オーバルコースでのレースは初めてだったが、1周1周着実に経験を積み重ね、進歩を遂げていった。序盤はアンダーステアがひどく、集団からジワジワと引き離されたが、ピットストップを繰り返す度にセッティング変更を施すことでマシンは次第に良くなって行き、フルコースコーションを利用したピットストップのタイミングが良かったこともあって5番手までポジションを上げた。

レース終盤になってコクピット後方の配線がショートし、ステアリングホイール上のデジタルメーター類が一切点灯しなくなるトラブル、6速ギヤが使えなくなるトラブルなども発生し、余計なピットストップを余儀なくされたため、松浦は上位争いに踏みとどまることはできなかった。しかし、終盤のマシンはハンドリングも向上しており、松浦はトップグループと同等のラップタイムで周回を重ねた。そうして得られたのがルーキー最上位となる11位フィニッシュ。そして、最後までトップと同一周回で走り切ることに繋がった。チームにとっても今回の1戦は大きな収穫があった。1戦のフルディスタンスを走り切る中で今年から採用しているGフォース・シャシーの特性をさらに学ぶことができたのだ。

次戦はアメリカ大陸を横断し、アリゾナ州フェニックスの全長1マイルのオーバルコースで開催される。

●松浦孝亮
「いろいろなことがあったが1レースを最後まで走りきってインディカー・レースの感触をつかむことが出来た」
「エンジンの低速域がおかしく、フォーメイションラップへと出ていくときにストール。ピットインの時には毎回同じ症状が出てました。120周を過ぎた時にはコクピットから煙が出て来て、電気系全部がシャットダウン。ダッシュボードは何も見えなくて、ギアを何速にしているのかさえ全部ピットから無線で教えてもらいながら走ってました。スタート直後はビックリするぐらいにクルマが決まってなくて、タービュランスとかそういう問題じゃない状態でした。アンダーステアが強くて、まったくイン側につけなかったんです。ピットに入ってフロントウィングを立てたり、色々と直していくうちにクルマは良くなって行って、最後にはほとんどトップと変わらないペースで走れていました。200周=300マイル。こんなに長いレースは初めてで、煙が出て来た時にはクルマが燃えちゃうのかなと思いましたけど、チームとコミュニケーションをとって、そのまま走り続けると決めて、最後まで走り切れたのは本当に良かったと思います。辛抱して走って、イエローが出た時にセッティングを変え続けて、最後に良くなったというのは、チームにとってもいいデータになったと思います。電気以外にもトラブルはありました。本当にいろいろあって大変なレースでしたが、1レースを走り切ったことで、やっとこんなインディカー・レースっていうのがこんな感じなんだなっていうのがつかめました。レースは最後が勝負。最後のピットストップから先、最後のスティントが勝負だってわかりました。ショートオーバル、ハイスピードオーバルで戦い方は違うと思うんですが、チームがすごくいい作戦力を持っているので、これからのレースには期待ができると思います」

●鈴木亜久里 チーム代表
「最後まで走りきってくれて本当によかった。孝亮は今日の1レースで本当にいろんなことを経験したと思う」
「配線がショートしたのかコクピットから煙が出てしまった。その前から6速は使えなくなっていたし、煙が出てから後はメーターパネルが見えなくなってしまい、もう一度ピットに入れてステアリングを交換しても直らなかった。今回はマシンの最初のセッティングが大アンダーステアで、レースを戦ってる中でフロントウィングは合計5ターンも立てた。すごいアンダーで序盤は全然走れてなかった。毎回毎回、ピットに入る度にウイングを立てていった。今日のコウスケは1レースの中で本当に色んな経験をしたと思う。すごく凝縮されていたよね。その1個ずつが経験なんで、良かったと思う。本当に最後まで走ってくれて良かった」

●トム・アンダーソン マネージング・ディレクター
「シーズン半分ぐらいの経験を1レースに凝縮したようなとてもエキサイティングな200周だった」
「とてもエキサイティングなレースとなった。シーズンの半分ぐらいをかけてする経験を一気に積んだような感じだった。レーススタート用のウィングセッティングは慎重過ぎた。アンダーステアが大きく、それがコウスケとダリオの接触に繋がってしまった。レース終盤には、電気系統のトラブルでダッシュが点灯しなくなり、ピットスピードリミッターも作動しなくなったため、最後のピットストップでは必要以上にスピードを下げさせる必要があった。今日のレースでコウスケは本当に多くのことを学びとったはずだ。レース中には英語、日本語両方を使って本当に多くの交信が行われた。彼は自分からのリクエストも次々と発して来た。そして、それらは正しい判断に基づいたものだった。それだけ彼が素早くインディカー・レース、オーバルレースを学びとって行ったということだ。日本のファンの皆さんは、もてぎでは是非とも無線をレンタルすることをお勧めしたい。コウスケと我々ピットとの交信を聞いて楽しんでもらいたい」