ソノマ、ボルチモアと2週続いたレースも終わり、ちょっと落ち着いたのでね、ソノマで仕入れてきたネタ(もう活きはあまりよくないけど)をお伝えしようと思います。
ロサンゼルスの南にある街トーランスの事務所から、サンフランシスコの北、サーキットのあるソノマまで今回も車で行ったのですが、同じカリフォルニア州内なのに往復の走行距離がね、なんと1043マイル(1678キロ)でしたよ。
ホテルからサーキットまでの移動も含め、帰りに寄り道などもした結果こんだけの移動距離となったわけですが、ひとりでの運転で1000マイルを越えるとね、さすがにキツイですよ。ほんと、まいるって感じです。
ともあれ、ソノマでワインでも仕入れてくるかと思ったのですが、そもそもワイナリーに行くような柄でもないし、この辺のスーパーやリカーショップで売っているようなワインならたぶん、トーランスのワイン専門店でね、買えんじゃないかと思ったので止めました。
そのかわり、サンフランシスコの地ビール的なものを購入したのですが、これはネタがなくなったらご紹介するということにしますよ。というのもロサンゼルスへ戻る道中に、モンテレーって街に寄ったら、その港に日本食レストランがあってね、そこで日本人だったらまず、これをそんな使い方しないよなっていうものを発見したので、そのことについてお伝えいたします。
モンテレーは、ロサンゼルスから北西に約320マイルの場所にある小ぢんまりとした港町です。車だとたぶん5時間以上かかりますかね。今回の宿泊先バレーホ(ソノマ南東の街)からだと約135マイル、2時間30分とグーグルマップさんが調べてくれたのでね、ちょっと寄り道していくことにしました。
このモンテレーにはまだラグナ・セカ・レースウェイと呼ばれていた頃(今から10年位前)から、現在のマツダ・レースウェイ・ラグナ・セカという名称に変わって2〜3年までは、よく取材に行っていました。
当時はインディカーではなく、CARTというシリーズをメインに取材しており、そのシリーズでは毎年このサーキットでレースが開催されていました。
このコースの通称“コークスクリュー”と呼ばれ、駆け下りるS字の名物コーナーはとても有名です。様々なアングルからグッドな写真が撮影できるので、今となっては懐かしさもひとしおつのるコースですね。
個人的には同じような高低の差があるソノマのコースよりもこのラグナ・セカの方が撮影していて楽しいし、レースも面白いという印象があったので、インディカーの取材がメインになってこのサーキットに行く機会が減ってしまったのは残念でした。
もうそれ程来る機会もないだろうから、コースに行かなくても、そこへと続く道を通ってね、昔行ったことのあるモンテレー・ハーバーにちょっと寄っていくかってな感じで今回行ってみたんです。久しぶりにUS101号を通ってロサンゼルスに戻るのも悪くはないかなと。
お昼頃に到着する予定でホテルを出発し、ちゃんと午後12時30分にはそのモンテレー・ハーバーに着きました。約2時間30分のドライブでしたが、この辺でランチでも食べてね、ちょうどいい休憩って感じです。
モンテレー・ハーバーのオールド・フィッシャーマンズ・ワーフに入り、車をパーキングに停めるとなんと目の前に“SAPPORO”というロゴが飛び込んできました。Sushi&SteakHouseとサブタイトルもあり、そのお店が日本食のレストランなんだなっていうことは分かります。
ソノマの取材では、夕食がアップルビーンズ(全米にあるアメリカンなレストラン)、タイ料理、メキシコ料理、オリーブガーデン(全米にあるイタリアンなレストラン)と続いただけに、和食が恋しくなっていたところではありました。
アメリカのちょっとした観光地にある日本食レストラン。しかもサッポロっていうネーミングにあまり期待はできなかったのですが、それほど迷うことなくお店に入りました。ひょっとしたらね、このコラムのネタになりそうなものもあるんじゃないかという淡い期待もあったのは確かです。
すると、漫才師の“矢野・兵動”の兵動さんの方によく似たアジア系のウェイターが、お寿司のカウンター席に案内してくれました。ひとりだからこの席なのかなって思いながらも席に着き、店内を見渡すと海が見えるテーブル側には何組かお客さんがいました。雰囲気は悪くないお店です。2〜3回目くらいのデートに使えそうな感じですかね。
例えば、食事が終わってから外に出て、停泊しているヨットや空に浮かぶカモメを見ながら桟橋を歩き、「潮風が、ちょっと冷たいね」なんていいながら彼女の手にいつ触れようかとタイミングを見計らっているような、そんな交際期間中に行くといいじゃないかと・・・・・・よくねぇな。
なんてまた妄想が膨らんでしまったのですが、その前にお腹を膨らませなきゃと我に返り、兵頭さんにお願いしてメニューを見せてもらいましたよ。
ランチメニューにはトンカツや弁当セットのようなものもありました。ただ、ソノマの週末のランチ、ディナーは肉系が続いていたのでね、フィッシュでしょってことでちらし寿司を頼むことに。
もちろん、この港で水揚げされたお魚を使っているわけじゃないのは分かっちゃいるのですが(たまたま寿司職人の友人が多いので、仕入れ事情についてはよく話を聞きます)、海の近くですから潮の香りがするとやはりね、お魚食べたくなりますよね。
兵動さんに「チラシ、プリーズ」とお願いして安心したのか、再び先ほどの妄想の続きが始まってしまったのが運のつき。しばらくたってからはっと思い出したんです。そういえば今晩、友人が勤める寿司屋でね、帰国することになった彼が握る最初で最後のお寿司を食べるんだったということを。
目の前では韓国系の板さんが、もう僕のちらしのために何種類かの切り身をまな板の上にそろえていてね、オーダーを変えることはできないなということはわかりました。
ちょっとしてから、この状況のことを改めて考えると、はっと当てはまる短文が頭の中に浮かび、その語尾の言葉“遅し”の間の文字“そ”を“す”に変えるとね、これがまた妙に今の僕の状況にはまったわけです。
“時すでにお寿司”・・・・・・頼んだのはちらしですが、まあ、握ってあるかないかの違いでネタはほとんど一緒だしね。夜と食べるものがかぶってしまったことを後悔しつつも、また「時すでにお寿司か・・・・・・」とつぶやいたあとに、ちょっとうまいこといったなと、ふっとひとりほくそ笑む自分がいたのは確かです。
まあ、友人のお店はきっとうまいはずだろうから、そういった意味で夜はさらに美味しいお寿司が食べられるだろうなとポジティブに考えてね、ちらしが来るのを待ちました。
目の前には日本刀の短刀と、なにやらその下に急須が置いてありました。そういえば頼んだホット・ティがまだきてなかったけど、もうきていたのかな? と思わせぶりですが、肝心の湯飲みがありません。
変だなって思っていると、同じカウンターに並んでいたカップルがおもむろにその急須から黒い液体を小皿に注いでいたんですね。「なんだや、これ醤油さしなんだっちゃ」と、驚きと動揺を隠せずに愕然とその様子を眺めていると、ちらしとホット・ティがやってきました。
以前もどこぞのお寿司屋さんでちらしを頼んだらお皿に盛られて出てきたことをお伝えしたことはありますが、このお店も紛れもなくそっち系でした。お皿に酢飯を載せ、その上に様々な魚の切り身や海老、玉子に刺身のつまがデコレーションされています。
ホット・ティに関してはやはり、醤油さしより大きくないと間違いやすいのか、1.5倍ほど大きめのサイズの急須にお茶が入ってきましたよ。単純に醤油さしの急須が日本の一般家庭サイズなので大きすぎなんですけどね。
ただ、アメリカ人はお醤油をマジかってくらい使うので(人によってはお醤油をめん汁感覚くらい大量にお寿司につけます。あとご飯に大量にかけたりね)、この急須サイズの醤油さしはある意味、グッドアイデアなんでしょうな。考えた人は、たぶん、鼻高々だったでしょうね。
ちらしに関しては、まあ、久しぶりに魚を食べられたのでそれなりに満足。ホット・ティに関しては3杯飲んでもまだ残っていましたよ。ただ、2杯目からすでにぬるかったのは否めません。こんだけでかけりゃすぐ冷めるわな。
妄想じゃなくやっとお腹も膨らんだのでね、お店を出て一路友人の勤めるお寿司屋さんに向かい、約5時間半のロングドライブを経て無事お店のあるビバリーヒルズに到着。
友人が握ってくれた最初で最後(それまで行ったことがないっていうのも友人としてどうかと思いますが)のお寿司、いろんな意味でね、そりゃあ、うまかったです。はい。
ともあれ、いよいよインディカーも最終戦です。佐藤琢磨選手、最後に一花咲かせてくださいよ〜! これ、マジで。