Hiroyuki Saito

2012 HONDA LA MARATHON −フルマラソンに初挑戦 トーランスからドジャー・スタジアムへ−

フルマラソンに初出場するにあたって走り込みをし、肉体的な準備はそれなりにしてきたのですが、もうひとつ重要なことが出場にむけての準備です。前日までにいろいろとね、確認しておかなければならないことが多々あります。
 
EXPOで一番重要なビブ(ゼッケン)を受け取ることができ、当日もこの場所にまた来ればいいんだなってことはわかりました。ただ、スタートの時間は午前7時30分。初めてなので何時までに来れば安心してスタート地点で待つことができるのか、いまひとつ見当がつきません。
 
大会からの最終案内では「90分前にはドジャー・スタジアムに来ていることを強くお勧めします」といったことが注意事項で書いてあり、逆算すると最低でも午前6時には到着していなければなりません。
 
トーランスの事務所からドジャー・スタジアムまで混んでいなければ車で30分ほどなので、午前5時30分には出ればいいのです。でもね、“当日は渋滞するだろうからさらに30分は余裕をもって午前5時には家を出たほうがいいんじゃないかい?”って、心配性のもうひとりの僕が右の耳元でつぶやきます。
 
“おいおい、ちょっと待てって。道路の規制もしているし、行きなれていない場所でもし道に迷ったら大変なんだから(方向音痴だろ?)、さらに30分は余裕を持って家を出たほうがいいに決まってるさ!”と、さらにもうひとりの僕が左の耳元で力説しています。
 
このままいくと何人もの僕が出てきて、結局は寝ないで行くことになったらたまらないなってことでね、ここはひとつ、参加経験のあるロジャー安川に的確なアドバイスを聞いてみることにしましたよ。
 
ロジャーが言うには「到着した会場では緊張するだろうし、走行前にトイレに行きたくなる人がまあ山ほどいてとても長い列ができるから、用を足すまでの時間も考えたほうがいいよ」とのこと。
 
お腹が強いほうではないのでね、それじゃあ、さらに早く行って調子を整えておいたほうがいいべなって、最終的な決定権を持った僕が決めた出発の時間は午前4時20分。早すぎるかもしれませんが、早く着いたら車で休んでいればいいだけなんでね。
 
それじゃあ、今度は何時に起きなければいけないんだって逆算すると、ちゃんとご飯もがっちり食べておいたほうがいいとロジャーがいっていたから、午前3時30分には起きて朝ご飯を食べて準備して出発しなければならないってことが判明しました。
 
午前3時30分って、最近ではめったにありませんが、今夜は少し夜更かしし過ぎたかなって思うような時間帯に、なんと起きなければいけないのです。マラソンに備える体力を温存するためには、最低でも6時間は睡眠時間をとりたいから、午後9時には寝なきゃいけないってことですわな。
 
そんないまどきの小学生でも午後9時に寝ていませんし(たぶん)、身体もその時間に寝ることができるようなリズムではありませんが、なんとか9時には寝床に着かなくてはとがんばってはみました。
 
ただ、そういうときに限ってね、ばたばたとして時間は簡単に過ぎていくものです。そういえば足の裏にできるであろう水ぶくれ対策のため“2nd Skin”というEXPOでみつけた絆創膏のようなテープを寝る前に貼っておこうとか、明日着るランニング・ウエアの最終確認だって一回着てみたり、あ、ビブをウェアに付けておかなきゃとか、結局、午後9時を過ぎてからいろいろとしていたのでね、眠りについたのは午後11時前でした。
 
こりゃあ、最後のさいごに失敗したなって思いながらも、これで寝過ごしたら俺はどんだけ明日の朝後悔するんだろうと気が気じゃないのでね、寝ていたのか起きていたのかわからないレム睡眠状態が続いたのですが、目覚ましが現実に戻してくれました。
 
すると、せっかく右足の裏に貼っておいた第二の皮膚“2nd Skin”がはがれていてね。注意書きに5日間は持つようなこと書いてあったのに、何だよって思いながらもまた貼りなおして準備に取り掛かりましたよ。ちょっと貼るのが早かったようです。
 
起きてからの準備の早さは飛行機に乗ることが多いのでね、慣れてはいます。段取りどおり朝食をしっかり食べ、準備をしたらなんと午前4時過ぎにはもう出発できる状況となりました。もうちょっと寝ていてもよかったのかなって思いましたが、まあ、早く行くことには問題ないだろうと出発。
 
渋滞はなかったのですが、交通規制されていたドジャー・スタジアム周辺でやはり道に迷い(ちゃんと交通規制の地図もプリントして持ってはいましたが)、このままスタジアムに辿り着けなかったらどうしようかと、ちょっとドキドキしましたが、なんとか無事に駐車場へと到着。
 
時計を見るとまだ午前5時前。スタートまで2時間30分もあります。こりゃあ、早すぎたなって思い、車で待機していたのですが、もうね、マラソンモードというか、次々と到着する他の参加者がスタジアムに向かうのを見ているとなんか落ち着かず、外は寒いけどもう行ってみっかと向かうことに。
 
スタジアムには前の晩から来てたんじゃねぇのって思うくらいたくさんの参加者が集まっていてね。案の定、トイレはすでに長い列ができていました。こりゃあ、早いとこ用を済ませておかないとって並んでいると、「向こう側のトイレは空いているよ」って、その方向からやってきた参加者が並んでいる僕らに言ってくれたので、そっちへと移動。
 
列もそこそこで用も済ませることができましたが、時間的な余裕はかなりあります。なんでね、ちょっとスタート地点の様子を見に行ってくるかって歩いていくと、スタジアムの周辺にはすでに多くの参加者が集まっていました。ここにきて、そんな人たちを見ているとね、なんというかいよいよフルマラソンに参加するんだなって実感がじわじわと湧いてきます。
 
スタート地点は、ホイール・チェアの選手からハンド・サイクル、エリート・ウーマン、エリート・マンランナーと、その後に過去に参加したマラソンのタイムの速い順にグループに分けられ、それらがウェーブ1として、順番にスタートします。
 
その後のウェーブ2というグループは、1マイルのペース別にまずブロックが分かれており、最初のブロックは1マイル8分で走る人、そこから9分、10分といった感じに何分まであったかは忘れましたが、約20メーターくらいのブロックで分かれていました。
  

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サマータイムが始まったばかりのアメリカ。太陽はなかなか顔を見せず、外はまだまだ真っ暗なのですが、スタジアムやEXPOの照明がその代わりに輝きを放っています。スタート地点で待機している参加者もまだ少なかったのでね、見栄を張って8分のブロックで待ってはいたのですが、そういえばEXPOでバナナとかマフィンが配られているというサービスを思い出したので向かってみました。
 
それらを見つけてバナナをゲットしましたが、走る30分前くらいに食べようと決め、スタート地点に戻る前にまたトイレに行っておこうとEXPO側にずらっと並んだ仮設トイレに行ってみました。
 
そしたらそこがまた横にも縦にもすごく長い列ができていてね。ちょっと並んだんだけど、こりゃあ、らちが明かないからまたスタジアムまで戻ってトイレに行きました。そんなに長くはいなかったものの、スタジアムから外に出るとね、空が明るくなりはじめていて、早朝の雰囲気をやっと感じることができましたよ。
 
雨の心配があったのですが、ロサンゼルス上空に停滞していた雨雲は流れ、青空から太陽の光が見えはじめました。スタート地点に戻るとさっきまではそれほどいなかったのに、多くの参加者がブロックに集まっていてね。人垣を掻き分けながら1マイルのペースが9分の地点まで何とか辿り着き、スタートを待つだけとなりました。
 
午前6時30分くらいから場内放送が始まり、気分はますます盛り上がっていきます。午前6時55分になるとホイール・チェアがスタートし、徐々に僕らの番が近づいてきます。会場も自分自身の盛り上がりもピークになった7時24分、いよいよスタートの合図がなりました。42.195キロ、26.2マイルとなる人生初のフルマラソンがスタートしました。
 
次回は、スタートしてから長くて厳しかったゴールまでの道のりを何回かに分けてね、お伝えしたいと思います。