Hiroyuki Saito

Trick or Treat

今年はシーズンが終了しても日本に戻らず、アメリカに残って仕事をしていたら、いつの間にかハロウィンもサマータイムも終わってね。午後5時には秋の夜長が始まってしまう11月の中旬になろうとしていますよ。
 
いつの間にか朝晩が冷え込むようになってきて、電気ストーブの電源を入れるようになりました。日本と同じとまでは言わないけど、似たような感じでカリフォルニアのトーランスも秋っぽくなっています。はい。
 
昨年のハロウィンは日本にいたのですが、今回はアメリカにいることになったのでね、今年こそは“Trick or Treat”「お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうよ」と家に訪ねてくる子供たちのために、お菓子を用意していたんです。
 
実は2年前のハロウィンで、こんな出来事がありました。夜に友達と仮装して出かけることになっていたのですが、以前お菓子を用意していたのに誰も家を訪ねてこなかったことがあったので、まったく準備をしなかったのです。
 
ところがそんな時に限ってね、来ちゃったんですよ。今年はこれで決まりだなって仮装の準備をしていたら、玄関のベルが「ティンロン!」。囚人服の衣装を着たまま固まってしまい、じっと動かないように息を潜めるしかありません……。
 
昼間ならまだしも、すでに午後7時になろうとしていて外は真っ暗。室内灯がブラインドの隙間から見えていたはずで、確実にこの家には誰かいて、お菓子を用意しているんだろうって子供たちは期待していたでしょう。彼らがドアの外で待っているのにもかかわらず、居留守をしなきゃいけないなんて・・・。
 
こりゃ、いたずらされても仕方ないし、むしろしていって欲しいくらいの罪悪感をもちつつ、囚人服を着たまま5分ほど息を潜めていたのでした。ある意味“居留守罪”っていう刑で、本当に捕まってしまったような気分でしたよ。
 
なんでね、今年こそはちゃんと子供たちが喜ぶようなお菓子を準備しておこうと、ハロウィンの3日前に近所のRalphsというスーパーでお菓子を購入。
 

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ちゃんとハロウィン用に袋詰めされたお徳用パックとでもいいましょうか。小さな袋に入ったM&Mや一口サイズのスニッカーズ、ツイックスといった子供たちがいかにも喜びそうなチョコレート菓子と、一応、一口サイズのキットカットなどが入ったもう一つのお徳用パックも買っておくべと2パック用意しましたよ。
 
もうお菓子の準備は万端ですが、よくよく考えてみると実際子供たちにお菓子をあげたことってなかったなって、ふと気づきました。どうやってあげればいいんだろう? といった素朴な疑問が僕の中でふつふつと沸いてきます。「メリー・クリスマス!」てな決まり文句や、お菓子は籐製のカゴなんかにまとめて入れて差し出したほうがいいのか、などなど。
 
幼少期をアメリカで過ごし、現在もこの地で生活している日本人の知り合いに「ハッピー・ハロウィンってあげればいいのかな?」って聞いてみると「まあ、それでいいけど、お菓子をあげるときは袋ごと差し出すと、手を突っ込んできてガバってお菓子を掴んで持っていくから、ひとつずつ手渡しであげたほうがいいですよ」と的確なアドバイスをくれました。
 
そして10月31日の月曜日、ハロウィン当日。自分の中では2年前の居留守罪を今日子供たちにお菓子をあげることで、やっと償うことができるんじゃないかと思っていたのでね、ある意味待ちにまったといってもいいでしょうか。
  
徐々に日没の時間が近づいて、あたりも薄暗くなり始めました。そろそろ仮装した子供たちが家々を訪ね始める時間となってきましたよ。もうね、そのころには仕事も手につかず、いつ来るかわからないキッズを待つことになりました。
 
ちょっとした緊張感をもちつつ、普段かけているラジオの音量も少し小さめにして「ティンロン」という玄関のベル音がなるのを、いや、その前に玄関までの「ゴト、ゴト」といった階段を上がる小さな足音が家の中にいても聞こえるのでね、それを待っていました。
 
ディナーにはまだ少し早いんじゃない? といった時間帯、窓の外から子供たちのはしゃぎ声が聞こえていました。確かに子供たちが家々を訪ねまわっているような、雰囲気を感じます。
 
しかし一向に誰も来る気配がなく、晩御飯を作る時間帯になってしまいました。夕食の準備を終え、食べ終ると、いつの間にか晩酌を始めるような時間になってしまいました。
そこでやっと、今年はどうやら居留守罪を償う機会はなかったなと自分に言い聞かせることができたんだと思います。そして結局は、何事もなくハロウィンの夜は更けていったのでした。
 
やはり、万全の準備をしてしまうと、子供たちは訪ねてこないもんですね〜。購入した大量のお菓子を来年まで取って置くわけにもいかず、朝食の代わりにちょっとずつ食べていますが、これがまたなかなか減らずに、僕の体重だけは増えていっているようです。はい。
 
ともあれ、シーズンが終わってからね、なにか書くのを忘れているような、いや、あえて忘れていたような気もするfrom US。今回は、ハロウィンでのしょっぱい出来事になってしまいました。
 
来週はLAオートショーが開催されるので、その模様をお届けする予定です。あとはシーズン中に訪れた各地の出来事や、日本食レストランにおける“アメリカの和食進化論”などを中心に、シーズンオフを過ごしていきたいなあと思っていますよ。