Hiroyuki Saito

132日間

昨年10月15日から帰国していた日本を離れ、アメリカに戻ってきました。約4ヶ月という期間は、その人が何をしていたのかで過ごし方は感覚的に違ってきますが、僕的に考えると本当に長いようで短かったなぁと思うにはちょうどいい期間でした。
 
2日前にロサンゼルス空港に到着し、知人に迎えに来てもらいました。空港からアパートまで向かう道中はいつもの見慣れた光景で、久しぶりに4ヶ月も離れていたのに、久しぶりという感じはまったくなく、日本より少し暑いなって思ったくらいでした。しかし18週間と6日、日数で言うと132日という期間はやはりそれだけ居なかったんだなって思わせる出来事がこの2日間だけでいろいろとありました。
 
例えば、到着早々の出来事です。アパートのゲートに着いたのですが(アメリカのアパートにはセキュリティのためにゲートが設置されているところが多い)、僕がゲート・オープナーのリモコンを持っていなかったので、迎えに来て頂いた知人に「僕がいったん家に行きますから家に着いたら携帯に電話しますので、そしたらゲスト用のドアフォンから電話をかけてくれますか?」とお願いし、家の電話につながるゲート用の3桁の番号を教えて待機してもらいました。
 
家を訪ねてきたゲストがそのゲートの手前にあるドアフォンで連絡し、家にある普通の電話でゲートを開ける操作ができる仕組みになっていて、なぜか知りませんがダイヤル9を押すとゲートが開くのです。小走りで家に向かい、約4ヶ月ぶりの家に入ると生活臭じゃなくて家に居なかったな臭(乾燥しているのでかび臭いって感じではないけど、だからといってなんといっていいかわからない特有の臭い。ある意味ではアメリカに帰ってきたなと思う臭い)が、ぽわっと漂ってきたところで家に入ったことを携帯電話で連絡します。テーブルには約4ヶ月分の郵便物がどさっと積み重なって置いてあり、空気の入れ替えをしようと窓を開け、家の電話が鳴るのを待っていたのですが知人から一向に電話がかかってこないのです。
 
電話とのにらめっこにも飽きたので知人の携帯電話へ連絡すると、言われた3桁の番号を押しているのにぜんぜんつながらないとのこと。さては留守番電話がいっぱいになっていたのでそれが原因かと思い、ファックスのある電話機に回線を差し替えてみたのですがそれでもつながりません。お待たせしているうえに面倒を掛けているなと思っていたのですが僕としてもなぜだか分からないし、どうしたものか迷っていると待ち望んでいた家の電話が突然鳴ったのです。
 
電話に出るとその知人からで「どうやら番号が変わっていたみたいだよ」とのこと。ドアフォンから管理会社に連絡してくれて仕組みが変わったということを聞き、その新しい3桁の番号が分かったようです。寝耳に水とはまさにこのことです。ともあれ、やっとゲートを開けることができ、機材の入ったキャリーケースやいろんな物が入ってとっても重くなっているスーツケースを積んだクルマも家の近くに駐車できたのでした。
 
荷物の搬入、整理も終わり、そろそろランチでも食べに行くかとクルマのあるガレージにいってドアを開けるボタンを押したらね、なんか開きが遅いんです。うんとこしょって感じでやっと上部に持ち上がったドアを見てみると、両サイドに2本ずつある大きな木のドアを持ち上げるための長さ1メートルくらいの引張バネが1本壊れていたんですね。閉じているときはその引張バネが伸びきっている状況ですから、その状態が続くとやはりいつかは切れてしまうのです。
 
ランチの後、Home Depot(日曜大工やガーデニングに必要なものが販売している大型店)で引張バネ買ってこなきゃなって思いながら、そういえばクルマのバッテリー外していかなかったから、エンジンかかるか微妙だなって恐るおそるキーを差し込んで回すと、メーターパネルの光が震えるように点滅してすっと真っ暗になりました。案の定、バッテリーは上がっていて試しに最後までキーを回してみたのですがスターターは本来の役目を完全に放棄し、微動だにしません。
 
こりゃしょうがねぇなと、知り合いの自動車整備工場に電話すると「ちょっと今は手が話せないからトリプルA(AAA)を呼んだ方が早いね」ってことで、トリプルA(日本のJAFみたいなもんです)に電話して来てもらい問題解決。やっとランチへ行くことができたのでした。
 
到着日は時差ぼけにも負けず、なんとか一般的な時間帯に寝て朝も一般的な人が起きる時間に目が覚めました。さらに時差ぼけを解消するためにも太陽の光を浴びなければと外を見ると生憎の雨。それでも雨が止んでちょっと晴れ間が広がってきたのでね、その隙によくジョギングに行く近所の公園へと走りに行きました。
 
同じ時間帯に走っている人って結構いるんで、そんな人たちのことはなんとなく覚えているわけです。僕なんかはそんな人たちに勝手に名前をつけてね、今日はホゼがいるな、あ、マリリンもいるってな感じでジョギング中の暇つぶしをしているんです。その一人だったハリウッド俳優のアントニオ・バンデラス似の男性、もちろんアントニオって勝手に心の中で呼んでいたのですが、自慢だったかどうかは分かりませんが後ろに束ねていた黒髪をばっさりと切っていて4ヶ月前より確実にスマートになっていました。変わるもんだなって感心しながらね、僕も久しぶりに約50分も走ったら膝が痛くなっちゃって、公園からの帰り道は歩いてしまいましたよ。
 
また、買い物に行った日系スーパーのミツワでは店内の一部が改装されていて、NTTドコモと KDDIのブースが確実にお互いを意識する形で並んで出店されていました。ドコモUSAはアメリカのT-Mobileという携帯電話の会社の代理販売、契約をしており、日本語でのサポートが可能とのこと。また、アメリカ滞在中の日本ドコモユーザーのサポート、そして日本に一時帰国の際の携帯電話サービスが売りのようです。
 
KDDIは結構昔からアメリカで携帯電話を販売していたので馴染みはありましたが、ドコモのアメリカ進出を身近で感じることになりました。また、世の中はもうスマートフォンが中心になって動いているんだなってことも改めて感じてね。いまだにアンテナが伸びるような折りたたみ式の携帯電話をアメリカで使っている自分としては(前回の帰国で携帯電話をなくしてしまい、とりあえず、その以前に使っていた機種に変更。たぶん6年位前の携帯電話)、スマートフォンを使ってみたいものの結局のところ通話とテキストメールができれば別に困っていないなってこれも改めて思ったりして。
 
ともあれ、この1年の3分の1となる4ヵ月、18週と6日、日数では132日っていう期間は感覚としては長いようで短い時間でしたが、ゲートのインターフォンから家の電話につながるはずの番号が変わり、手紙が机の上に重なっていて、ガレージの引張バネが壊れ、クルマのバッテリーが上がって、アントニオがスマートになり、久しぶりに走ったら膝が痛くなるくらい体が衰え、日系スーパーの店内が改装してNTTドコモが出店するという変化があるには十分な期間だったことを感じる日数ではありました。
 
これから次のインディジャパンまでの約7ヶ月アメリカに滞在することになりますが、次の帰国で日本にどんな変化があるのか楽しみではあります。そして、やはりというかそうなるだろうなって思っていたキーウエスト旅情は、シーズンが始まる前には終わらせるという目標設定に変更し、皆さんにお伝えできればなと……。とりあえず、明日、ジュネーブに旅立ちたいと思います。