Hiroyuki Saito

スイス旅情(2010)−エーデルワイス・レストラン−

第3戦アラバマ、第4戦ロングビーチと2週連続で行われ、ばたばたとした日々がやっと落ち着いたと思った頃になると、もう、次のレースに移動なんじゃね? ってことに気づくような日々です。
残念ながらアラバマの桜は散っていたため、見ることはできませんでした。日本のお花見シーズンもとっくに終り、これからどんどん暖かくなっていくのでしょうね。季節の移り変わりを肌で感じていた頃が懐かしい今日この頃です。
さて、忙しいことを勝手に理由にしてちょっと間を空けたfrom USですが、もう4月も終るし、その前にはスイス旅情も終らせておかねぇとってことでね、2度目のエーデルワイス・レストランでの新発見と新体験をお伝えしますよ。

−エーデルワイス・レストラン−

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念願の“ジェ・ドー”を見て満足な気分になった僕はその後の仕事も順調にはかどったのでね、今年もスイスって言うのがもっとも分かりやすいレストラン、“エーデルワイス・レストラン”へと足を運びました。

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昨年も同行してくれたKさんと一緒にお店に入るとまだ開店時間まで少し時間があり、ホテルのフロント脇にディスプレイされた救助犬のぬいぐるみ達と一緒にしばしご歓談。僕がこの店で飲みすぎちゃって倒れたら救助してくれよって、ぬいぐるみに話しかけながら開店を待ちました。

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そろそろかと再びレストラン内部に入り、様子をうかがっていると店員がやってきてね、まだ従業員さえもあまりうろついていない店内の2階奥の席に案内されました。ちょっと早すぎたかなって思いましたが、人気店なだけに予約もしてなければ早く行くことに越したことはないんです。

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早速、ビールを頼んだのですが、昨年の苦い出来事を思い出しました。ウエイターがビール瓶を倒してこぼしてしまい、服が濡れてしまったのです。テーブルが結構狭いのでね、今回もかなり警戒し、ウエイトレスの一挙一動をじっと見ながらビールを置いてもらい、ふっと一息ついてから注ぐいで乾杯しました。
それでは今年は何を注文しようかとKさんとミーティングです。まぁ、やっぱり、チーズ・フォンデュは頼むとして、それ以外で何がいいべと、メニューを見ます。昨年はビーフ・フォンディってのを頼んだのですが、これがまた、名前の通り煮だった油にビーフのブロックを入れて、自分の好みで火の通り具合を調整して食べるのですが、なんか今ひとつだったんです。
なので、それ以外を頼むためにメニューと睨めっこしていると、なにやら内容を察するに熱した赤ワインに、肉を入れて食べるような感じのスープ・フォンデュというのを発見したんですね。

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んじゃ、これだ! って早速頼んで出てきたのがこちら。すき焼きの肉よりは少し厚めだけど、焼肉ほどは厚くないくらいのスライスされたビーフの切り身がお皿に盛られています。
それを温められた野菜の入った赤ワインのスープに入れて、火が通ったら用意された4種類のソース(カレー、ガーリック、タルタル、たしかトマト)につけて、フランス語で言う“ボナペティ”(召し上がれ)ってスタイルの料理だったんですね。
まぁ、要は洋風のしゃぶしゃぶです。名前は違えど、どこの世界にも似たようなスタイルの共通する食べ方って言うのはあるんですね。

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早速、“シャブー、シャブー”と肉を赤ワインのスープで泳がせ食べてみたら、これがまた去年食べたビーフ・フォンデュとは違って、フランス語で言う“トレビアン”(すんばらしい)なわけです。
油のフォンデュはやはり油っぽい(当たり前ですが)ので食べ続けるのがちょっとつらいのですが、このスープ・フォンディは赤ワインのアルコールが蒸発して残った葡萄の風味の中に野菜も入っていてね、とてもさっぱりとしたスープって感じなんです。4種類のソースに関してはもちろん全部試してみましたが、僕的にはカレーのソースが一番うまかったですよ。

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そんなチーズとスープのフォンデュに舌鼓していると、にわかに店内も活気づいてきます。ふと気がつくと1階のステージで民族楽器を奏でていた気さくな二人が演奏しながら僕達の席にやってきたのでパチリ。

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ステージに戻った演奏家達の演奏も佳境へと近づき、いよいよスイス楽器の代名詞と思っている“アルプホルン”が登場しました。
これをね、お客さんに吹かせるというアトラクションがあるの僕は知っています。昨年、そんな光景を見たんです。演奏家が「誰か試しに演奏してみませんか?」って聞いてくるので、挙手をして自己アピールすると吹くことができるのです。
そのときは初めてだったからね、どんなことになるか分からなかったから様子をうかがったんです。しかし今年は違います。もうどんなことするのか分かっているし、アルプホルン吹いてみたいという一年越しの欲求が煮えたぎったチーズ・フォンデュのようにふつふつと湧いていました。
すると、いよいよエーデルワイスの演奏家達はお客さんを招きだしました。誰も乗り気ではありません。そうこうしているうちに数少ないお客さんの中から挙手をしようか迷っている僕を指差したんです。一応、おれ? ってな感じで自分を指差してね、迷う素振りを見せながらも、内心ではしめしめといった感じでした。
「しょうがないなぁ」って困った顔で席を立ったつもりでしたが、たどり着く頃にはにやけ顔です。演奏者からテンポラリーのマウスピースを渡され、スイス語で口を震わせるように息を出すって感じの素振りを一生懸命僕に伝えています。

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なんとなくやり方は分かってはいるのですが、これがなかなか音が出なくてね。「プ、プー」って情けないおならのような音しか出ないんですよ。あとは空しく僕の口から唇だけを振るわせた息と、そのときの振動音が出て行くだけで、もう、ダメだと終了。
いやー、もっと自分はできると思っていたのでね、その結果にはがっかりはしましたが、お腹も一杯になったし、貴重な体験はできたし、飲みすぎて救助犬の世話にならなくて済んだし、今年もこれてよかったなぁと思えるエーデルワイス・レストランでの一夜となりました。