Hiroyuki Saito

あれ? 華やいだプレス・コンファレンス

フロリダ州セブリングで行われたALMSのウインター・テスト取材を終え、3週間ぶりに日本へ帰ってきました。デトロイトとまではいいませんが日本、寒いです。気温27度まであったフロリダと比べると真夏から一気に真冬になったという感じで体調管理には気を使いますよ。

まぁ、冷静に考えたらまだ2月ですから、そりゃ寒いですな。どれくらい寒いかというと……この寒さを「サミー・ソーサ(メジャーリーグの野球選手)」っていってしまう人(僕です)が隣に居るときくらいですかね。もういい? はい。

今回のテストで初披露となったLMP1マシン、アキュラのARX-02aは、現場で見た個人的な感想を一言でいうと“格好がいい”ですね。フロントタイヤとリアタイヤが同じ大きさというのが特徴ですが、バランスが悪いのかいえばそうでもなく、正面から見た感じはいい意味で迫力があります。

このマシンの格好の良さを写真でどう表現したらいいか、撮影していてもとても考えさせられるレーシング・カーです。セブリング12時間でのデビュー・ウィンを期待すると共に、カメラマンとしては被写体といった意味でもレースが待ち遠しい感じです。

さて、近況はこれくらいにしてデトロイト・オート・ショーのお話を。

プレスデイの前日にデトロイトに入った僕は、今回のデトロイト・オート・ショーで行動を共にするKさんとダウンタウンの高級ホテルで行われたメルセデス・ベンツのプレス・コンファレンスに行きました。差別化を図るためかプレスデイの前夜に一足速く新車の発表を行う自動車メーカーも多いようです。

受付を済ませて会場に向かうと多くの取材陣が発表のスタートを待っていました。ステージの脇になんとか入り込み、僕もそのときを待っていたのですが、なにやらご招待された人たちが座っているステージ脇の席で、カメラマンが集まって撮影しているのです。

これはちょっといってみっかとカメラを持ってその場に行くと、メルセデス・ベンツの首脳陣と共になんとアメリカは自動車レース界のドン、ロジャー・ペンスキーが座っているではありませんか。

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CART時代にチーム・ペンスキーがメルセデス・ベンツのエンジンを使っていたし、多くのディーラーを所有しているのでしょう。もちろん古くから関係があるにしてもこの特等席に呼ばれているところはさすがペンスキー。個人的にもこの慣れない発表会という会場に普段レースの取材先でよく見ている人を見かけるだけでちょっと安心します。

そうこうしているうちに、会場の雰囲気もそろそろ始まるよって感じになりました。プレス・コンファレンスは静かにスタートし、はじめにSLR Stirling Mossが紹介されました。

1955年にイタリアで行われた伝説的な公道レース“ミッレミリア”で優勝を飾った伝説のマシン“300SLR”がモチーフとなり、そのときドライブした伝説的ドライバー、“スターリング・モス”の名前を冠した伝説だらけのSLRですよ。

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フルカーボンボティを採用し、5.4リッターのV8スーパーチャージャー・エンジンの最大出力650hpを発生。0-100キロに達するまで僅か3.5秒、最高時速は350キロってインディーカーより速いかも。

2009年6月から限定75台の生産を開始するのですが、びっくりするのはその価格、約9000万円ですって。日本の田舎なら土地付きで家が2件建ちますな。ちょっと心配なのは発表したにも関わらず、この不況でSLR Stirling Mossの生産販売が中止にならなければいいなと。この計画が伝説……とはならないように。

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いきなりの凄い車の登場に舌を巻きつつ、照明が暗くなると縦長のステージに沿って大きなスクリーンが下ろされました。するとダンサー(やはりモーター・ショーにはいるんですね)が、そのモニターに移る映像に合わせて踊るというショーが始まりました。

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環境をテーマにしていて大きな地球がスクリーンを移動し、映像に合わせてダンサーが地球を運んでいましたよ。かなりの力持ちです。

プレス・コンファレンスをするメーカーが少ないと言われていた今回のオート・ショーですが、メルセデス・ベンツはそんな中でも魅せていましたね。とても斬新でかつ面白いものだったと思います。やはり、不況だといってもプレス・コンファレンスはこんな感じで派手に行われるんだなってこれを観たときはそう思った次第です。

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映像の内容はコンセプト・ブルー・ゼロに移り、車のイメージ説明が画面に頻繁に出てくるようになると、ダンサー達の動きも加速。クライマックスに達したところで、幕が上がりいよいよ注目の車がステージに登場しました。

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このコンセプト・ブルー・ゼロ、パワーユニットが違う3タイプの車が発表されました。サンドイッチ構造のフロアにエレクトリック・モーターを基本としたパワーユニットがそれぞれ搭載されています。

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“E-CELL”はプラグインでリチウムイオンバッテリーに充電し、200キロの走行が可能な電気自動車ですよ。あと水素タンクを搭載し、燃料セル・スタックで発生した電力でモーターを起動し、またはリチウムイオンバッテリーに充電してその電力で走行する“F-CELL”は400キロまで走行可能ですって。

電力とガソリン燃料を使ったトータル走行距離が一番長い600キロの“E-CELL-PLUS”はプラスっていうだけに、1リッターのスマート・フォーツー直3ターボ・エンジンを搭載しています。ん? エレクトリック・モーターがプラスか? まぁ、プラグインでリチウムイオンバッテリーに充電し、電力だけで100キロの走行が可能ということですよ。

生産台数限定75台、約9000万円の夢のスーパー・カー、そして販売を見据えた3タイプの電気自動車とメルセデス・ベンツのプレス・コンファレンスはなんか華やいでいましたね。この不景気の中どこ吹く風といった感じでブランド・イメージを漂わせていましたよ。

初日というか前日ですが、このような感じの始まりだったので翌日から会場で行われる数少ないプレス・コンファレンスも何気に派手になるんだろうなって思っていたのですが……その内容は次回お伝えします。