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チャンプ・カー・ワールド・シリーズ 第12戦 オランダ[決勝日]フォト&レポート

<US-RACING>

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実に14ヶ月ぶりとなる優勝を、地元ヨーロッパで手にしたジャスティン・ウイルソン。抜群のスタートでポール・ポジションのセバスチャン・ブルデイをパスしたあとは、昨日の予選で苦戦したのが嘘のようにレースをリードしていく。レース中盤にピット戦略を変更したブルーノ・ジュンケイラにトップを明け渡すが、最終ピット・ストップで再び逆転。最後は2番手を走るヤン・ヘイレンを引き離す力強い走りを見せ、7.226秒の大差で今シーズン初勝利のチェッカーを受けた。「チームにとって素晴しい結果となったよ。みんなには感謝しなくちゃいけないね。彼らはこの勝利に値する素晴しい仕事をしてくれたんだ。ピット・ストップも良かったし、エンジニアのマイクはウォーム・アップで走れなくとも、完璧なセット・アップを見つけてくれたよ」と大喜びのウイルソン。ポイント・ランキングで2位に躍進し、かすかではあるが残り2戦でのタイトル獲得に望みをつないだ。

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コンクエスト・レーシングのヤン・ヘイレンは、キャリア・ベストの2位表彰台を獲得する大活躍をみせた。今週末、常にトップ・クラスのスピードを保ち、今朝のプラクティスでもトップ・タイムをマークしたヘイレン。7番手スタートから次々と前車をオーバーテイクすると、3年連続チャンピオンのブルデイをもコース上でパスし、29周目に2番手へ躍進する。この気迫あふれる走りに、チームも完璧なピット作業で応え、順位を落とすことなくヘイレンをコース上へ送り出した。トップのウイルソンを捉えることは出来なかったものの、コンクエスト・レーシングにとって2005年メキシコ、モンテレイ以来となるベスト・フィニッシュを飾った。「厳しいシーズンのスタートのあと、僕たちはすべてのことを上手くやってきたんだ。金曜日、最初のセッションから僕たちが速いことはわかっていたよ。セッションをリードできたことには、ほんとうに勇気付けられたね。どのセッションでも多くのことを学んで良い方向に行っていた。チームやスポンサーであるグラフィプリントからのゲストにとって、とてもうれしい結果になった。プロモーターはヨーロッパの2レースで信じられないくらい素晴しい仕事をしたね。ゾルダーとアッセンの両方が最高の成功を収めたと思うよ」と、過去最高の結果を残した週末を振り返るヘイレン。開幕3戦で彼にレギュラー・シートが無かったことなど、今では想像も付かない。

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ブルーノ・ジュンケイラは2周連続の表彰台獲得となる3位でフィニッシュした。この日ピット戦略を変更したことで69周レースの30周をリードしたジュンケイラは、2回目のピット・ストップがコーションのタイミングと絶妙にかみ合い、優勝争いに加わる。予選まで目立った速さがなかったものの、今日は見違えるようなハイ・ペースで快走を続け、迎えた最後のピット・ストップ。デイル・コイン・レーシングのクルーはジュンケイラをミスなくコースへ送り出した。だが、マシンはスピード・リミッターのトラブルを抱え、大きなタイム・ロスを喫してしまう。思わぬ形でウイルソンとヘイレンの先行を許し、見えていた優勝がすり抜けていった。ピット・ストップ後はペースの上がらないマシンで、トリスタン・ゴメンディからの猛攻をしのぎきったジュンケイラ。デイル・コイン・レーシングの初優勝はおあずけとなってしまったものの、見事なピット戦略と老練な走りで今シーズン2回目のトップ3フィニッシュを呼び込んだ。「今日のマシンはとても良かったよ。燃料をセーブしながらもかなり速く走れたからね。全体を通して良いペースだったし、レースのほとんどをリードできたのはとても良い気分だった。チームは良い仕事をしたね」とチームをねぎらうジュンケイラ。トロントから6戦連続でトップ10フィニッシュを記録しており、デイル・コイン・レーシングに初勝利がもたらされる日もそう遠くはなさそうだ。

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ポール・ポジションのブルデイには試練が待ち受けていた。スタートでウイルソンの先行を許すと、ターン5でウイルソンを抜き去ろうとパワー・トゥ・パスを使ったとたんに失速。なんと、パワー・トゥ・パスのボタンを押すとピット・スピード・リミッターが作動してしまうとんでもないトラブルが発生していた。これで2つポジションを落としたブルデイは、1回目のピット・ストップでは7番手に後退。さらにこれだけには留まらず、2回目のピット・ストップでも大きなタイムロスを喫し、コース・インしたときには最後尾まで転落していた。しかし、決してあきらめることなかったブルデイ。粘り強く走り続け、コース上でオーバーテイクを繰り返し、最終的に7位まで追い上げてフィニッシュした。残念ながらタイトル獲得は次戦以降に持ち越されたが、この力強い走りに、まだ誰も成し遂げたことがない4連覇の瞬間が確実に近づいていることを改めて感じた。

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曇天のTTサーキット・アッセン。気温は17度と低かったものの、サーキットは詰めかけた6万人以上のファンの熱気に包まれていた。素晴しいスタートを決め、ウイルソンがホールショットを奪う。その後にブルデイとPKVレーシングの2台が続いた。中段に位置するヘイレンとジュンケイラはこのあと見事なレース運びを見せ、表彰台を掴み取ることになる。チャンプ・カー初上陸のオランダで、この週末に訪れた観客は7万4900人。優勝したウイルソンが曰く「僕が今まで行っていたF1のレースよりも多かったかもしれない」そうだ。残念ながら地元ドライバーのロバート・ドーンボスは、13位という結果に終わったが、同じベネルクス地方出身のヘイレンがトップ争いを演じことで、レース自体は大いに盛り上がった。